書名:おほうなばら
副書名:昭和天皇御製集
著者:昭和天皇(しょうわてんのう)
出版者:読売新聞社
出版年月:1990-05
ISBN:4-643-90095-4
大正から晩年までの昭和天皇の歌に、その心情を見る
昭和天皇の御製(ぎょせい、天皇の詠んだ歌)を収めた歌集である。大正時代から年代順に配列された歌には、自然への関心、戦争と戦後、国民への思い、母・貞明皇后への思慕などが詠まれている。刊行のことばによると、昭和天皇が亡くなった後、その歌をより多くの人に読んでもらうため、読売新聞社が宮内庁と侍従職の協力を得て編集した。
即位5年後の1931年には満州事変が起き、戦争の時代となる。時の趨勢への憂い、戦後の遺族を気遣う歌、平和への思いをうかがわせる歌が収められる。巻末の徳川義寛侍従長による解題も、読み解く手がかりになる。
自然を詠んだ歌も多く、生物学研究者としての一面もうかがえる。たとえば、1962年(昭和37年)には、和歌山県の神島を見て南方熊楠を思う歌を詠んでいる。1929年(昭和4年)に和歌山県を訪れた際、昭和天皇は南方熊楠から神島を案内され、粘菌などについての進講を受けていた。
1975年の米国訪問でリンカーン記念堂を訪れた際には、戦時中にも居間にリンカーンの像を飾っていたことを詠んでいる。戦争、人道、民主主義、平和をどのように受け止めていたか、その一端が見て取れる。
歌は、表層の歴史記述には現れにくい昭和天皇の思いや考えをうかがい知る一助となる。昭和天皇の御製を広く集め、まとめた一書である。