大原康男教授は、2005有識者会議で何を述べたか

大原康男教授は、男系主義の歴史的重みを重視し、女系容認に入る前に、旧皇族の皇籍復帰や養子制度など男系維持策を先に検討すべきだと述べました

2005年5月31日の皇室典範に関する有識者会議第6回では、大原康男教授へのヒアリングが行われました。大原教授は、我が国の皇位継承の歴史は男系主義で一貫しており、そのことが国民統合の権威の源泉になってきたと述べたうえで、女系容認に入る前に、まず男系維持のための方策を検討すべきだと主張しました。

皇室典範に関する有識者会議第6回 議事概要等

大原康男教授提出資料「皇室典範の改正について(メモ)」

大原教授は、現状をどう見ていたか

大原教授は、当時の状況を「新たな皇統の危機」だと見ていました。

大原教授は、皇太子殿下の次の世代には女性皇族しかおられず、このままでは皇統が途絶えるのではないかという深刻な懸念から、いま皇位継承規定の改正が議論されているのだと述べました。その意味で、大原教授は、当時の課題を単なる制度論ではなく、「皇統の危機」への対応として見ていたことになります。

大原教授は、伝統をどう見ていたか

大原教授は、皇位継承の歴史は男系主義で一貫してきたと見ていました。

<男系主義が国民統合の権威の源泉>

提出資料では、我が国の皇位継承の歴史の第一の特色として、「男系主義で一貫しており、そのことが国民統合の権威の源泉となっているという認識が広く共有されてきたこと」を挙げています。また、女帝は過去に10代8方おられたが、極めて例外的な存在で、すべて男系であり、在位中は独身だったと整理しています。

<明治の典範は伝統を踏まえている>

さらに大原教授は、明治皇室典範は、このような歴史と伝統を踏まえて、皇位継承法を初めて明文で確立したものだと評価しています。明治皇室典範の起草に当たった井上毅についても、個人的思想を押し通したのではなく、歴史・伝統、当時の国情・人情、そして普遍性を考慮して典範案を構想したと説明しました。

大原教授は、何を本当の対立軸だと見ていたか

大原教授は、「男系男子か女帝か」ではなく、「男系を維持するのか、女系を容認するのか」が本当の対立軸だと見ていました。

<男系維持か女系容認かが対立の本質>

大原教授は、この会議での問題の立て方が、男系男子か女帝容認か、という古い立て方になっているように見えると述べました。しかし、実質はそうではなく、皇位継承を安定的に確保するために、男系を維持するのか、それとも女系をも容認するのか、という対立軸で考えるべきだと主張しました。

この指摘からは、大原教授が、当時の議論の枠組みそのものに違和感を持っていたことが分かります。

大原教授は、男系維持のために何を提案したか

大原教授は、旧皇族の皇籍復帰と養子制度の検討を組み合わせ、まず男系維持の方策を講じるべきだと述べました。

<旧皇族の復帰の検討を提案>

大原教授は、女系を容認する女帝に関する議論に早々に入る前に、まず男系維持のための方策を講じるべきだと述べ、その具体策として、旧皇族の皇籍復帰可能性の検討と、皇族の養子制度の検討を挙げました。

<皇籍離脱は異例の措置>

その際、大原教授は、昭和22年の旧皇族離脱は、単純に現行典範に基づく処理だったのではなく、GHQ占領下という異常な状況のもとで、皇室財産の国庫編入、高額の財産税、宮内省機構の大幅縮小といった政策の中で行われた異例の措置だったと説明しています。また、竹田宮・北白川宮・朝香宮・東久邇宮の4宮家は、明治天皇の内親王が嫁がれており、明治天皇の血筋を引いているとも述べています。

<宮家存続が喫緊の課題>

さらに大原教授は、喫緊の課題は現在の宮家の存続だと述べました。現在の宮家は、お子様がおられないか、女性しかおられないかのいずれかであり、このままでは断絶することになるので、宮家存続策を先に考えるべきだ、という順序論を示しています。

大原教授は、世論や国民感情をどう見ていたか

大原教授は、女性天皇支持の世論は、女系導入の重大性を十分認識していないのではないかと見ていました。

<女系天皇支持は感覚的理解>

大原教授は、各紙の世論調査で7割、8割が女性天皇を支持しているとされるが、その中身は、過去にも女帝がいた、男女平等論、外国にもある、愛子内親王を天皇に、といった感覚的理解によるものではないかと述べました。そして、女系を採用することの意味への認識がどこまであるのかは疑わしく、その点が分かれば支持率も変わってくるのではないかと見ていました。

<国民感情に先立つ女系への危惧>

また、園部逸夫委員から、旧皇族復帰や養子制度を採った場合に国民が象徴として受け入れるか、という質問が出たのに対し、大原教授は、女系導入の危惧のほうが大きく、その点を前提にすれば旧皇族復帰等のほうが相対的に危険が少ないのではないか、という趣旨で応答しています。

大原教授は、天皇・象徴天皇の存在意義をどう見ていたか

大原教授は、男系主義が国民統合の権威の源泉であり、そのことが天皇・皇室の存在意義に深く関わると見ていました。

<男系主義は天皇の意義にかかわる>

大原教授の説明では、男系主義は単なる継承ルールではなく、皇室による国民統合の権威の源泉とされています。そのため、女系導入は継承資格の変更にとどまらず、皇室の正統性や存在意義そのものに関わる問題として扱われています。

<女系導入で正統性壊れる>

また、大原教授は、一部の女系容認論には、女系導入によって皇室の正統性を壊し、皇統断絶の契機にしようという発想があるとも述べており、ここでも天皇・皇室の存在意義の問題が強く意識されています。

大原教授は、典範改正の手続をどう考えていたか

大原教授は、皇室典範の改正に当たり、皇室の意向が反映される回路を先に整えるべきだと述べました。

<皇室の意向反映の回路がない>

大原教授は、明治皇室典範は憲法と対等の法であり、その改正には議会が関与しなかったのに対し、現行典範は一法律にすぎず、国会の単純な議決で改正されるため、皇室にとって最も関心のある事項であるにもかかわらず、皇室の意向が反映される回路がないと指摘しました。

<皇室会議に典範改正についての権限付与も一案>

そのうえで、たとえば皇室会議に、皇室典範改正についての何らかの権限を持たせることも一案だと述べています。大原教授は、こうした改正規定の見直しをまず行ったうえで、その後に女帝問題を含む具体的改正の議論に入るべきだという手順論を示しました。

まとめるとどうなるか

大原康男教授は、男系主義の歴史的重みを重視し、女系容認に入る前に、旧皇族の皇籍復帰や養子制度、宮家存続策など、男系維持のための方策を先に検討すべきだと述べました。

また大原教授は、単に制度案を示しただけでなく、議論の対立軸の立て方、世論の見方、そして皇室典範改正の手続そのものにも問題意識を示しました。その意味で、大原教授の発言は、伝統論、制度論、手続論が一体となった発言だったと見ることができます。

<関連外部サイト>

2005皇室典範に関する有識者会議報告書