2017退位立法府対応の「議論のとりまとめ」は、何を整理したのか

退位を特例法で実現する内容を整理し、安定的皇位継承の確保も共通認識とした

「天皇の退位等についての立法府の対応」に関する衆参正副議長による「議論のとりまとめ」は、退位を特例法で実現する道筋と、安定的皇位継承を今後の検討課題とする方向を整理した文書である。

この文書は、2017年3月17日、天皇の退位等についての立法府の対応に関する全体会議を経て、衆参正副議長から内閣総理大臣に提示された。

「とりまとめ」は、今上天皇の退位を可能にするための法形式を、皇室典範附則と特例法の組合せとして整理した。盛り込むべき内容にも言及し、政府に法案を求めた。

同時に、安定的な皇位継承を確保するための方策について、政府が速やかに検討すべきであることも、共通認識として示した。

その意味で、「とりまとめ」は、退位特例法の制度設計を整理した文書であると同時に、後の附帯決議、さらに2021有識者会議『報告』へつながる文書でもある。

「議論のとりまとめ」は、どのような文書か

「議論のとりまとめ」は、天皇の退位等について、国民代表機関である立法府が主体的に取り組む必要があるとの認識のもとで作成された文書である。

「とりまとめ」は、冒頭で、天皇の退位等に関する問題を議論するに当たり、各政党・各会派が、象徴天皇制を定める日本国憲法を基本として、国民代表機関である立法府の主体的な取組が必要であるとの認識で一致したと述べている。

そのうえで、各政党・各会派は、衆参両院の正副議長に対し、「立法府の総意」をとりまとめることを委ねた。

この文書は、衆参正副議長が、各党・各会派の議論を踏まえて、立法府としての対応を整理した文書である。

2017退位立法府対応には、政府有識者会議の論点整理も伝えられたが、あくまで国会側の整理である。

退位について、どのような共通認識を示したのか

「とりまとめ」は、今上天皇の「おことば」を重く受け止め、今上天皇が退位できるように立法措置を講ずることを共通認識として示した。

「とりまとめ」は、今上天皇の「おことば」及び退位・皇位継承の安定性に関する共通認識を整理している。

そこでは、まず、2016年8月8日の今上天皇の「おことば」を重く受け止めていることが示された。

また、今上天皇が、現行憲法にふさわしい象徴天皇の在り方として、国民の声に耳を傾け、思いに寄り添うことが必要であると考えて行ってきた象徴としての行為が、国民の幅広い共感を受けていることも確認された。

そのうえで、今上天皇が高齢になり、これまでのように活動を行うことに困難を感じている状況において、「おことば」以降、退位を認めることについて広く国民の理解が得られていると整理した。

そして、立法府としても、今上天皇が退位することができるように立法措置を講ずるとした。

安定的な皇位継承について、どのような共通認識を示したのか

重要なのは、この共通認識の中に、退位だけでなく、安定的な皇位継承の必要性も含まれていることである。

「とりまとめ」は、皇位の安定継承について、今上天皇の象徴としての行為は、国民の幅広い共感を受けているとして、そのような象徴天皇の在り方を今後とも堅持していく上で、安定的な皇位継承が必要であると位置づけた。そして、政府はそのための方策について速やかに検討すべきであるとした。

退位を認める立法措置と、安定的皇位継承を確保するための方策検討とが、「象徴としての行為に対する国民の幅広い共感」を基盤とする同じ共通認識の中に置かれている。

皇室典範と特例法の関係をどう整理したのか

「とりまとめ」は、皇室典範附則に特例法と皇室典範の関係を示す規定を置き、具体的な退位措置は特例法で定めるのがよいと整理した。

退位の法形式については、各党派の間で考え方が分かれていた。

天皇の退位については皇室典範の本則に規定すべきである、という強い主張もあった。

しかし、「とりまとめ」は、その主張の趣旨も踏まえつつ、国会が退位等の問題について明確に責任を持ち、その都度判断するべきであるとした。

そのうえで、皇室典範の附則に、特例法と皇室典範の関係を示す規定を置く方向を示した。

具体的には、皇室典範の附則に、天皇の退位について定める皇室典範特例法は、皇室典範と一体をなすものである、という趣旨の規定を置くことが考えられるとした。

この規定により、憲法2条(皇室典範の定めるところにより)違反との疑義が払拭されること、退位は例外的措置であること、将来の天皇の退位の際の先例となり得ることが明らかになる、と整理された。

ここで、2017退位立法府対応の法形式は、皇室典範附則と特例法の組合せへと収れんした。

特例法には、何を盛り込むとされたのか

「とりまとめ」は、特例法に、今上天皇の退位に至る事情、退位と皇位継承、退位後の天皇の身位・待遇、皇嗣に係る事項などを盛り込む方向を示した。

「とりまとめ」は、特例法に置くべき規定の概要も整理している。

まず、今上天皇の退位に至る事情等に関する規定として、今上天皇の象徴天皇としての活動と国民からの敬愛、今上天皇と皇太子の現況、おことば以降の退位に関する国民の理解と共感などを挙げた。

次に、今上天皇の退位と、これに伴う皇位継承に関する規定を置くこととした。

さらに、退位後の天皇の身位、敬称、待遇等、皇嗣に係る事項、退位後の天皇を補佐する体制、宮内庁法、皇室経済法などの関連法整備も検討項目に含めた。

別紙では、退位後の天皇を皇族の範囲に含めるか、皇位継承者や摂政就任者に含めるか、退位後の天皇の呼称・敬称・陵墓、皇室会議議員への就任制限、秋篠宮に関連する規定など、検討を要する法律上の項目が整理されている。

このように、「とりまとめ」は、単に退位を認めるという結論だけでなく、そのために必要となる制度設計上の項目を示している。

退位について、政府に何を求めたのか

「とりまとめ」は、政府に対し、立法府の総意を厳粛に受け止め、法律案の立案に直ちに着手し、要綱を全体会議に提示した上で、速やかに国会へ提出するよう求めた。

最後に、「とりまとめ」は、政府への要請を置いている。

各党・各会派は、退位に係る立法措置を今国会で成立させるべきだという思いを共有していた。

そのため、政府に対し、立法府の総意を厳粛に受け止め、直ちに法律案の立案に着手することを求めた。

また、政府が法律案の骨子を各党派に事前説明し、要綱ができた段階で全体会議に提示し、その確認を経た後、速やかに国会へ提出することも求めた。

これにより、「とりまとめ」は、単なる意見整理にとどまらず、政府の法案作成過程にも一定の手続を求める文書となっている。

安定的皇位継承については、何を求めたのか

「とりまとめ」は、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等について、政府が特例法施行後速やかに検討すべきだと整理した。

「とりまとめ」の重要な点は、退位だけでなく、安定的な皇位継承を確保するための方策にも言及していることである。

文書は、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等について、政府において、皇室典範附則の改正及び特例法の施行後速やかに検討すべきだという点で、各政党・各会派が共通認識に至っていたとする。

ただし、その検討結果をいつ国会へ報告するかについては、意見が分かれていた。

「明示することは困難である」とする主張と、「1年を目途とすべきである」とする主張があり、「とりまとめ」は、国会での法案審議等を踏まえ、附帯決議に盛り込むこと等を含めて、各党派間で合意を得るよう努力してほしいと整理した。

ここで、安定的皇位継承や女性宮家等の課題は、退位特例法そのものではなく、附帯決議を通じて政府に検討を求める方向へつながっていく。

この部分が、2017年退位特例法の附帯決議、そして2021有識者会議『報告』へつながる入口になる。

まとめるとどうなるか

「議論のとりまとめ」は、天皇の退位等について、立法府が主体的に総意を形成するために作成された文書である。

この文書は、今上天皇の「おことば」を重く受け止め、退位を認めることについて広く国民の理解が得られているとして、今上天皇が退位できるように立法措置を講ずることを整理した。

退位の法形式については、皇室典範附則に特例法との関係を示す規定を置き、具体的な退位措置は特例法で定める方向を示した。

同時に、安定的な皇位継承について、政府が速やかに検討すべきことも共通認識として示した。

とくに、安定的な皇位継承を確保するための女性宮家の創設等については、特例法施行後速やかに政府が検討すべきであるとされ、その国会報告の時期については、附帯決議に盛り込むこと等を含めて合意を得るよう努力するものとされた。

つまり、「議論のとりまとめ」は、退位を特例法で実現する道筋を整理するとともに、安定的皇位継承の課題を附帯決議へ接続した文書である。

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