皇室制度の検討の経緯はどのようか
皇室制度の検討は、女系天皇を認めるかどうかという対立を底流として進んできました
近年の皇位継承論議は、2005年(平成17年)、小泉純一郎政権下で設けられた「皇室典範に関する有識者会議」から本格化しました。秋篠宮の誕生以降、長く皇室に男児の誕生がなく、皇位継承資格者が限られていたことが背景にありました。
有識者会議は、女性・女系天皇を容認する方向を示し、皇室典範改正の動きにつながりました。しかし、秋篠宮の紀子妃の懐妊が法案提出直前に判明し、議論は棚上げされました。この時点でも、女系天皇の容認に反対する意見がありました。
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報告書は、現行制度のままでは将来、皇位継承資格者が不在となるおそれがあるとし、そのため、安定的な皇位継承を可能にする制度を早急に構築することは避けて通れない課題だと述べています。そのうえで、少子化や晩婚化などの社会変化の下では、男系男子による継承を維持していくことはきわめて困難になっている、という認識を示しています。
その後、男児の誕生がないまま、2012年(平成24年)、野田佳彦政権下で「皇室制度に関する有識者ヒアリング」が始まりました。ここでは、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設が提案されました。
この時の議論では、皇位継承そのものではなく、皇族数の減少への対応が課題とされました。皇位継承まで議論を広げると、男系維持派と女系容認派との対立が激しくなることが想定されたためです。論点整理までは行われましたが、野田政権の退陣により、議論は立ち消えになりました。この時も、女系天皇に反対する立場から、「女性宮家」案への反対意見が示されました。
「実施について」は、女性皇族が婚姻により皇籍を離れると、皇室の御活動の安定的維持や天皇皇后両陛下の御負担軽減が緊急性の高い課題になるとしたうえで、今回の検討は女性皇族の問題と皇室の御活動維持に絞り、皇位継承問題とは切り離して行うとしています。論点整理の「問題の所在」も、未婚の女性皇族が今後順次皇籍を離脱すれば、そう遠くない将来に皇室が現在のような御活動を維持することが困難になると懸念し、今回の検討を女性皇族の婚姻後の身分と皇室の御活動維持という問題に絞って行うと整理しています。
2016年(平成28年)に、明仁天皇が退位の意向をにじませるビデオメッセージを公表。これを受けて設置された「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」は、皇室典範の改正でなく特例法の制定によって退位できるようにすることを提言しました。この時、同時に「皇族数の減少に対する対策について速やかに検討を行うことが必要」とも言及されました。
2017年に退位を認める皇室典範特例法が成立しました。各党派による法案審議の過程で「安定的な皇位継承」も課題となり、特例法の成立と同時に、その検討を政府に求める付帯決議が採択されました。
附帯決議を受けて、2021年、菅義偉政権下で「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議が設置されました。会議は同年、皇位継承策そのものは先送りしつつ、皇族数確保策2案を柱とする報告書を取りまとめました。2案とは、①女性皇族が結婚後も皇室に残ること、②旧宮家の子孫を皇族にすること、です。
この報告は2022年に国会に提出されましたが、各党・各会派の議論が本格化したのは2024年からでした。その議論は現在も続いています。
論点として、①女性皇族が結婚後も皇室に残ることについては、各党派に大きな異論はありませんが、女性皇族の夫や子を皇族とするかどうかで意見が分かれています。夫や子を皇族にすると、女系天皇が誕生することにつながると懸念する考えがあるためです。また、②旧宮家の子孫を皇族にすることについては、これを強く主張する意見がある一方、疑問を示す意見もあります。折り合いの見通しは立っていません。
このように、現在の議論は皇族数の確保策を巡るものとされていますが、その根底には、女系天皇を認めるかどうかという対立があります。
経緯の概観
| 年月 | 出来事 |
|---|---|
| 2005年1月 | 小泉純一郎首相の下で「皇室典範に関する有識者会議」初会合 |
| 2005年11月 | 有識者会議が女性・女系天皇を容認する報告書を取りまとめ。小泉首相が典範改正案を国会提出する方針を表明 |
| 2006年2月 | 宮内庁が秋篠宮紀子妃の懐妊を発表。政府は改正案の国会提出を見送り |
| 2012年2月 | 野田佳彦内閣が皇族数減少対策で「皇室制度に関する有識者ヒアリング」開始 |
| 2012年10月 | 「女性宮家」創設案を含む論点整理公表 |
| 2012年12月 | 衆院選で民主党が大敗、野田内閣が総辞職 |
| 2016年8月 | 上皇さまが天皇退位の意向をにじませるビデオメッセージ |
| 2016年10月 | 政府の「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が初会合 |
| 2017年4月 | 有識者会議が最終報告を安倍晋三首相に提出 |
| 2017年5月 | 政府が特例法案を国会提出 |
| 2017年6月 | 退位を実現する特例法成立。付帯決議で政府に安定的な皇位継承策の検討を求める |
| 2021年3月 | 菅義偉首相が皇位継承策を議論する有識者会議を設置、初会合 |
| 2021年12月 | 有識者会議が皇位継承策を先送りする一方、皇族数確保策2案を柱とする報告書を取りまとめ |
| 2022年1月 | 岸田文雄首相が報告書を国会提出 |
| 2024年5月 | 報告書を受けた立法府の対応として初の全体会議 |
| 2024年9月 | 衆参両院議長が中間報告。女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案は「おおむね共通理解が得られた」 |
| 2025年6月 | 額賀福志郎衆院議長が通常国会での取りまとめを見送ると表明 |
| 2025年10月 | 自民党と日本維新の会が連立政権合意書で、皇統に属する男系男子の養子縁組を認める案を「第一優先」と明記 |
| 2026年3月 | 自民党の小林鷹之政調会長が開会中の特別国会で皇室典範の改正を目指す考えを示す |
