立法府の議論では、女性皇族本人の身分保持には大きな異論が少ない一方、配偶者・子の身分と旧宮家男系男子の養子案をめぐって意見が分かれています
政府の2021年有識者会議報告は、2022年に国会へ提出されました。
これを受けた立法府の議論は、2024年から本格化しました。
議論の中心にあるのは、皇族数をどのように確保するかです。
大きな柱は二つあります。
第一は、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案です。
第二は、旧宮家系の男系男子を養子として皇族に迎える案です。
ただし、女性皇族本人が婚姻後も皇室に残ること自体については、比較的広い賛同があります。
意見が分かれているのは、その先です。
女性皇族の配偶者と子にも皇族の身分を付与するのか。
旧宮家系の男系男子を養子として皇族に迎える制度を設けるのか。
ここで各党・各会派の意見が分かれています。
争点1 女性皇族の配偶者・子を皇族とするか
第一の争点は、女性皇族の配偶者と子を皇族とするかどうかです。
女性皇族本人が婚姻後も皇族の身分を保持する場合、配偶者や子をどのように位置づけるかが問題になります。
配偶者と子も皇族とするなら、一つの家族の中で身分が分かれる不自然さは避けやすくなります。
女性皇族が皇室活動を担う場合にも、家族としての生活と公的活動を制度上整理しやすくなる面があります。
一方で、配偶者と子を皇族とすれば、その子が将来、女系天皇につながるのではないかという懸念が出ます。
そのため、男系男子継承を維持する立場からは、配偶者・子に皇族身分を付与しない方向が重視されます。
つまり、この争点では、家族の一体性や制度の自然さを重く見るか、女系天皇への接続可能性を避けることを重く見るかが分かれています。
第1案「女性皇族の婚姻後の皇族の身分保持」に対する各党・各会派の意見の要点
女性皇族の身分保持
争点2 旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎えるか
第二の争点は、旧宮家系の男系男子を養子として皇族に迎える案です。
この案は、男系男子による皇位継承を維持しながら、皇族数を確保しようとするものです。
男系男子継承を重視する立場からは、旧宮家系男系男子の養子案は、皇統の男系継承を支える具体的な方策として位置づけられます。
この案に積極的な立場からは、旧11宮家との関係も理由として示されています。
2025年3月10日の全体会議では、公明党から、旧11宮家の方々が現行憲法・現行皇室典範施行後五か月の間は皇族であったこと、また明治天皇・昭和天皇の息女が嫁ぎ、その子孫が現在に至るまで天皇家と交流があることなどを考慮すると、これらの方々との養子縁組が認められるべきだという趣旨の意見が示されました。
一方で、この案には慎重論や反対論もあります。
現在は一般国民である人を、養子縁組によって皇族に迎えることをどう正当化するのか。
対象を旧11宮家系の男系男子に絞ることをどう説明するのか。
本人の意思、国民の理解、憲法上の平等原則、皇室と国民の身分の区別をどう考えるのか。
こうした問題が指摘されます。
2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、対象を旧11宮家の子孫に限るのか、時期や親等で区切るのか、旧11宮家以外にも広げるのかについて、有識者会議報告では十分に検討されていないという指摘もありました。
つまり、この争点では、男系男子継承の維持を制度的に支えることを重く見るか、一般国民を皇族とすること、そして対象を旧11宮家系男系男子に絞ることの制度上・憲法上・国民理解上の課題を重く見るかが分かれています。
第2案「皇統に属する男系男子を養子に迎えること」に対する各党・各会派の意見の要点
旧宮家系男系男子の養子案
なぜそこで割れるのか
立法府の議論は、表向きには皇族数確保策をめぐるものです。
しかし、その底には、皇族数確保策を皇位継承問題からどこまで切り離せるのかという問題があります。
女性皇族本人の身分保持は、皇族数確保策として比較的受け入れられやすい案です。
しかし、配偶者と子を皇族とするかどうかまで進むと、女系天皇への接続可能性が問題になります。
旧宮家系男系男子の養子案は、男系男子継承を維持する方策として提示されています。
しかし、そのために一般国民を皇族に迎える制度を設けること、また対象を旧11宮家系男系男子に絞ることには、憲法上、制度上、国民理解上の課題があります。
つまり、立法府の議論は、皇族数を確保するための技術的な制度論に見えながら、その背後では、男系男子継承を維持するのか、女性・女系天皇への接続可能性をどう扱うのかという問題に触れています。
このため、女性皇族本人の身分保持では近づけても、配偶者・子の身分と旧宮家系男系男子の養子案で、意見が割れているのです。
まとめるとどうなるか
皇室制度をめぐる立法府の議論では、女性皇族本人が婚姻後も皇族の身分を保持することについては、比較的広い賛同があります。
しかし、女性皇族の配偶者と子を皇族とするかどうかでは、意見が分かれています。
配偶者と子を皇族とすれば、家族の一体性は保ちやすくなりますが、女系天皇への接続可能性が問題になります。
また、旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎える案についても、男系男子継承を維持する方策として重視する立場と、一般国民を皇族とすること、対象を旧11宮家系男系男子に絞ることの制度上・憲法上・国民理解上の課題を重く見る立場が分かれています。
そのため、立法府の議論は、女性皇族本人の身分保持では近づきつつも、配偶者・子の身分と旧宮家系男系男子の養子案で割れているといえます。