書名:象徴天皇の源流
副書名:権威と権力を分離した日本的王制
著者:今谷明(いまたに・あきら)
出版者:新人物往来社
出版年月:2011-12
ISBN:978-4-404-04122-7
権威と権力を分ける日本的王制の歴史をたどる
日本の天皇制において、天皇の権威と政治権力がどのように分離され、不執政の天皇が形成されてきたのかを、歴史の中から読み解く本である。副書名は「権威と権力を分離した日本的王制」。現代の憲法が規定する天皇の象徴性を、日本政治史の流れの中で考えようとする。
大仏建立や道鏡の重用など、強い政治的主導性を示した天武系の皇親政治は、称徳天皇の死後、光仁、桓武と天智系に移る。この転換を主導した藤原氏は勢力を伸張し、仁明天皇の時代に藤原緒嗣が最初の事実上の人臣摂政となり、その後、執政五職―摂政、関白、内覧、一上(いちのかみ)、準摂政―が固定化していく。政治権力が執政者へ移る一方で、天皇の権威はむしろ絶対化していく。
清和天皇が満8歳で即位して以降、幼帝が続出している。天皇が幼少でも執政は滞らなかったのだ。満4歳の崇徳天皇の大嘗会では、摂政の九条忠通が介添えとして所作を代行した。彼の日記によると、天皇はむずかり続けたという。一方で忠通は、神事は帝の行うことで人臣のつとめではなく「怖畏(ふい)の至り。謝す所を知らず」と記しているのが興味深い。
「象徴天皇」という言葉は現代憲法の用語だが、摂関期から院政期を経て、政治の実権が幕府に移る経過をたどる本書は、権威を保持しながら政治権力とは距離を置く、世界でも独特な日本的王制を歴史から考えるための一冊である。
著者について(同書による)
今谷明(いまたに・あきら)
1942年生まれ。京都府出身。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学。日本中世政治史専攻。文学博士。現在、帝京大学特任教授。主な著書に『室町の王権』(中公新書)、『武家と天皇』(岩波新書)、『信長と天皇』(講談社学術文庫)などがある。
今谷教授は、2012年の有識者ヒアリングで意見を述べています。