書名:象徴天皇
著者:高橋紘(たかはし・ひろし)
出版者:岩波書店(岩波新書 黄版 372)
出版年月:1987-04
ISBN:4-00-420372-4
昭和末期に、象徴天皇制の歩みと課題を正面から見る
昭和天皇の戦後の歩みと、象徴天皇制の成立、定着、課題を扱った本である。刊行は1987年4月。昭和天皇が高齢となり、次の時代が意識されはじめた時期に、戦後の「象徴天皇」とは何だったのかを、皇室報道、宮内庁、国民との関係、皇室外交、次代への継承という観点から考えようとする。
戦争末期から敗戦後に象徴天皇の制度ができあがる過程の記述から始まり、天皇を支える宮内庁の体制、外国や地方訪問などの活動、天皇陵、宮中祭祀、代替わりの儀式が、章立てで解説される。筆者は通信社で長く皇室取材を担当し、本書発刊の時点で「皇室取材を始めて一三年」。実際の現場を踏んでおり、天皇の手紙は封をして女官に渡す、女官はそれを、25センチ四方、深さ4、5センチの黒漆塗りの「お文文庫(おふみぶんこ)」に入れて運ぶというやり方や、吹上御苑のあちこちには「ご愛草(ごあいそう)」と呼ばれる昭和天皇の好きな雑草が、白いビニール紐で囲って踏まないようにしてあるなど、具体的な記述がある。
「天皇制に対し、賛成でも反対でも良いのだが、もう少し実態を知ったうえで議論してはどうか」との考えから、天皇制の実態をありのままに出すよう努めたという。現在の皇室制度を考えるうえでも、昭和末期に象徴天皇制がどのように見られていたかを確認するためにも、基礎的な一冊である。
著者について(同書による)
高橋紘(たかはし・ひろし)
1941年東京都に生まれる。1965年早稲田大学法学部卒業。現在―共同通信社会部次長。
著書―『現代天皇家の研究』(講談社)『天皇家の密使たち』(共著、徳間書店)『陛下、お尋ね申し上げます』(共編著、現代史出版会)ほか
著者はその後、静岡福祉大教授となり、2005年の皇室典範に関する有識者会議で意見陳述している。
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