書名:天皇
副書名:天皇の生成および不親政の伝統
著者:石井良助(いしい・りょうすけ)
出版者:講談社
出版年月:2011-07
ISBN:978-4-06-292059-9
天皇の生成と、不親政の伝統をたどる
天皇が直接政治を行わない「不親政」が天皇統治の伝統であることについて、法制史の視点から各時代を追いながら論述する本である。ベースになっているのは、著者が1950年(昭和25)年に上梓した『天皇―天皇統治の史的解明―』。戦前の国体論者が、天皇親政が国体であるとしていたのと真逆の論旨である。また、不親政とともに、天皇統治には「刃に血ぬらざる」伝統があると著者は考えており、その点も記述している。
本書は日本の歴史を6つの時代に区分する。上代(弥生時代~推古天皇)、上世(大化の改新~平安前半期)、中世(平安後半期~室町時代)、近世(戦国時代~江戸時代)、近代(幕末~終戦)、現代の6つである。戦前は、上世(律令時代)と近代(明治時代)に、国体の精華がもっともよく発揮されたという主張があった。だが著者は、その時期の天皇はいずれも、外国の一定の型(中国の律令、プロイセンの憲法)にならって、意識的につくられた天皇であると述べる。
最後の章は、天皇統治の実体と国体についてである。上世と近代は「つくられた天皇」の姿だったのに対し、上代、中世、近世には伝統が連続しており、それは現在とも連続しているといいうる、と著者は述べる。「天皇不親政の伝統も刃に血ぬらざるの伝統も上代に生まれたものであるが、それが何れも現代までも影響を及ばしていると考えられるところに、日本文化の特色が見出される」との観点で、歴史と現代とを結びつけている。
1982年山川出版社から刊行された原書の文庫版。
著者について(同書による)
石井良助(いしい・りょうすけ)
1907年生まれ。東京帝国大学法学部法律学科卒業。東京大学教授を務めたのち、東海大学名誉教授。専攻は日本法制史。著書に『日本法制史概説』『江戸の刑罰』『江戸時代漫筆』『女人差別と近世賤民』などがある。1993年没。