短くいうと…
公的な活動のための「宮廷費」、天皇、上皇と家族の日常生活などのための「内廷費」、皇族が使うための「皇族費」がそれぞれ国が支出している。
少し長くいうと…
明治憲法時代、皇室は国庫からの定額金のほか皇室としての財産である資金(現金、有価証券等)や御料林などからの収入など独立した財源を持っていたが、こうした皇室の費用に関する制度も戦後の制度改革により「すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」(憲法第八八条)とされた。
これを受け皇室経済法は予算に計上する皇室の費用を「宮廷費」「内廷費」「皇族費」に区分している(皇室経済法第三条)。
皇室の費用のうち、公的な活動や皇室用財産の管理等に要する費用は宮廷費から、また天皇、上皇及び内廷皇族の生活等日常に関する費用(服装、日常の食事、研究、非公式な賜り・旅行などに要する費用)は内廷費から、皇族について品位保持に充てるための費用は皇族費から、それぞれ支出する制度となっている。
これらのうち、宮廷費は宮内庁の経理する公金であり(皇室経済法第五条。平成31年度は、111億4903万円)、内廷費として支出されたもの及び皇族費として支出されたものは、宮内庁の経理に属する公金としない(同法第四条、第六条)とされ、皇室の意思により使用される御手元金(おてもときん)となっている。
内廷費は、皇室経済法により、別に法律で定める定額を毎年支出するものとされており(同法第四条第一項)、これを受けて皇室経済法施行法第七条により定額が規定されている(平成31年度〈二○一九年度〉は、三億二千四百万円)。
皇族費は、皇族または皇族であった者としての品位保持の資に充てるために支出するものとされ(皇室経済法第六条第一項)、次の二つがある。①年額により毎年支出するものとして、内廷外皇族に対しての支出(同法第六条第三項)、②一時金額により支出するものとして、初めて独立の生計を営む皇族(同法第六条第六項。例えば男性皇族が婚姻により独立の生計を営むことになる場合)及び皇室典範に定めるところによりその身分を離れる皇族(同法第六条第七項。例えば女性皇族が婚姻により皇族の身分を離れる場合)に対して、それぞれ支出されることが定められている(平成31年度の皇族費の総額は、二億6423万円)。
なお、宮内庁の運営に関する費用(人件費・事務費など)は皇室の費用ではなく、宮内庁費から支弁される(平成三十一年度〈二○一九年度〉は、百二十三億二千六百五十二万円)
園部逸夫『皇室法入門』