2016-17退位有識者会議『最終報告』

書名:最終報告

副書名:天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議

作成:天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議

公表年月:2017-04-21

所管:内閣官房

『最終報告』全文

『最終報告』参考資料

『最終報告』概要

退位を実現する場合の制度設計を整理した最終報告

2016-17退位有識者会議『最終報告』は、今上天皇の公務負担軽減等を出発点として設置された有識者会議が、退位を実現する場合に必要となる制度設計を整理した文書である。

正式な会議名は、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」である。

会議の設置名は「公務の負担軽減等」であり、検討の出発点も、今上天皇の公務負担をどう軽減するかという形をとっていた。

しかし、『最終報告』が最終的に整理した中心は、単なる公務の縮減ではなかった。

中心になったのは、退位が実現した場合に、退位後の天皇及びその后を制度上どのように位置づけるか、また皇嗣となる皇族をどのように扱うかという制度設計であった。

退位後の天皇の立場を中心に、退位後の称号、敬称、資格、組織を整理し、皇子(天皇の子ども)ではない皇位継承順位第一位の皇族の称号も検討し、「皇嗣」とした。

『最終報告』は、公務負担軽減という入口から、退位特例法の制度設計へ進んだ文書である。その議論は、退位特例法成立の際の附帯決議を生んだ起点として、現在の議論に接続している。

『最終報告』は、何を受けて作られたのか

『最終報告』は、今上天皇の公務負担軽減等のために何ができるかを検討するために設置された有識者会議の最終的な取りまとめである。

2016年9月23日、内閣総理大臣決裁により、「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」が開催されることになった。

開催の趣旨は、天皇の公務の負担軽減等について、様々な専門的知見を有する人々の意見を踏まえた検討を行うことであった。

第1回会議は、2016年10月17日に開かれた。

会議は、皇室制度、歴史、憲法などの専門家への有識者ヒアリング、自由討議、海外制度や高齢者に関する検討、論点整理、追加ヒアリング、報告書案の検討を経て、2017年4月21日に『最終報告』を取りまとめた。

『最終報告』は、2017年1月の中間的な論点整理を経て、退位後の立場や称号等についての会議の議論を最終的に取りまとめたものである。

『最終報告』は、何を中心に整理したのか

『最終報告』は、退位を実現する場合に必要となる、退位後の称号・敬称・資格・組織・費用・活動のあり方を中心に整理した。

『最終報告』の中心に置かれているのは、退位後のお立場等である。

具体的には、退位後の天皇及びその后の称号、敬称、皇位継承資格、摂政・臨時代行就任資格、皇室会議議員就任資格、皇籍離脱の可否、大喪の礼、陵墓が整理されている。

さらに、退位後の天皇及びその后の事務をつかさどる組織、退位後の天皇及びその后に係る費用、退位後の天皇の御活動のあり方も検討されている。

また、皇子ではない皇位継承順位第一位の皇族の称号等も取り上げられている。

これは、退位により、皇太子徳仁親王が新たな天皇となり、秋篠宮が皇位継承順位第一位の皇族となることに対応するための制度整理である。

退位後の天皇・皇后の立場は、どう整理されたのか

『最終報告』は、退位後の天皇の称号を「上皇」、退位後の天皇の后の称号を「上皇后」とする方向を整理した。

『最終報告』は、退位後の天皇の称号について、歴史的に退位後の天皇の称号として定着してきたことなどを踏まえ、「上皇」とする方向を整理した。

また、退位後の天皇の后については、「上皇」という新たな称号と一対になる称号として、「上皇后」とする方向を示した。

ここでは、歴史と伝統を踏まえること、日本国憲法における天皇の位置づけに照らして国民の理解と支持が得られること、象徴や権威の二重性などの弊害を生じさせないことが重視されている。

退位後の天皇については、皇位継承資格、摂政・臨時代行就任資格、皇室会議議員就任資格などについても、退位後の立場にふさわしい制度整理が行われた。

皇嗣となる皇族の称号等は、どう整理されたのか

『最終報告』は、皇子ではない皇位継承順位第一位の皇族について、称号、組織、経費区分などを整理した。

退位が実現すると、皇太子徳仁親王が新たな天皇となり、秋篠宮が皇位継承順位第一位の皇族となる。

しかし、秋篠宮は天皇の皇子ではないため、皇室典範上の「皇太子」には当たらない。

そのため、『最終報告』は、「皇子ではない皇位継承順位第一位の皇族」の称号等を検討し、「皇太子」「皇太弟」ではなく、皇位継承順位第一位の皇族を指す一般的な語である「皇嗣」という語で位置づける方向を整理した。

この検討は、退位後の天皇及びその后の制度整理と並んで、退位特例法における重要な制度設計上の論点であった。

退位特例法、附帯決議、現在の議論にどうつながるのか

『最終報告』は、退位特例法の制度設計につながり、その法案に対する附帯決議を通じて、2021有識者会議『報告』や2024年以降の立法府対応へ接続する。

『最終報告』そのものは、皇族数確保策や女性皇族の婚姻後の身分保持を直接整理した文書ではない。

中心にあるのは、今上天皇の退位を実現する場合に必要となる制度設計である。

しかし、この『最終報告』を受けて、天皇の退位等に関する皇室典範特例法案が作られ、国会で審議された。

その法案に対する附帯決議では、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等についての検討が政府に求められた。

その後、この附帯決議を受けて、2021附帯決議有識者会議『報告』が作成され、さらに2024年以降、立法府の側で皇族数確保策をめぐる議論が進められている。

2016-17退位有識者会議『最終報告』は、現在の皇族数確保論に直接内容でつながる文書ではない。

むしろ、退位特例法とその附帯決議を生んだ起点として、現在の議論に接続している。

主な検討項目と整理結果

主な検討項目と整理結果を、簡略に示すと次のようになる。

検討項目検討結果
退位後の天皇の称号上皇
退位後の天皇の后の称号上皇后
退位後の天皇及びその后の敬称陛下
退位後の天皇の皇位継承資格皇位継承資格を持たない
摂政・国事行為臨時代行への就任資格就任しない方向で整理
皇室会議議員への就任資格就任しない方向で整理
皇籍離脱想定しない方向で整理
大喪の礼実施する方向で整理
陵墓天皇・皇后と同様の扱いを基本に整理
事務をつかさどる組織上皇職を置く方向で整理
費用内廷費として扱う方向で整理
退位後の御活動象徴や権威の二重性を避ける観点から整理
皇子ではない皇位継承順位第一位の皇族の称号皇嗣

まとめるとどうなるか

2016-17退位有識者会議『最終報告』は、今上天皇の公務負担軽減等を出発点として、退位を実現する場合に必要となる制度設計を整理した文書である。

正式な会議名は「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」だが、最終報告の中心は、公務の縮減そのものではなく、退位後の天皇及びその后の制度上の位置づけであった。

『最終報告』は、退位後の称号、敬称、資格、組織、費用、活動のあり方を整理した。

また、皇子ではない皇位継承順位第一位の皇族の称号等も検討した。

この制度整理は、退位特例法につながった。

そして、退位特例法案に対する附帯決議を通じて、2021附帯決議有識者会議『報告』と2024年以降の立法府対応へ接続していく。

その意味で、『最終報告』は、現在の皇族数確保論そのものを整理した文書ではないが、現在の議論へ至る制度過程の重要な起点である。

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