高森明勅教授は、皇位継承の危機は、現行制度が継承資格を歴史上例のないほど狭くしていることから生じていると見て、女系・女子を含める方向で制約を緩和すべきだと述べました
2005年6月8日の皇室典範に関する有識者会議第7回では、高森明勅教授へのヒアリングが行われました。高森教授は、皇位継承と皇室存続をめぐる危機の主因は、男子の誕生に恵まれなかったという偶然だけではなく、現行制度における皇位継承資格の制約が、歴史上例を見ないほど窮屈になっていることにあると述べました。そのうえで、女系も皇統に含まれ得るとして、女系・女子を含める方向で制約を緩和すべきだと主張しました。
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高森教授は、現状をどう見ていたか
高森教授は、皇位継承と皇室存続に関わる深刻な危機があると見ていました。
<皇室全体の深刻な危機感>
高森教授は、皇位継承をめぐる現状について、将来に大きな危機が予想されると述べました。その際、高松宮妃喜久子の文章を紹介し、女性皇族が即位する可能性を考えておくことは、長い日本の歴史に照らして不自然ではないという趣旨を取り上げました。高森教授は、この発言を、皇室全体が抱いている皇位継承と皇室存続に関わる深刻な危機感の表れとして受け止めるべきだとしました。
高森教授は、危機の原因をどう見ていたか
高森教授は、危機の主因は、現行制度の皇位継承資格が歴史上例のないほど狭いことにあると考えていました。
<皇位継承資格をめぐる五つの制約>
高森教授は、現行制度では、皇位継承資格について、皇統に属すること、嫡系であること、男系であること、男子であること、皇族であることという制約が重なっていると整理しました。そして、これらの制約が、歴史上かつて例を見ないほど窮屈なものになっていることが、皇位継承の将来を不安定にしている根本的な原因だと述べました。
高森教授は、どの制約を緩和できると考えたか
高森教授は、皇統・嫡系・皇族という制約は維持しつつ、男系・男子の制約を緩和できると考えていました。
<男系と男子の制約を緩和する>
高森教授は、皇統に属するという条件は維持すべきであり、嫡系に限定する制約を緩和することも現実的ではないと述べました。また、皇族であることについても、皇室と国民の区別が曖昧になるため、緩和は難しいとしました。他方で、女系も皇統に含まれ得るため男系限定は緩和可能であり、過去に女性天皇の例があるため男子限定も緩和可能だと整理しました。
高森教授は、なぜ女性天皇だけでは不十分だと考えたか
高森教授は、女性天皇を認めても女系を認めなければ、継承問題を一代先送りするだけだと考えていました。
<女子だけではなく女系も認める必要>
高森教授は、女性天皇を認めても、女系継承を認めなければ、その女性天皇の子が皇位を継承できないと述べました。国民男子との結婚が最も確率の高いケースである以上、男子限定だけを緩和しても、男系限定を緩和しなければ、安定的な皇位継承にはつながらないと見ていました。
高森教授は、旧宮家復帰論をどう見ていたか
高森教授は、旧宮家男子の復籍論は、実現しても問題を先延ばしするだけだと見ていました。
<男系限定を残せば、いずれ行き詰まる>
高森教授は、旧宮家の男子が皇籍に復帰する案について、最大限譲った場合の境界として考える余地はあるとしつつも、男系限定を緩和しない限り、いずれそれらの宮家も行き詰まると述べました。また、Y染色体論を広げると、皇室と国民の区別を曖昧にしかねないとも指摘しました。
高森教授は、女系も皇統に含まれ得る根拠をどう示したか
高森教授は、女系も皇統に含まれ得る根拠として、歴史上の実例、養老令の規定、皇室典範の文言を挙げました。
<女系も皇統として機能し得た>
高森教授は、女系も皇統に含まれ得る根拠として、第一に、過去に女系も現実に皇統として機能し得た事実を挙げました。たとえば、継体天皇と手白香皇女の関係や、光格天皇、明治天皇・昭和天皇の内親王が傍系宮家に嫁いだ例を挙げ、女系がまったく皇統ではないなら、これらの配慮は無意味になると述べました。
<養老令にも女系を位置づける規定があった>
第二に、高森教授は、明治初期まで形式上存続した養老令に、女系の継承を認める規定があったと述べました。女帝の子も親王であるとする本注を根拠に、女帝との血統によって子の地位を位置づける考え方があったと説明しています。
<皇室典範の文言も女系の存在を前提>
第三に、高森教授は、明治・昭和の皇室典範が「皇統に属する男系の男子」と表現していることを挙げました。皇統が男系だけを意味するなら、あえて「男系」と重ねて限定する必要はなく、皇統には男系と女系の両方が含まれ得るからこそ、「皇統に属する男系」という表現になっていると見ていました。
高森教授は、男系継承が維持されてきた理由をどう見たか
高森教授は、男系継承が維持されてきた大きな理由は、父系継承としての「姓」の観念にあったと見ていました。
<姓の観念は制度的・社会的根拠を失った>
高森教授は、これまで男系継承が維持されてきた背景として、「姓」という父系継承の観念が社会を大きく規定していたことを挙げました。しかし、この「姓」の観念は、制度的にも社会意識としても失われているため、皇位継承資格を男系に縛っていた大きな条件はもはやないと考えていました。
高森教授は、継承順位をどう考えたか
高森教授は、直系を優先し、同じ系統の兄弟姉妹間では男子を優先すべきだと考えていました。
<女系・女子容認だが、同じ系統では男子優先>
高森教授は、女系・女子の皇位継承を認める方向を提案しつつ、継承順位については、直系を優先し、同じ系統の兄弟姉妹間では男子を優先すべきだと述べました。その理由として、過去125代中、女性天皇は10代であったことと、天皇の公務と女性の肉体的・生理的条件との兼ね合いを挙げています。
高森教授は、皇族の範囲をどう考えたか
高森教授は、永世皇族制を前提に、三世以下の皇族や皇族女子について、皇籍離脱・皇籍維持の仕組みを整えるべきだと考えていました。
<皇族女子が婚姻後も皇籍にとどまる仕組み>
高森教授の提出資料では、皇族の範囲について、永世皇族制を前提に、三世以下の王・女王は本人の意思と皇室会議の議決によって皇籍離脱を認めること、女系・女子の皇位継承に道を開いた場合には、内親王・女王も本人の意思と皇室会議の議決によって、婚姻後も皇籍にとどまれるようにする必要があると整理されています。
まとめるとどうなるか
高森明勅教授は、皇位継承の危機は、現行制度が継承資格を歴史上例のないほど狭くしていることから生じていると見て、女系・女子を含める方向で制約を緩和すべきだと述べました。
さらに、高森教授は、女系も皇統に含まれ得る根拠を、歴史上の実例、養老令の規定、皇室典範の文言から示し、女性天皇だけでなく女系継承まで認めなければ、安定的な継承にはつながらないと考えていました。
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