2024立法府対応では、旧宮家系男系男子の養子案は、どのように議論されたのか

旧宮家系男系男子の養子案は、男系維持のための皇族数確保策として議論されましたが、対象者の有無、先例との関係、憲法上の疑義、事実上の不都合、養子本人と子孫の皇位継承資格が問題になりました

この案は、2021年有識者会議報告で示された二つの方策のうちの一つです。

2024附帯決議後の立法府対応でも、2025年3月10日の全体会議で「皇統に属する男系男子を養子に迎えること」が論点とされ、各党・各会派の意見交換が行われました。

この案は、女性皇族の配偶者や子を皇族とすることに慎重な立場から見れば、男系による皇統継承を維持しながら皇族数を補う制度案として位置づけられます。

しかし、一般国民として生活してきた旧宮家系男系男子を皇族にすることには、対象者の有無や意思、先例との整合性、憲法14条との関係、国民の理解、権利制約、養子本人と子孫の皇位継承資格など、多くの論点があります。

男系維持のための制度案であると同時に、将来の皇位継承資格者の範囲をどう考えるかに接続する制度案です。

2025年3月10日 全体会議議事録

この案に積極的な意見はどのようだったか

旧宮家系男系男子の養子案を歓迎し、まず制度を決めるべきだという意見がありました。

この案に積極的な意見は、男系による皇統継承を維持しながら皇族数を確保できる点を重視しています。

皇室典範では、現在、皇族の養子は認められていません。それを可能にするこの案は、男系男子による皇位継承を維持する立場と親和的です。

2025年3月10日の全体会議では、自由民主党から、旧十一宮家の皇族男子の子孫である男系男子に養子に入ってもらうことは、皇族数確保、安定的皇位継承のために必要な方策である、という趣旨の意見が示されました。

また、制度の進め方については、まず制度を決めておき、対象者の意思があれば養子縁組を進めるべきだという考え方も示されています。

公明党からは、皇室が男系による継承を積み重ねてきたことを踏まえ、養子となり皇族となる者を皇統に属する男系男子に限るとする有識者会議報告は妥当だという趣旨の意見が示されました。

日本維新の会からも、旧十一宮家の皇族男子の子孫である男系男子を養子に迎える案を高く評価し、皇室の歴史と整合的で現実的な案として、法制度として実現すべきだという趣旨の意見が示されています。

これらの立場に共通するのは、男系による皇統継承を維持しながら、減少する皇族数に対応しようとする点です。

この案には、どのような疑問が出されているのか

疑問として出されているのは、立法事実の確認、先例主義との整合性、憲法上の疑義、事実上の不都合です。

2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、この案を議論するための論点として、四つの点が示されました。

第一に、立法事実の確認です。

第二に、先例主義との整合性です。

第三に、憲法上の疑義です。

第四に、事実上の不都合です。

この案は、単に「男系男子を増やす」制度案にはとどまらない問題をはらんでいます。

一般国民として生活してきた人を皇族にする以上、その対象者が実際にいるのか、その人に皇族となる意思があるのか、皇室の先例とどう整合するのか、憲法上どう説明できるのか、皇族となることに伴う権利制約をどう考えるのかが問題になります。

立法事実の確認――対象者が実際にいるのか、その人に皇族となる意思があるのか

対象者が実際にいるのか、その人に皇族となる意思があるのかが確認されなければ、制度として実効性を持つかが分かりません。

旧宮家系男系男子の養子案は、皇統に属する男系男子が実際に養子となることを前提にしています。

そのため、対象となり得る人が実際にいるのか、その人が皇族となる意思を持つのかが問題になります。

2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、対象者の存在は少なくとも現時点で確認されておらず、意思についても不明であるとして、皇族数確保手段として非常に不確実ではないかという趣旨の意見が示されました。

また、対象を旧十一宮家の子孫に限るのか、時期や親等で区切るのか、旧十一宮家以外にも広げるのかについて、有識者会議報告では十分に検討されていないという指摘もされました。

一方、自由民主党からは、まず制度を決めておき、その意思があれば養子縁組を進めるべきだという考え方が示されています。

ここには、制度を先に作るのか、対象者の有無や意思を確認してから制度設計へ進むのかという違いがあります。

先例主義との整合性――一般国民として生活してきた者を養子として皇族に迎えられるのか

一般国民として生活してきた者を養子として皇族に迎えることが、皇室の先例とどう整合するかが問われています。

旧宮家系男系男子は、皇統に属する男系男子であるとされます。

しかし、現在は一般国民として生活しています。

そのため、一般国民として生活してきた者を養子として皇族に迎えることが、皇室の歴史や先例とどう整合するのかが問題になります。

2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、歴史上、養子として皇族に迎えたという形で、皇族ではなかった者を皇族にした先例はないという趣旨の指摘がありました。

一方で、同じ発言の中では、先例は時代に合わせて変化してきたものであり、皇族でない女性が皇族と結婚すれば皇族の身分を得る制度や、側室制度の廃止も、時代の変化に応じた制度整理であるという見方も示されています。

このように、先例との関係は、一方で制度導入への慎重論の根拠となり、他方で、時代に応じた制度変更をどう考えるかという論点にもなっています。

憲法上の疑義――旧宮家系男系男子に対象を限ることをどう説明するのか

皇統に属する男系男子、とくに旧宮家系男系男子に対象を限ることが、憲法14条の平等原則との関係でどう説明されるかが問題になります。

旧宮家系男系男子の養子案では、一般国民の中から、皇統に属する男系男子を対象にして皇族に迎えることが想定されます。

その場合、対象を男系男子に限ること、旧十一宮家系の子孫に限ること、あるいは皇統に属する他の男系男子との関係をどう整理するかが問題になります。

2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、一般国民である旧十一宮家の男系男子に限ることは、憲法14条1項の平等原則違反に当たり得るのではないかという疑義が示されました。

また、旧十一宮家の男系男子に限定することは、皇統に属する他の男系男子との間でも平等原則に反する疑義が生じる、という趣旨の指摘もありました。

これに対し、支持する立場からは、憲法2条は憲法14条の特則であり、皇統に属する男系男子による皇位継承を定める皇室典範は合憲であるとの共通認識に立つべきだ、という考え方が示されています。

この論点は、単に養子制度を設けるかどうかではなく、皇統、男系、旧宮家系という限定を、憲法上どう説明するかに関わります。

事実上の不都合――一般国民が皇族になることに伴う権利制約をどう考えるのか

一般国民として生活してきた者が皇族になる場合、皇族としての権利制約や生活上の変化をどう考えるかが問題になります。

旧宮家系男系男子の養子案では、一般国民として生活してきた者が、養子縁組によって皇族となることが想定されます。

皇族となれば、一般国民として持っていた権利や生活の自由に、一定の制約が生じます。

2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、養子となる場合には皇族としての権利制約が生じるため、一般国民である男系男子にとって高いハードルになるのではないかという趣旨の指摘がありました。

また、養子となる場合の養親を誰にするのか、どのような手続で養子縁組を行うのかといった具体的な制度設計も問題になります。

この論点は、対象者の有無や意思の問題ともつながります。

制度上は養子を迎えることができるとしても、実際にその制度を利用する人がいるのか、皇族となることに伴う生活上・法的な変化を本人が受け入れるのかが問われるからです。

養子本人と子孫の皇位継承資格は、どう問題になるのか

養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、その子孫をどう扱うかが残ります。

旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎える場合、その人に皇位継承資格を認めるのかが問題になります。

2021年有識者会議報告では、養子本人には皇位継承資格を認めない方向で整理されています。

2025年3月10日の全体会議でも、自由民主党から、皇族となった方の皇位継承資格については、皇位継承資格は持たないとすることが適切である、という趣旨の意見が示されました。

しかし、同時に、縁組後に生まれた男子は皇位継承資格を有するものとすることが適切である、という考えも示されています。

ここに、この案の核心があります。

養子本人には皇位継承資格を認めない。

しかし、養子後に生まれた子には皇位継承資格を認めるのか。

認めるなら、皇族数確保策が、将来の皇位継承資格者の範囲を動かすことになります。

認めないなら、皇族でありながら皇位継承資格を持たない男系男子を制度上作ることになります。

2025年3月10日の全体会議では、立憲民主党から、有識者会議報告には養子の子孫について言及がないとして、どう整理するのかを議論として明確にする必要がある、という趣旨の指摘もされています。

この点は、旧宮家系男系男子の養子案が、皇族数確保策でありながら、将来の皇位継承資格者の範囲と直接つながることを示しています。

まとめるとどうなるか

旧宮家系男系男子の養子案は、男系維持の枠内で皇族数を確保しようとする案です。

そのため、女性皇族の配偶者や子を皇族とすることに慎重な立場からは、有力な制度案として位置づけられます。

しかし、一般国民として生活してきた旧宮家系男系男子を皇族に迎えるには、立法事実の確認、先例主義との整合性、憲法上の疑義、事実上の不都合を整理する必要があります。

さらに、養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、その子孫に皇位継承資格を認めるのかという問題が残ります。

その意味で、この案も、皇族数確保策であると同時に、将来の皇位継承資格者の範囲をどう考えるかに接続する制度案だといえます。

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