2005有識者会議の第8回では、何が話し合われたのか

第8回は、識者ヒアリングと関連資料を受けて、皇位継承制度をどう整理するかを議論した回でした

2005年6月30日、皇室典範に関する有識者会議の第8回会合が開かれました。

この回では、第6回・第7回の識者ヒアリングを整理した資料と、関連資料として昭和22年10月の皇籍離脱、大嘗祭を中心とする皇位継承儀式、「姓(せい)」についての資料が説明されました。

皇室典範に関する有識者会議(第8回)議事要旨

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そのうえで、会議メンバーは、男系継承、女性・女系天皇、皇族の範囲、継承順位、社会変化などについて意見交換しました。

第8回は、ヒアリングを終えてすぐに結論へ進む回ではありませんでした。むしろ、ヒアリングで出された意見を踏まえ、夏休み前の論点整理へ向かうための回でした。

男系継承は、姓・家・父系継承の観念から問い直された

第8回では、男系継承が、単なる血筋の問題としてではなく、姓、家、父系継承の観念と結びつけて議論されました。

議事要旨では、中国の姓、儒教思想、家や宗族、日本古代の姓、江戸時代から明治にかけての儒教的規範などが取り上げられています。

そのうえで、父系継承という考え方は現実社会では崩れているが、象徴である皇室にだけ理想としての父系継承を求める意識があるのではないか、という意見が出ています。

また、男系男子説の背景には、男系を中心とした家の継承を理想として、それを皇室に求める考え方があるのではないか、という意見も出ています。

一方で、男系を重視する立場については、なぜ男系であることが大事なのかが必ずしもはっきりしない、歴史的にも十分に説明されていないのではないか、という問いも出されました。

第8回では、男系継承の歴史的事実を、これからも守るべき原理と見るのか、それとも、歴史の中で行われてきた柔軟な選択こそを伝統と見るのかが、意識され始めていました。

議論の基準として、憲法・安定性・伝統・将来世代が示された

憲法、安定性、伝統、将来世代という議論の基準を置き、その基準から皇位継承制度を考えようとする基本的視点も示されました。

現行の日本国憲法を前提とすること、安定的な皇位継承を確保することが極めて困難な状況にあることを直視すること、伝統を重視しつつも皇室制度が時代環境に柔軟に適応してきた面に留意すること、将来の世代にも共有可能な価値観を探ることが挙げられました。

また、皇位継承順位については、できるだけ簡明で、偶然的な要素に左右されず、複雑になりすぎない方向で考えるべきだという視点も示されています。

女性・女系天皇を前提にした制度設計も始まっていた

女性天皇・女系天皇を認める場合の皇位継承順位について、長子優先にするのか、兄弟姉妹間では男子を優先するのかなど、具体的な論点も議論されました。

長子優先は一番簡明であるという意見がある一方、歴史的経緯、肉体的条件、国民感情などを考えると、兄弟姉妹間では男子を優先する方がよいのではないかという意見も出ています。

また、女性天皇・女系天皇を可能とした場合には、女性宮家を認めるかどうか、少なくとも皇族女子が婚姻後も皇籍にとどまる可能性を検討する必要があるのではないか、という意見も出ています。

つまり、第8回の時点で、会議の議論は、女性・女系天皇を認めるかどうかという抽象的な賛否にとどまっていませんでした。認める場合に、継承順位をどうするか、女性宮家をどう扱うかという制度設計に入り始めていました。

男系維持策と皇族の範囲も、困難を含めて検討された

男系男子を維持する方法とその困難、女性天皇・女系天皇を可能とした場合の皇族の範囲が議論されました。

男系男子を維持する方法として、皇族の復活、養子、現在の皇族女性との婚姻という三つの方法しかない、という意見が出ています。

しかし、現在の皇族女性との婚姻を制度として構築するのは無理であり、皇族の復活や養子も、国民の意識との関係で難しいのではないか、という見方も示されました。

また、旧皇族の復帰や養子、庶系を認めることは、皇室典範の議論の枠の外ではないか、仮に議論の枠を広げるなら、かなり大きな難しい問題になるという意見も出ています。

皇族の範囲についても、一定の見直しが必要であることが示されました。女性天皇・女系天皇を可能とした場合には、女性宮家を認めるかどうかが今後の検討のポイントになり、皇族女子が婚姻後も皇籍にとどまる可能性も論点になっています。

第8回では、皇位継承資格者をどう確保するかという問題と、皇族の範囲をどう見直すかという問題が結びついていました。

まとめるとどうなるか

第8回は、第6回・第7回の識者ヒアリングを踏まえ、男系をどう見るか、歴史や伝統をどう守るか、女性・女系天皇を認める場合に継承順位をどうするか、男系維持策として旧宮家復帰や養子をどう見るか、皇族の範囲をどう見直すかが問題になりました。

同時に、何を変え、何を維持するかという問いも出ていました。世の中の変化に応じて変えなければならないものと、変えてはいけないものがある。その切り分けが、男系か女系かという問題にもあるのではないか、という見方です。

社会変化も、制度設計の前提とされました。側室がなくなったこと、男系継承の一つの契機と解される姓が使われなくなったこと、少子化が進んでいること、都市と地方の違い、50年後・60年後の社会の見通しなどが、議論に入っています。

そのうえで、第8回の時点で、女性・女系天皇を可能とする場合の継承順位や女性宮家の検討など、制度設計に踏み込む議論もすでに出ていました。一方で、男系維持策についても、旧宮家復帰や養子の可能性と困難が議論されていました。

今後の進め方として、ヒアリングで出された意見、基本的な視点を踏まえ、夏休み前の論点整理を行うこととされました。

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