皇族数確保の議論は、皇位継承の問題と切り離されているといえるのか

形式上は切り分けられていますが、二つの皇族数確保策はいずれも将来の皇位継承資格者の範囲に接続しうるものです

立法府の議論では、皇位継承資格や皇位継承順位そのものではなく、皇族数確保策が前面に出されています。

そのため、議論の建て付けとしては、「皇族数確保」と「安定的な皇位継承」は切り分けられているように見えます。

しかし、制度の中身を見ると、二つの皇族数確保策はいずれも、将来の皇位継承資格者の範囲に接続しうるものです。

第一に、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案では、配偶者や子を皇族とするかどうかが問題になります。

配偶者や子を皇族とするなら、その子を将来の皇位継承資格者とするのか、しないのかという問題に接続します。

第二に、旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎える案では、養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、その子孫に皇位継承資格を認めるのかが問題になります。

したがって、皇族数確保策は、名目としては人数確保の議論であっても、制度効果としては皇位継承の問題に及びます。

立法府は、何を「皇族数確保策」として議論してきたのか

立法府では、2021年の政府有識者会議報告を受けて、主に二つの案を軸に議論が進められてきました。

一つは、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案です。

もう一つは、皇統に属する男系男子を養子として皇族に迎える案です。

この二つの案は、いずれも、皇族数の減少に対応するための方策として示されています。

2021年報告も、悠仁親王までの皇位継承の流れをゆるがせにしないことを前提とし、まずは皇族数確保策を中心に整理しました。

2024年以降の立法府対応も、この二つの案を軸に進められています。

その意味では、現在の議論は、皇位継承順位の見直しそのものではなく、皇族数確保策を中心にした議論です。

しかし、皇族数をどう確保するかは、誰を皇族とし、その子をどう扱うかという問題を伴います。

そのため、皇族数確保策は、制度化の段階に近づくほど、皇位継承資格の問題と接続していきます。

女性皇族の身分保持案は、なぜ皇位継承問題に接続するのか

女性皇族本人を皇族に残すだけでなく、配偶者や子をどう扱うかによって、将来の皇位継承資格者の範囲に関わります。

女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案は、皇族数の減少を抑える方策として、比較的広い支持を得ています。

この案だけを見ると、皇位継承資格や順位を直接変更するものではありません。

女性皇族本人が婚姻後も皇族として活動を続けることにより、皇室活動を担う皇族数を維持しようとする案だからです。

しかし、問題は、女性皇族の配偶者や子をどう扱うかです。

配偶者や子にも皇族身分を認めるなら、女性皇族を中心とする新しい皇族家族を制度上認めることになります。

その場合、その子が皇族でありながら皇位継承資格を持たないのか、それとも将来の皇位継承資格者となりうるのかが問題になります。

この点は、女系天皇への接続可能性と関わります。

男系男子継承を維持する立場からは、女性皇族の配偶者や子に皇族身分を付与することには慎重な意見が出ます。

一方、家族の一体性や制度の自然さを重視する立場からは、女性皇族本人だけを皇族に残し、配偶者や子は一般国民のままにすることに不自然さがあると見ます。

つまり、女性皇族の身分保持案は、女性皇族本人の活動継続という皇族数確保策であると同時に、配偶者・子の身分を通じて、将来の皇位継承資格者の範囲に接続しうる案です。

旧宮家系男系男子の養子案は、なぜ皇位継承問題に接続するのか

養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、その子孫をどう扱うかが残ります。

旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎える案も、表向きには皇族数確保策として説明されています。

立法府の資料では、養子となった本人には皇位継承資格を持たせない方向で整理されています。

ここだけを見ると、この案はたしかに、皇位継承の問題ではなく、皇族数確保の問題に限られているようにも見えます。

しかし、制度は養子本人だけで終わりません。

養子となった者が皇族として婚姻し、子を持つ場合、その配偶者や子をどう扱うのかが問題になります。

とくに、縁組後に生まれた男子に皇位継承資格を認めるのかどうかは、将来の皇位継承資格者の範囲を左右します。

縁組後に生まれた男子に皇位継承資格を認めるなら、この案は、皇族数確保策であると同時に、将来の男系男子の皇位継承資格者を新たに制度上生み出す仕組みになります。

一方、子孫にも皇位継承資格を認めないなら、皇族でありながら皇位継承資格を持たない男系男子を制度上作ることになります。

このどちらを選んでも、皇族数確保策は、皇位継承制度と無関係ではいられません。

つまり、旧宮家系男系男子の養子案は、養子本人に皇位継承資格を認めないという整理だけでは、皇位継承問題から完全に切り離されたとはいえません。

どこに「名目と制度効果のずれ」があるのか

皇族数確保策という名目で議論されながら、制度効果は将来の皇位継承資格者の範囲に及びます。

現在の議論では、皇族数確保策という名目が前面に出ています。

これは、皇位継承資格や順位の変更を直接議論することを避け、まず皇族数の減少に対応するという建て付けです。

しかし、皇族数確保策を制度化するには、誰を皇族とするのか、その配偶者や子をどう扱うのかを決める必要があります。

女性皇族の身分保持案では、配偶者・子を皇族とするかどうかが問題になります。

旧宮家系男系男子の養子案では、養子本人の子孫に皇位継承資格を認めるかどうかが問題になります。

このように、皇族数確保策は、制度の入口では「人数の問題」として説明されます。

しかし、制度の出口では、「将来の皇位継承資格者をどう形作るか」という問題に接続します。

ここに、名目と制度効果のずれがあります。

このずれは、単なる言葉の問題ではありません。

皇族数確保策をどう設計するかによって、将来の皇位継承制度の形が変わりうるからです。

本人に資格を与えないだけで、切り離されたといえるのか

本人に皇位継承資格を与えないという一点だけで、皇位継承の問題から切り離されたとは言えません。

旧宮家系男系男子の養子案では、養子本人には皇位継承資格を認めない方向が示されています。

これは、皇位継承順位そのものを直ちに動かさないための整理と見ることができます。

しかし、制度は本人一人で完結しません。

養子本人の配偶者、縁組後に生まれる子、その子の皇位継承資格をどう扱うかが残ります。

同じことは、女性皇族の身分保持案にもいえます。

女性皇族本人が皇位継承資格を持たないまま皇族として残るとしても、その配偶者や子を皇族とするなら、その子を将来どう扱うかが問題になります。

したがって、本人に皇位継承資格を与えない、または皇位継承順位を直ちに変えないというだけでは、皇族数確保策が皇位継承問題から切り離されたとはいえません。

制度は、本人だけでなく、その家族や子孫を通じて、将来の皇位継承秩序に接続するからです。

まとめるとどうなるか

皇族数確保の議論は、形式上は、皇位継承資格や順位の変更とは切り分けられています。

しかし、二つの皇族数確保策はいずれも、将来の皇位継承資格者の範囲に接続しうるものです。

女性皇族の身分保持案では、配偶者や子を皇族とするかどうかが、女系天皇への接続可能性に関わります。

旧宮家系男系男子の養子案では、養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、その子孫に皇位継承資格を認めるかが問題になります。

つまり、「皇族数確保」と「安定的皇位継承」は、建て分けとしては区別されていても、制度設計の中では切り離しきれません。

この議論は、表向きには皇族数の問題として進められています。

しかし、制度の効果は、将来の皇位継承秩序にも及ぶ可能性があります。

その意味で、皇族数確保策は、皇位継承問題と切り離された単なる人数確保策ではなく、将来の皇位継承制度の形に接続する制度案だといえます。

資料案内

衆議院 皇位の安定的継承及び皇族数確保に関する各党・各会派協議等

2021年政府有識者会議報告

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