諸外国の王位継承制度には、どのような型があるのか

諸外国の王位継承制度には、男子優先、長子優先、男系男子のみ、王による任命など、複数の型があります

デンマーク、スペイン、英国、ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、ヨルダン、タイの王位継承制度を比較します。

そこから見えるのは、王位継承制度は国によってかなり違うということです。王の直系を傍系に優先する点では共通する国が多い一方で、男子を優先するのか、男女を問わず長子を優先するのか、男系男子だけに限るのか、王による任命を重視するのかは、それぞれ異なります。

この記事は、2005年の皇室典範に関する有識者会議第4回の資料「諸外国における王位継承制度の例(概要)」をもとに整理します。

資料は、王位継承制度をどのように分類しているのか

資料は、諸外国の王位継承制度を、男子優先、長子優先、男系男子のみ、その他の型に分けて整理しています。

資料の冒頭では、王位継承制度の例が大きく四つに分類されています。

第一は、男子優先です。デンマーク、スペイン、英国がこの型として挙げられています。王の直系を傍系に優先し、直系の中では男子およびその子孫を女子およびその子孫に優先するものです。

第二は、長子優先です。ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデンがこの型として挙げられています。王の直系を傍系に優先し、直系の中では男女を問わず長子およびその子孫を次子以下の子およびその子孫に優先するものです。

第三は、男系男子のみです。ヨルダンがこの型として挙げられています。男子のみを対象とし、王の直系を傍系に優先します。

第四は、その他です。タイがこの型として挙げられています。王が王族男子の中から次の王位継承者を任命する仕組みを基本としつつ、王が指名しないまま王位が空位になった場合には、王女の名を提出することもできるとされています。

なお、この分類は2005年時点の資料に基づくものです。その後、デンマークは2009年、英国は2013年の法改正により、それぞれ男子優先から長子優先へ移行しました。現在の分類としては、男子優先はスペイン、長子優先はデンマーク、英国、ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、男系男子のみはヨルダン、その他はタイと整理できます。

男子優先とは、どのような制度か

男子優先は、男女とも王位継承資格を持ちうるものの、同じ系統では男子とその子孫を女子とその子孫より優先する制度です。

男子優先の制度では、まず王の直系が傍系に優先されます。そのうえで、王の直系の中では、男子およびその子孫が、女子およびその子孫より優先されます。

資料では、デンマーク、スペイン、英国が男子優先の例として挙げられています。(前述のように、デンマークと英国は変更されています)

この制度では、女性に継承資格がないわけではありません。しかし、同じ系統の中に男子がいれば、男子が先に位置づけられます。したがって、男子優先は、男系男子のみの制度とは異なります。

長子優先とは、どのような制度か

長子優先は、男女を区別せず、王の長子およびその子孫を優先する制度です。

長子優先の制度では、王の直系が傍系に優先され、その直系の中では、長子およびその子孫が、次子以下の子およびその子孫より優先されます。

資料では、ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデンが長子優先の例として挙げられています。(前述のように、デンマークと英国はこの分類に入ります)

この制度では、性別ではなく、生まれた順序と系統が重要になります。王の第1子が女性であっても、その人とその子孫が、後に生まれた男子より先に位置づけられます。

このため、長子優先は、男女平等の観点から導入された例が多く見られます。

男系男子のみとは、どのような制度か

男系男子のみの制度では、王位継承資格を男子に限り、男子の系統を通じて継承順位を定めます。

資料では、ヨルダンが男系男子のみの例として挙げられています。

ヨルダンでは、王の長男およびその男子孫、次男以下の男子およびその男子孫、王の兄弟およびその男子孫というように、男子の系統を通じて継承順位が定められます。

ただし、王が弟を次期王に任命できる仕組みも示されています。

このように、男系男子のみの制度といっても、単に機械的な順位だけでなく、王による任命の要素が組み合わさる場合があります。

タイの制度は、どのように位置づけられているのか

タイの制度は、王による次期王の任命を基本とし、王が指名しない場合には王女の名を提出することもできる仕組みとして整理されています。

資料では、タイは「その他」の型として扱われています。

タイでは、王室典範により、王が王族男子の中から次の王を任命することとされています。

一方で、王が王位継承者を指名しないまま王位が空位になった場合には、枢密院が王位継承者名を内閣に提出し、内閣が承認を求めるために国会に提出します。この場合、王女の名を提出することもできるとされています。

つまり、タイの制度は、男子の王族を基本としつつ、憲法上は王女の名を提出する余地もあるという、独自の仕組みとして整理されています。

欧州の王室では、どのような変化があったのか

欧州の王室では、20世紀後半以降、男子優先や男子のみの制度から、長子優先へ移行した例が見られます。

資料は、各国の制度だけでなく、制度変更の経緯も示しています。

たとえば、ベルギーでは、従来は男子のみでしたが、1991年に男女平等の観点から憲法改正が行われ、女子の王位継承資格が認められ、長子優先となりました。

オランダでは、従来は男子優先でしたが、女子差別撤廃条約を背景として、政治的権利における男女平等を王位継承にも適用する趣旨から、1983年の憲法改正により長子優先となりました。

ノルウェーでは、従来は男子のみでしたが、1990年に男女平等の観点から憲法が改正され、長子優先となりました。ただし、出生年による経過措置も設けられています。

スウェーデンでは、1979年に女子の王位継承を導入する法案が可決され、1980年に施行されました。資料は、王朝の存続や男女平等が議論の背景にあったことを示しています。

王位継承制度の変更には、どのような理由があったのか

王位継承制度の変更には、男女平等、王朝の存続、国民の支持、既存の王室構成などが関わっていました。

資料を見ると、諸外国の制度変更は、一つの理由だけで説明できません。

デンマークでは、前国王に女子しかいなかったことを背景に、1953年に女子にも継承資格が与えられるようになりました。世論は、当時の国王の実子である女子が王位を継承することを支持していたとされています。

ベルギー、オランダ、ノルウェー、スウェーデンでは、男女平等が制度変更の重要な理由として示されています。

スウェーデンでは、男女平等に加えて、王朝の存続という観点も示されていました。完全な男女平等を実現するために、女子の王位継承を導入するなら男子優先ではなく完全長子優先が提案されました。

このように、王位継承制度の変更は、伝統の変更というだけでなく、王室の構成、国民の支持、男女平等、王朝の存続などの要素が組み合わさって行われたものと見ることができます。

日本の皇位継承制度と比べると、何が見えるのか

諸外国の王位継承制度と比べると、日本の皇位継承制度は、男系男子に限る点でかなり限定された制度であることが見えます。

日本の現行皇室典範では、皇位は皇統に属する男系の男子が継承するとされています。

これに対して、諸外国の例を見ると、男子優先、長子優先、男系男子のみ、王による任命など、制度の型はさまざまです。特に欧州の王室では、女子にも王位継承資格を認める制度や、男女を問わない長子優先制度が見られます。

もちろん、各国の制度は、それぞれの歴史、宗教、憲法、王室のあり方に基づいており、日本にそのまま当てはめることはできません。

しかし、比較することで、皇位継承制度には複数の制度設計があり得ること、そして「直系を優先する」「男子を優先する」「長子を優先する」「男系に限る」など、どの原理を組み合わせるかによって制度が変わることが分かります。

この資料から、何が読み取れるのか

この資料からは、王位継承制度は一つの型に限られず、各国の歴史や憲法、王室の事情に応じて異なる制度として設計されていることが読み取れます。

諸外国の王位継承制度には、男子優先、長子優先、男系男子のみ、王による任命など、複数の型があります。

欧州の王室では、20世紀後半以降、男女平等や王朝の存続などを背景に、男子優先や男子のみの制度から長子優先へ移行した例が見られます。

一方で、ヨルダンやタイのように、男子の系統や王による任命を重視する制度もあります。

この資料からは、王位継承制度は、血統、直系・傍系、性別、年長順、宗教、婚姻、議会や王の関与など、複数の要素を組み合わせて設計されるものであることが読み取れます。

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