皇位継承ルールには、男系男子限定、長子優先、兄弟姉妹間で男子優先、男系男子優先、男子優先など、複数の典型例が考えられます
現在の皇位継承制度の考え方を基本にしつつ、女子が皇位継承資格を有することとした場合を含め、典型的な継承ルールを整理します。
ただし、資料自身が明記しているように、これは何らかの価値判断を前提にしたものではありません。現行制度をもとに、ある条件を変更した場合には、どのような順位になるかを論理的に示したものです。
この記事は、2005年の皇室典範に関する有識者会議第5回の資料「皇位継承ルールの典型例」をもとに整理します。
例1、男系男子限定の制度とは何か
男系男子限定の制度は、現行制度と同じく、皇位継承資格を男系男子に限り、直系、長系、近親の順で順位を定める制度です。
例1は、男系男子限定の制度です。
これは、現行制度の考え方に対応しています。皇位継承資格を男系男子に限定し、天皇の子とその子孫、つまり直系子孫を、天皇の兄弟や伯叔父およびその子孫などの傍系に優先します。
直系子孫の中では、長男とその子孫、次男とその子孫というように、長系が優先されます。直系子孫がいない場合には、天皇の兄弟とその子孫、さらに伯叔父とその子孫というように、天皇から見て近親の系の順に順位が置かれます。
この型では、女子と女系男子は皇位継承資格を持ちません。
例2、長子優先の制度とは何か
長子優先の制度は、男女を区別せず、直系、長系、近親の順で順位を定める制度です。
例2は、長子優先の制度です。
この型では、男女を区別しません。天皇の子とその子孫を傍系に優先し、直系子孫の中では、長子とその子孫、次子とその子孫という順に順位を置きます。
子孫の中に兄弟姉妹がある場合も、兄弟姉妹のうち年長者とその子孫が、年少者とその子孫に優先されます。
この型では、性別よりも、直系であること、長系であること、近親であることが重視されます。女子も女系男子も、皇位継承資格を持つものとして扱われます。
例3、兄弟姉妹間で男子を優先する制度とは何か
兄弟姉妹間で男子を優先する制度は、男女に皇位継承資格を認めつつ、同じ兄弟姉妹の中では男子とその子孫を女子とその子孫より優先する制度です。
例3は、例2を基本にしつつ、兄弟姉妹間では男子を優先する制度です。
この型では、天皇の子とその子孫を傍系に優先します。そのうえで、天皇の直系子孫の中では、長男とその子孫、次男とその子孫、長女とその子孫、次女とその子孫というように、男子を始祖とする系を女子を始祖とする系より優先します。
ただし、女子や女系男子がまったく排除されるわけではありません。女子にも、その子孫にも継承資格を認めたうえで、兄弟姉妹間では男子を優先する制度です。
この型は、男系男子限定と長子優先の中間に位置するものとして見ることができます。
例4、男系男子を優先し、その後に男系男子以外を置く制度とは何か
男系男子を優先する制度は、まず現行制度と同じ男系男子の順位を置き、その後に女系男子や女子を位置づける制度です。
例4は、男系男子を優先し、その後に男系男子以外の者を位置づける制度です。
この型では、まず男系男子を優先します。つまり、現行制度と同じく、男系男子について、直系、長系、近親の順に順位を付けます。
その後に、男系男子以外の者、つまり女系男子や女子を位置づけます。その場合にも、天皇の直系子孫を傍系に優先し、直系子孫の中では、男系男子を始祖とする系、長系を優先するという考え方が用いられます。
この型は、男系男子を最優先にしながらも、男系男子がいない場合などに備えて、女子や女系男子を後順位に置く制度として整理できます。
例5、男子を優先し、その後に女子を置く制度とは何か
男子を優先する制度は、男系か女系かを問わず男子を先に置き、その後に女子を位置づける制度です。
例5は、男子を優先し、その後に女子を位置づける制度です。
例4が男系男子を優先対象としたのに対し、例5では男子一般を優先対象とします。つまり、男系男子だけでなく、女系男子も男子として優先対象に含まれます。
まず、天皇の子とその子孫のうちの男子を置き、次に天皇の兄弟姉妹とその子孫のうちの男子、さらに伯叔父・伯叔母とその子孫のうちの男子というように、男子について直系、長系、近親の順に順位を付けます。
その後に、女子についても同様に、直系、長系、近親の順に順位を付けます。
この型では、性別としての男子優先が強く働きますが、男系か女系かという区別は例4ほど強くありません。
五つの典型例は、何を比べているのか
五つの典型例は、皇位継承資格を誰に認めるか、何を優先するかの組み合わせを比べています。
この資料で比べられているのは、単に「女性天皇を認めるかどうか」だけではありません。
第一に、皇位継承資格を男系男子に限るのか、女子や女系男子にも広げるのかが違います。
第二に、直系を傍系に優先するという考え方を、どこまで維持するのかが問題になります。
第三に、同じ直系の中で、長子を優先するのか、男子を優先するのか、男系男子を優先するのかが違います。
第四に、男系男子以外の者を認める場合、それを同じ順位体系の中に入れるのか、男系男子の後に置くのかが違います。
したがって、この資料は、皇位継承制度を考えるときに、どの原理を優先するのかを分解して見るための資料です。
ルールの型は、女性天皇論とどう関わるのか
皇位継承ルールには複数の型があり、女性天皇を認める場合にも、順位をどう作るかを考えることになります。
女性天皇を可能にするといっても、制度設計は一つではありません。
男女を問わず長子を優先するのか。兄弟姉妹間では男子を優先するのか。男系男子を優先し、その後に女子や女系男子を置くのか。男子を優先し、その後に女子を置くのか。
それぞれの型によって、皇位継承順位は大きく変わります。
このため、女性天皇の議論は、「認めるか、認めないか」だけでは終わりません。女性天皇を認める場合でも、直系、長系、男系、性別、近親という原理をどのように組み合わせるのかが問題になります。
この資料は、何を考える入口になるのか
この資料は、皇位継承制度を、価値判断の前に、制度設計の選択肢として整理する入口になります。
この資料は、どの型が望ましいかを判断するものではありません。
むしろ、皇位継承制度を考える前提として、条件を変えれば継承順位がどう変わるのか、制度としてどのような型があり得るのかを見せる資料です。
皇位継承制度は、ひとつの言葉で語られがちです。しかし、実際には、皇統、男系、直系、長系、近親、長子、男子、女子、女系男子など、複数の要素をどう組み合わせるかによって、制度の形は変わります。
この資料からは、皇位継承制度をめぐる議論では、結論だけでなく、どの原理を優先し、どの条件を変えるのかを明確にする必要がある、ということが読み取れます。
