二案はいずれも皇族数確保策として議論されていますが、女性皇族案は配偶者・子の身分を、旧宮家系男系男子養子案は養子本人・子孫の皇位継承資格を問題として残しています
2024附帯決議後の立法府対応では、皇族数確保策として、主に二つの案が議論されています。
第一は、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案です。
第二は、皇統に属する男系男子を養子として皇族に迎える案です。
どちらも、皇族数の減少に対応するための案です。
しかし、二つの案は、同じ問題を同じ方向から解こうとしているわけではありません。
女性皇族案は、現在の皇族を制度内に残す案です。
旧宮家系男系男子養子案は、一般国民として生活してきた男系男子を新たに皇族に迎える案です。
女性皇族案では、配偶者や子をどう扱うかが問題になります。
旧宮家系男系男子養子案では、養子本人と子孫の皇位継承資格をどう扱うかが問題になります。
二案はいずれも皇族数確保策ですが、背後では、男系維持の枠内で制度を整えるのか、皇位継承資格の拡大に接続し得る制度を認めるのかという問題に関わっています。
女性皇族案は、何を解決し、何を残すのか
女性皇族案は、現在の皇族を制度内に残すことで皇族数の減少を抑えますが、配偶者や子の身分をどう扱うかを問題として残します。
女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持すれば、婚姻による皇族数の減少を抑えることができます。
また、女性皇族が婚姻後も公的活動を続けることができるため、皇室活動の担い手を確保する効果も期待されます。
しかし、この案には大きな分岐点があります。
女性皇族本人だけを皇族に残すのか。
それとも、配偶者や子も皇族とするのか。
本人だけを皇族に残すなら、女系皇族の制度的位置づけには踏み込みにくくなります。
一方、配偶者や子も皇族とするなら、女性皇族の子を皇室制度の中に置くことになり、将来の皇位継承資格者の範囲と接続し得ます。
つまり、女性皇族案は、皇族数の減少を抑える一方で、配偶者や子の身分、女系皇族の位置づけを問題として残します。
旧宮家系男系男子養子案は、何を解決し、何を残すのか
旧宮家系男系男子養子案は、男系維持の枠内で皇族数を補う案ですが、対象者の有無や、養子本人・子孫の皇位継承資格を問題として残します。
旧宮家系男系男子養子案は、皇統に属する男系男子を養子として皇族に迎える案です。
この案は、女性皇族の配偶者や子を皇族とすることに慎重な立場から見れば、男系維持の枠内で皇族数を確保できる案です。
しかし、この案にも多くの論点があります。
対象者が実際にいるのか。
その人に皇族となる意思があるのか。
一般国民として生活してきた人を養子として皇族に迎えることが、皇室の先例や憲法14条との関係でどう説明できるのか。
さらに、養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、その子孫をどう扱うかが残ります。
子孫に皇位継承資格を認めるなら、将来の皇位継承資格者の範囲を広げることになります。
認めないなら、皇族でありながら皇位継承資格を持たない男系男子を制度上作ることになります。
つまり、旧宮家系男系男子養子案は、男系維持の枠内で皇族数を補う一方で、対象者、先例、憲法、本人・子孫の皇位継承資格を問題として残します。
二案は両立するのか
二案は皇族数確保策としては併存し得ますが、制度思想には違いがあります。
女性皇族案と旧宮家系男系男子養子案は、制度上、同時に検討することは可能です。二案を併用すれば、皇族数を確保する方策は増えます。
しかし、二案の制度思想は同じではありません。
女性皇族案は、配偶者や子を含める場合、女系皇族の位置づけに接続し得ます。旧宮家系男系男子養子案は、男系維持の枠内で皇族数を確保しようとします。
男系維持の枠内で制度を整えるのか、皇位継承資格の拡大につながり得る制度を認めるのかという、より大きな問題は、皇位継承制度をめぐる意見の対立点ともなっています。そのため、二案を併用するには、それぞれの案が皇位継承資格とどう関係するのかを整理する必要があります。
まとめるとどうなるか
2024附帯決議後の立法府対応で議論されている二案は、いずれも皇族数確保策です。
女性皇族案は、現在の女性皇族を婚姻後も皇族に残すことで、皇族数の減少を抑えようとします。
しかし、配偶者や子をどう扱うかによって、女系皇族の位置づけや将来の皇位継承資格者の範囲に接続します。
旧宮家系男系男子養子案は、皇統に属する男系男子を養子として皇族に迎えることで、男系維持の枠内で皇族数を補おうとします。
しかし、対象者の有無や意思、先例や憲法との関係、養子本人と子孫の皇位継承資格を問題として残します。
つまり、二案はいずれも、皇族数確保策として一定の意味を持ちます。
しかし、どちらも皇位継承制度と切り離しきれません。
二案を比較すると、2024附帯決議後の立法府対応が、皇族数確保策を議論しながらも、将来の皇位継承資格者の範囲をどう考えるかという問題をなお抱えていることが分かります。
