2024立法府対応の意見対立は、二つの皇族数確保策への賛否だけでなく、男系維持を優先するのか、皇位継承資格の拡大を含めて考えるのかという制度思想の違いから生じています
2021附帯決議有識者会議報告を受け、2024年以降に衆参両院の正副議長のもとで進められている立法府側の対応(2024立法府対応)では、皇族数確保策として、主に二つの案が議論されています。
第一は、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案です。
第二は、皇統に属する男系男子を養子として皇族に迎える案です。
一見すると、対立点は、この二案に賛成するか反対するかに見えます。
しかし、実際の対立は、もう少し深いところにあります。
女性皇族案では、女性皇族本人を皇族に残すことには比較的広い支持があります。
大きく分かれるのは、配偶者や子にも皇族の身分を与えるのかどうかです。
旧宮家系男系男子の養子案では、男系維持の枠内で皇族数を確保できると見る立場と、対象者の有無、先例、憲法、国民の理解などに問題があると見る立場が分かれます。
さらに、その背後には、悠仁親王までの皇位継承の流れを維持し、男系継承を前提に制度を整えるのか、それとも女性天皇・女系天皇を含む皇位継承制度の見直しを正面から議論するのかという違いがあります。
つまり、2024立法府対応の対立点は、単なる皇族数確保策の技術的な違いではありません。
皇族数確保策を通じて、将来の皇位継承資格者の範囲をどう考えるのかが問われています。
各党・各会派意見の全体整理
対応の経緯について 各党・各派の意見の要点など
対立点1 配偶者・子を皇族とするか
女性皇族案の第一の対立点は、女性皇族本人だけを皇族に残すのか、配偶者や子も皇族とするのかです。
女性皇族本人が婚姻後も皇族として残ることについては、各党・各会派の間で比較的広い支持があります。
しかし、女性皇族の配偶者や子をどう扱うかについては、意見が分かれます。
配偶者や子を皇族としない立場は、女性皇族の子が皇族として制度内に入ることにより、将来、女系天皇論につながることを警戒します。
この立場から見ると、配偶者や子を皇族にすることは、ただちに女系天皇を認める制度改正ではなくても、将来の皇位継承資格拡大への入口になり得ます。
一方で、配偶者や子も皇族とする、または少なくとも両案を検討すべきだとする立場は、女性皇族本人だけを皇族に残し、配偶者や子を一般国民のままとする制度には、家族としての身分関係や生活実態の不自然さがあると見ます。
同じ家族の中で、母は皇族、配偶者や子は一般国民という関係をどう説明するのか。
配偶者や子の権利、生活、住居、活動の自由をどう扱うのか。
ここに対立があります。
つまり、この対立は、女系皇族への警戒と、家族としての自然さ・制度としての整合性の対立です。
対立点2 旧宮家系男系男子の養子案をどう見るか
第二の対立点は、旧宮家系男系男子の養子案を、男系維持の現実的な制度案と見るのか、制度化に重大な問題がある案と見るのかです。
この案を支持する立場は、皇統に属する男系男子を養子として皇族に迎えることで、男系維持の枠内で皇族数を確保できると考えます。
自由民主党、日本維新の会、公明党、国民民主党、参政党、日本保守党などは、旧宮家系男系男子の養子案を、皇族数確保や男系継承維持のための重要な方策として位置づけています。
一方で、この案には慎重論や反対論もあります。
立憲民主党は、「皇統に属する」の定義、対象者の有無や意思、先例、憲法上の疑義などについて慎重な検討が必要だとしています。
日本共産党、社会民主党、沖縄の風などは、男系男子継承を前提とすることや、旧宮家系男系男子を皇族に迎えること自体に反対または強い疑義を示しています。
この対立は、男系継承を維持するために旧宮家系男系男子を制度内に迎えることを妥当と見るか、一般国民として生活してきた人を血統を理由に皇族に迎えることに問題があると見るかの違いです。
また、養子本人に皇位継承資格を認めないとしても、縁組後に生まれた男子に皇位継承資格を認めるのかという問題が残ります。
そのため、この案も、単なる皇族数確保策にとどまらず、将来の皇位継承資格者の範囲に関わります。
対立点3 皇族数確保と皇位継承制度を切り離せるか
第三の対立点は、皇族数確保策を皇位継承制度そのものの問題から切り離して議論できるかです。
2021附帯決議有識者会議報告は、悠仁親王までの皇位継承の流れをゆるがせにしないことを前提に、まず皇族数確保策を検討しました。
2024立法府対応も、基本的にはこの建付けを引き継いでいます。
男系維持を重視する立場は、まず皇族数確保策を進めるべきだと考えます。
この立場では、女性皇族本人の身分保持や旧宮家系男系男子の養子案を、悠仁親王までの皇位継承の流れをゆるがせずに実現できる方策として位置づけます。
一方で、皇位継承制度そのものの見直しを求める立場は、皇族数確保だけを先に扱うことに疑問を示します。
女性天皇・女系天皇を含む継承制度の見直しを避けたままでは、附帯決議が求めた「安定的な皇位継承を確保するための方策」に十分応えていない、という見方です。
この対立は、2024対応の根本にあります。
皇族数確保策を先にまとめることで制度改正へ進むのか。
それとも、皇族数確保策は皇位継承制度の見直しと一体で議論すべきなのか。
ここが、各党・各会派の意見を分ける大きな軸になっています。
なぜ対立しているのか
対立の理由は、何を守るべき制度の中心と見るかが違うからです。
男系維持を重視する立場は、皇位が男系で継承されてきたことを、皇室制度の中心に置きます。
この立場から見れば、女性皇族の配偶者や子を皇族にすることは、女系皇族を制度内に置くことになり、将来の女系天皇論につながるおそれがあります。
また、旧宮家系男系男子の養子案は、男系維持の枠内で皇族数を確保する案として重要になります。
これに対し、皇位継承資格の拡大を含めて考える立場は、安定的な皇位継承を確保するためには、女性天皇・女系天皇を含めた制度の見直しを避けて通れないと考えます。
この立場から見れば、皇族数確保策だけを先に扱うことは、本質的な問題を先送りすることになります。
また、旧宮家系男系男子の養子案は、対象者、先例、憲法、国民の理解の面で問題を抱える案として見えます。
つまり、対立しているのは、単に二つの案への賛否ではありません。
男系維持を制度の中心に置くのか。
安定的な皇位継承のために資格拡大を含めて考えるのか。
この制度思想の違いが、配偶者・子の身分、旧宮家系男系男子の養子案、皇族数確保と皇位継承制度の関係のすべてに反映されています。
まとめるとどうなるか
2024立法府対応の意見対立は、表面的には、女性皇族案と旧宮家系男系男子の養子案をどう扱うかをめぐる対立です。
しかし、その奥には、男系維持を優先するのか、皇位継承資格の拡大を含めて考えるのかという違いがあります。
女性皇族案では、配偶者や子を皇族とするかどうかが、女系皇族の位置づけと家族としての自然さをめぐる対立点になります。
旧宮家系男系男子の養子案では、男系維持の現実的な制度案と見る立場と、対象者、先例、憲法、国民の理解に問題があると見る立場が対立します。
そして、これらの対立は、皇族数確保策を皇位継承制度そのものから切り離して議論できるのかという問題につながります。
したがって、2024立法府対応の対立点は、皇族数確保策の細部にあるだけではありません。
皇位継承制度を、男系維持の枠内で整えるのか、それとも資格拡大を含めて見直すのかという、大きな制度思想の違いにあります。
