書名:報告
副書名:「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議
作成:「天皇の退位等に関する皇室典範特例法案に対する附帯決議」に関する有識者会議
公表年月:2021-12-22
所管:内閣官房
資料
2017年附帯決議を受け、皇位継承順位には踏み込まず、皇族数確保策を二案に整理した報告
2021年12月22日の『報告』は、2017年の退位特例法附帯決議を受けて設置された有識者会議がまとめた文書である。
附帯決議は、政府に対し、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について検討し、その結果を国会に報告することを求めた。そして、政府報告を受けた国会は、安定的な皇位継承を確保するための方策について「立法府の総意」が取りまとめられるよう検討するとした。
この『報告』は、その政府側の検討結果に当たる。
ただし、『報告』は、皇位継承順位そのものを変更する方向には進まなかった。
報告は、今上天皇から皇嗣秋篠宮、次世代の悠仁親王へ続く皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないとし、悠仁親王の次代以降の皇位継承については、将来の状況を踏まえて議論を深めるべきだと整理した。
そのうえで、当面の緊急課題として前面に出したのが、皇族数の確保である。
皇族女子が婚姻により皇族の身分を離れる現行制度の下では、悠仁親王が皇位を継承するころに、皇族数がきわめて少なくなる可能性がある。
そのため、『報告』は、皇位継承順位の見直しではなく、皇族数確保策を直接の検討対象として整理した。
具体的方策として、女性皇族の婚姻後の身分保持と、皇統に属する男系男子を皇族に迎える案を示した。
この点で、『報告』は、2017年附帯決議が求めた安定的な皇位継承の議論を受けつつ、直接の検討対象を皇族数確保策へ移した文書である。
皇族数確保策では、旧宮家系男系男子を皇族とする案が、政府報告の中で正面から位置づけられた。
『報告』は、何を受けて作られたのか
『報告』は、2017年退位特例法附帯決議を受け、政府が安定的な皇位継承の確保に関する課題を検討した結果として作成された文書である。
2017年、天皇の退位等に関する皇室典範特例法が成立した際、衆参両院で附帯決議が付された。
附帯決議は、政府に対し、安定的な皇位継承を確保するための諸課題、女性宮家の創設等について、皇族方の事情等を踏まえ、全体として整合性が取れるよう検討し、結果を速やかに国会に報告するよう求めた。
2021年有識者会議は、この附帯決議を受けて設置された。
『報告』は、2017年附帯決議から2024年以降の立法府対応へつながる制度検討の中間点に位置する。
『報告』は、安定的な皇位継承をどう扱ったのか
『報告』は、安定的な皇位継承の確保を課題として受け止めながら、皇位継承順位の見直しには踏み込まず、悠仁親王の次代以降の皇位継承を将来の検討課題とした。
『報告』は、皇位継承の歴史や伝統は重いものだとした。
また、皇位継承という国家の基本に関わる制度については、制度的安定性が重要であり、次世代の皇位継承者が存在する中で大きな仕組みを変更することには慎重でなければならないとした。
そのため、『報告』は、今上天皇から秋篠宮皇嗣、悠仁親王へ続く皇位継承の流れをゆるがせにしてはならないとした。
そして、悠仁親王の次代以降の皇位継承については、悠仁親王の年齢や結婚等をめぐる将来の状況を踏まえて議論を深めるべきだと整理した。
会議では、女性天皇・女系天皇の可否や皇位継承順位の見直しが議論されたが、『報告』は、それらを中心論点にはしなかった。
つまり、『報告』は、安定的な皇位継承をめぐる課題を出発点にしながら、その直接の制度対応を、皇位継承順位の変更ではなく、皇族数の確保へ移した。
ここに、焦点の移動がある。
『報告』は、皇族数確保策として二案をどう示したのか
『報告』は、皇族数の減少を当面の課題として前面に出し、その具体策として、女性皇族の婚姻後の身分保持と、皇統に属する男系男子を皇族に迎える案を示した。
『報告』は、悠仁親王以外の未婚皇族が女性であることを踏まえると、現行制度の下では、将来、悠仁親王が皇位を継承した時点で、悠仁親王以外の皇族がいなくなることも考えられるとした。
皇族には、摂政、国事行為の臨時代行、皇室会議の議員、皇室の活動を担う存在としての役割がある。
そのため、皇族数が大きく減少することは、皇室の活動や制度運営の面で問題になる。
『報告』は、この皇族数の減少を、具体的な制度対応を検討すべき課題として位置づけた。
第一の方策は、内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を保持する案である。
これは、女性皇族本人が婚姻後も皇族として活動を続けることにより、皇族数の減少を緩和し、皇室の活動を維持しようとする案である。
ただし、『報告』は、この方策を、女性皇族の配偶者や子を皇族とする制度としては中心化しなかった。
第二の方策は、皇統に属する男系男子を皇族に迎える案である。
この中には、皇族が養子をすることを可能にし、旧宮家系の男系男子を皇族に迎える考え方が含まれる。
さらに、養子による方法で皇族数を十分に確保できない場合などには、皇統に属する男系男子を法律により直接皇族とすることも考えられるとされた。
この二つの方策が、2024年以降の立法府対応で中心に置かれることになる。
ここで重要なのは、2012年論点整理では中心に置かれなかった旧宮家系男系男子の皇族化が、2021年報告では皇族数確保策の一つとして正面から位置づけられたことである。
『報告』は、安定的な皇位継承をめぐる課題を、皇族数確保策へと組み替えた。そして、その皇族数確保策の中に、旧宮家系男系男子を皇族に迎える案を置いた。
ここに、2012年論点整理から2024年立法府対応へ向かう議論の向きの変化がある。
2021年報告は、2012年論点整理とどこが違うのか
2012年論点整理が女性皇族の婚姻後の身分と皇室活動の維持に焦点を絞ったのに対し、2021年報告は、旧宮家系男系男子を皇族に迎える案を正面に置いた。
2012年の論点整理も、皇族数の減少を問題にし、女性皇族の婚姻後の身分保持を検討した。
ただし、2012年論点整理は、皇位継承問題とは切り離し、女性皇族の婚姻後の身分と皇室活動の維持に検討対象を絞っていた。
これに対し、2021年報告は、女性皇族の婚姻後の身分保持案を残しながら、もう一つの柱として、皇統に属する男系男子を皇族に迎える案を明確に示した。
この点で、2021年報告は、2012年論点整理と2024年立法府対応をつなぐだけでなく、旧宮家系男系男子養子案を政府報告の中心的な選択肢として位置づけた文書でもある。
2021年報告は、2024立法府対応とどうつながるのか
2021年報告は、2024年以降の立法府対応で検討される二つの案の直接の出発点になった。
2021年報告は、2022年に国会へ報告された。
その後、2024年から、衆参両院の正副議長の下で立法府側の対応が本格化した。
2024年以降の立法府対応で中心に置かれたのは、2021年報告が示した二つの方策である。
すなわち、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案と、旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎える案である。
そのため、2021年報告を読むことは、現在の立法府対応を読むための出発点になる。
まとめるとどうなるか
2021有識者会議『報告』は、2017年の退位特例法附帯決議を受けて、政府側が皇室制度の課題を検討した結果をまとめた文書である。
出発点には、安定的な皇位継承を確保するための諸課題があった。
しかし、報告は、皇位継承順位の見直しや女性天皇・女系天皇の制度化には踏み込まなかった。
そのかわりに、当面の課題として、皇族数の減少に焦点を当てた。
具体的方策として示されたのは、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案と、皇統に属する男系男子を皇族に迎える案である。
このうち、旧宮家系男系男子を皇族に迎える案が、政府報告の中で正面から位置づけられたことは、2012年論点整理との大きな違いである。
この二つの案は、2024年以降の立法府対応の直接の土台になった。
その意味で、2021年報告は、2017年附帯決議と2024立法府対応をつなぐ文書であり、現在の皇室制度論議を読むための基礎資料である。