第13回資料群は、女性・女系に拡大する場合と男系男子を維持する場合の双方について、皇族の範囲と関連制度をどう見直すかを整理していました
2005年10月5日の皇室典範に関する有識者会議第13回では、皇族の範囲に関する資料群が配布されました。
この記事は、資料1から資料7までを一群の資料として読み、皇族の範囲がどのように見直されようとしていたのかを整理します。
なぜ、皇族の範囲が問題になるのか
皇位継承資格や皇位継承順位を見直すと、誰を皇族とするかも連動して見直す必要があるからです。
皇位継承資格を持つ者は、原則として皇族でなければなりません。そのため、皇位継承資格を広げる場合には、皇族の範囲も問題になります。
女性天皇・女系天皇を可能にするなら、皇族女子が婚姻後も皇族にとどまるのか、その配偶者や子をどう扱うのかが問題になります。
男系男子を維持するなら、旧皇族やその子孫を皇族とするのか、養子禁止を見直すのかが問題になります。
つまり、皇族の範囲は、皇位継承資格、皇位継承順位、皇族数の確保をつなぐ制度上の要になります。
主な論点は、どのように整理されたのか
資料1は、女性・女系に拡大する場合と男系男子を維持する場合に分けて、皇族の範囲の論点を整理しています。
資料1「皇族の範囲に関する主な論点」では、まず、皇位継承資格を女性・女系に拡大する場合が示されています。
この場合には、皇族女子の婚姻による皇籍離脱、天皇・皇族の嫡出の子孫のうち嫡男系のみを皇族とする制度などの見直しが問題になります。
また、皇族の規模の調整も問題になります。永世皇族制を前提として皇籍離脱制度で調整するのか、それとも世数限定制を採るのかが論点になります。
一方、男系男子を維持する場合には、養子の禁止などの見直しが問題とされ、ここでも皇族の規模の調整が論点になります。
この資料の並びからは、女性・女系に拡大する場合も、男系男子を維持する場合も、どちらも皇族の範囲を見直さないと制度として組みにくいことが分かります。
現行制度では、誰が皇族になるのか
現行制度では、天皇・皇族男子の配偶者や子は皇族となる一方、皇族女子の配偶者や子は皇族とならず、皇族女子は婚姻により皇籍を離脱します。
資料2「皇族の範囲に関する現行の仕組み」は、現行制度の基本構造を整理しています。
天皇・皇族男子の配偶者は皇族となり、その子も皇族となります。ただし、皇族となる子は嫡出子・実子に限られ、養子は認められていません。
これに対し、皇族女子の配偶者は皇族となりません。皇族女子の子も皇族となりません。また、皇族女子は、天皇・皇族以外の者と婚姻すると皇籍を離脱します。
ここに、現行制度の非対称性があります。
男性皇族を中心にすると、配偶者も子も皇族制度の中に入ります。
女性皇族を中心にすると、婚姻によって本人は皇籍を離脱し、配偶者も子も皇族にはなりません。
女性天皇・女系天皇を可能にするなら、この仕組みをそのままにすることはできません。
皇族の規模は、どう調整されているのか
現行制度は永世皇族制を採りつつ、皇籍離脱制度の運用によって皇族の規模を調整する仕組みです。
資料2は、皇族の規模についても整理しています。
現行皇室典範では、天皇・皇族の嫡男系嫡出の子孫は、世数を問わず皇族とされます。これは永世皇族制です。
ただし、皇族の範囲を法制度上きっちり限定すると、皇位継承者が不足するおそれもあります。そのため、現行制度制定時には、皇籍離脱制度の運用によって、その時々の実情に応じて調整する考え方が採られました。
資料2には、現行皇室典範制定時の金森徳次郎国務大臣の説明も引用されています。そこでは、皇族の範囲を五代なら五代と形式的に限定すると、実際の経験上、困る場面も起こり得るため、皇籍離脱制度の運用によって調整するという趣旨が説明されています。
永世皇族制と世数限定制は、どう違うのか
永世皇族制は離脱制度による弾力的な調整に向き、世数限定制は範囲が明確になる一方で、皇族数が少なくなりすぎるおそれがあります。
資料3「永世皇族制と世数限定制のポイント」は、二つの制度を比較しています。
永世皇族制は、天皇および皇族から出生した者を、世数によらず皇族とする制度です。皇室の規模は、皇籍離脱制度によって調整します。
その特徴は、皇室の実情に応じた弾力的な調整が可能なことです。一方で、各皇族の将来の立場や皇室の将来の範囲について予測できるよう、運用上の工夫が必要になります。
世数限定制は、皇族の範囲を法令で定める一定の世数に限定する制度です。
その特徴は、皇族の範囲が法令上明確に定まり、各皇族の将来の立場や皇族の将来の範囲を予測しやすいことです。
しかし、出生の動向によっては、皇族数が少なくなりすぎ、皇位継承が不安定になるおそれがあります。また、皇族数が増えた場合でも、法定の世数内の皇族を皇籍離脱制度で減らすことは困難になります。
つまり、永世皇族制と世数限定制は、弾力性と明確性のどちらを重く見るかという問題でもあります。
皇室の構成から、何が見えていたのか
平成17年時点の皇室構成からは、男性皇族が少なく、若い女性皇族が多いという制度上の問題が見えていました。
資料5は、平成17年10月5日現在の皇室の構成を示しています。
そこでは、皇室全体は天皇および皇族方22方、全体では23方とされています。そのうち男性皇族は6方で、皇位継承順位も示されています。
一方、天皇および親王の子である女性皇族は9方で、その全員が皇太子殿下より年少であるとされています。また、女性皇族は婚姻により皇族の身分を離れることも注記されています。
この図から見えるのは、皇室には若い女性皇族が多くいる一方で、現行制度ではその方々は皇位継承資格を持たず、婚姻すれば皇籍を離脱するということです。
そのため、女性・女系に拡大する場合には、この女性皇族をどう位置づけるかが大きな論点になります。
皇室の構成の推移は、何を示しているのか
昭和22年以降の皇室構成の推移は、皇族数だけでなく、男性皇族と女性皇族の構成が変化してきたことを示しています。
資料6「皇室の構成の推移」は、昭和22年、昭和35年、昭和55年、平成元年、平成5年、平成16年の皇室構成を示しています。
昭和22年の11宮家皇籍離脱後には、天皇・男性皇族が7方、女性皇族が9方、合計16方とされています。
平成16年末には、天皇・男性皇族が7方、女性皇族が16方、合計23方とされています。
また、各時点で皇太子殿下より年少の方も示されています。平成16年末には、女性皇族のうち皇太子殿下より年少の方が9方とされています。
ここからは、皇室全体の人数だけでなく、継承資格と結びつく男性皇族の数、婚姻離脱の対象となる女性皇族の数が、制度設計上の問題として見られていたことが分かります。
関連制度には、何が含まれるのか
皇位継承資格を皇族女子にも拡大する場合には、婚姻、配偶者、皇籍離脱、摂政、皇室経済制度など、関連制度の見直しが必要になります。
資料7「関連制度」は、皇位継承資格を皇族女子にも拡大する場合、皇族男子と皇族女子で異なる取り扱いをしている仕組みについても見直しが必要になるとしています。
具体的には、婚姻、配偶者等、皇籍離脱、摂政就任順序、皇室経済制度が挙げられています。
たとえば、男性皇族の配偶者は皇族となり、皇后、親王妃、王妃などの身分や敬称が定められています。これに対し、皇族女子の配偶者については、現行制度では皇族とならないため、対応する制度がありません。
皇籍離脱についても、男性皇族は婚姻によって離脱しませんが、女性皇族は婚姻によって離脱します。
摂政就任順序も、皇太子・皇太孫、親王・王、皇后、皇太后、太皇太后、内親王・女王という順序になっています。
皇室経済制度でも、親王・王と内親王・女王では皇族費の扱いが異なります。
つまり、女性天皇・女系天皇を可能にすることは、皇位継承資格だけを変えれば済む問題ではありません。婚姻後の身分、配偶者、子、摂政、費用など、皇族制度全体の見直しを伴います。
男系男子維持の場合は、何が問題になるのか
男系男子を維持する場合でも、養子禁止などを見直さなければ、皇族の範囲を広げることが難しくなります。
資料1は、男系男子維持の場合の論点として、養子の禁止などの見直しを挙げています。
これは、旧皇族やその子孫を皇族とする方策と関係します。
現行制度では、天皇および皇族は養子をすることができません。また、皇族以外の者は、女子が皇后となる場合や皇族男子と婚姻する場合を除き、皇族となることがありません。
そのため、男系男子を維持するために旧皇族やその子孫を皇族にしようとするなら、養子禁止や皇族となる場合の限定を見直す必要が出ます。
つまり、男系男子維持は、現行制度をそのまま保つという意味ではありません。むしろ、男系男子を確保するために、皇族の範囲を広げる制度改正が必要になる可能性があります。
まとめるとどうなるか
第13回資料群は、皇族の範囲をどう見直すかを整理した一群の資料でした。
女性・女系に拡大する場合には、皇族女子の婚姻による皇籍離脱、皇族女子の配偶者と子の扱い、嫡男系のみを皇族とする制度、摂政、皇室経済制度などを見直す必要があります。
男系男子を維持する場合にも、養子禁止などの見直しが問題になります。
皇族の規模については、永世皇族制を前提に皇籍離脱制度で調整するのか、世数限定制を採るのかが比較されていました。
平成17年当時の皇室構成を見ると、男性皇族は限られ、若い女性皇族が多くいました。しかし現行制度では、女性皇族は婚姻によって皇籍を離脱し、その配偶者や子は皇族となりません。
このため、皇族の範囲の問題は、女性天皇・女系天皇を認めるかどうかだけでなく、皇族数の確保、婚姻後の身分、配偶者、子、摂政、皇室経済制度を含む、皇室制度全体の設計問題でした。
第13回資料群は、皇位継承資格と皇位継承順位の議論を受けて、その制度を実際に動かすためには、皇族の範囲と関連制度をどこまで組み替える必要があるのかを示していたといえます。
