第12回は、女性天皇・女系天皇を可能にした場合の皇位継承順位をどう設計するかを議論した回でした
2005年9月29日、皇室典範に関する有識者会議の第12回会合が開かれました。
この回では、皇位継承順位について意見交換が行われました。
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第11回では、皇位継承資格が議論されました。そこでは、男系男子に限る制度の安定性に疑問が示され、女性天皇・女系天皇を視野に入れて考える方向が強く出ていました。
第12回では、その次の論点として、仮に女性天皇・女系天皇を可能にした場合、皇位継承順位をどのように定めるかが議論されました。
継承順位では、何が問題になったのか
第12回では、皇位継承順位が変動するか、親子の順位が逆転するか、次の天皇が早く確定するかが問題になりました。
議事要旨では、女性・女系に皇位継承資格を拡大した場合、皇位継承によって皇位継承順位が変動するかどうか、親子の逆転をどう考えるかがポイントではないかという意見が示されています。
ここで問題になっているのは、単に誰を優先するかだけではありません。
制度によって皇位継承順位が一義的に決まるか。
次の天皇となる方が早く確定するか。
天皇の即位によって順位が変動しないか。
親より子が先順位になるような逆転が生じないか。
こうした点が、制度としての安定性の問題として議論されました。
妊娠・出産は、男子優先の理由になるのか
妊娠・出産を理由に男子を優先することについては、今日では一般的な理由になりにくいという見方が示されました。
ヒアリングなどでは、女性には妊娠・出産に伴う負担があるため、兄弟姉妹間では男子を優先すべきではないかという考え方も示されていました。
しかし、第12回では、妊娠や出産は病気ではなく、女性に負担が重いという考え方は今日ではあまり一般的ではない、今の時代に合わないように感じるという意見が出ています。
また、男子でも女子でも、病弱であれば公務が難しいことはあり得るが、妊娠・出産はそれとは別だとされています。
出産前日などには臨時代行が必要になるとしても、臨時代行は出産の場合に限られるものではなく、宮中祭祀も代拝が可能だという意見も出ています。
したがって、第12回では、妊娠・出産を、男子優先の決定的な根拠とすることには慎重な見方が示されていました。
長子優先と兄弟姉妹間男子優先は、どう比べられたのか
長子優先は予測可能性と安定性に優れ、兄弟姉妹間男子優先は伝統との関係から検討されるものとして比べられました。
長子優先か、兄弟姉妹間男子優先かという問題について、第12回では、兄弟姉妹間男子優先の理由を妊娠・出産に求めるのではなく、伝統に求めるべきではないかという意見が出ています。
一方で、最も予測可能性が高いのは長子優先ではないかという見方も示されました。
長子優先であれば、天皇の長子が将来の継承者として早く確定します。後から弟が生まれても順位が変わらないため、制度として分かりやすく、安定しています。
これに対し、兄弟姉妹間男子優先では、最初に女子が生まれた後に男子が生まれると、順位が逆転する可能性があります。そのため、天皇の長子として女子が生まれた場合、皇太子がなかなか確定せず、制度が安定しないという問題が指摘されました。
兄弟姉妹間男子優先には、どのような難しさがあるのか
兄弟姉妹間男子優先では、長子女子の地位をいつ確定させるのかという基準設定が難しいとされました。
兄弟姉妹間男子優先を採る場合でも、長子に女子が生まれたとき、その方の地位を一定の時点で確定させ、その後に男子が生まれても順位を変動させないという方法はあり得るとされました。
しかし、その時点をどう定めるのかが難しい問題になります。
その方が成人した時点で確定させるのか。
母の年齢を考慮するのか。
さらに高齢でも出産の可能性をどのように扱うのか。
こうした基準をどう置くかは非常に難しいとされました。
つまり、兄弟姉妹間男子優先は、伝統との関係では一つの選択肢になりますが、制度としては、次の天皇がいつ確定するのか、順位をいつ固定するのかという難問を伴います。
男子優先・男系男子優先には、どのような問題があるのか
男子優先や男系男子優先では、皇位が傍系へ移動しやすくなり、親子の順位逆転や即位による順位変動が生じ得るとされました。
女性・女系に皇位継承資格を拡大したうえで、男子優先または男系男子優先とする場合には、長子優先や兄弟姉妹間男子優先に比べ、皇位が傍系へ移動する可能性が高くなります。
また、傍系継承によって、代替わりの際に皇位継承順位が逆転する場合もあり得るとされました。
さらに、皇位継承順位第1位の方が女子である場合、その後の男子の誕生によって順位が繰り下がる可能性があります。そのため、次の天皇となる方がなかなか定まらないという問題も生じます。
男子優先の場合には、母とその子である男子との間で、子が母に優先されることになり、親子の間で皇位継承順位が逆になるという問題も指摘されました。
第12回では、こうした制度上の複雑さが、男子優先・男系男子優先の問題として整理されていました。
男系男子維持の場合にも、一義性の問題があった
男系男子を維持する場合にも、旧皇族復帰や養子に当事者の意思が介在し、継承順位の一義性を損なうおそれがあるとされました。
第12回では、女性・女系に拡大する場合だけでなく、男系男子を維持する場合の問題も議論されています。
男系男子を維持する場合には、旧皇族やその子孫の復帰、または養子などが必要になります。
しかし、その場合には、旧皇族やその子孫の意思を無視するわけにはいきません。皇族になるかならないかについて、当事者の意思が介在することになります。
養子の場合にも、実際の血縁により継承順位を設定するのか、養親の継承順位によるのかを決める必要があります。
養親の継承順位によるとすれば、どの方の養子となるかによって継承順位が変わります。そのため、当事者の意思により継承順位が左右されることになります。
単純な皇籍復帰の場合でも、当事者の意思が介在するため、一義性に欠けることになると指摘されました。
継承順位で重視されたのは何だったのか
第12回で重視されたのは、予測可能で、一義的に決まり、親子の逆転や即位による順位変動が少ない、安定した制度であることでした。
第12回の議論を通じて、皇位継承順位で重視された条件が見えてきます。
第一に、予測可能性です。次の天皇となる方が早く確定することが重視されました。
第二に、一義性です。当事者の意思や裁量によって、皇位継承順位が左右されないことが求められました。
第三に、親子の逆転を避けることです。世襲ということからは、親子の逆転は避けた方がよいという意見が出ています。
第四に、即位による順位変動を避けることです。天皇の即位によって継承順位が変動しないという意味での安定性があった方がよいとされました。
第五に、直系継承の自然さです。直系で、親から子へ継承されることが自然だという意見も示されています。
これらの観点から見ると、長子優先と兄弟姉妹間男子優先は、男子優先や男系男子優先に比べて、安定性の面では問題が比較的少ないとされました。
その中でも、長子優先には、皇位継承者がなかなか確定しないという問題がない一方、歴史的な制度からは最も遠く離れているという考え方もあり得るとされました。
まとめるとどうなるか
第12回は、皇位継承順位について議論した回でした。
女性天皇・女系天皇を可能にした場合、長子優先にするのか、兄弟姉妹間では男子を優先するのか、さらに男子優先や男系男子優先を採るのかが問題になりました。
その際、妊娠・出産は、男子優先の決定的な理由にはなりにくいとされました。兄弟姉妹間男子優先を採るなら、その理由は妊娠・出産ではなく、伝統に求めることになるという整理が示されています。
長子優先は、予測可能性が高く、次の天皇となる方が早く確定し、順位変動が少ない制度として評価されました。
兄弟姉妹間男子優先には、伝統との関係で一定の意味があり得ますが、長子女子の地位をいつ確定させるのかという難しさがありました。
男子優先や男系男子優先では、皇位が傍系へ移りやすくなり、親子の順位逆転や即位による順位変動が生じ得ることが問題になりました。
また、男系男子を維持する場合でも、旧皇族復帰や養子に当事者の意思が介在するため、継承順位の一義性に問題が生じるとされました。
第12回では、皇位継承順位について、予測可能性、一義性、親子の逆転を避けること、即位による順位変動を避けること、直系継承の自然さが重視されていました。
次回は、皇族の範囲および関連制度について議論することになりました。
