鈴木正幸教授は、2005有識者会議で何を述べたか

鈴木正幸教授は、近代日本における天皇・皇室は、その時代の社会秩序を象徴してきたと整理したうえで、皇位継承も、今日の天皇・皇室のあり方と、次世代に選ばれる価値観から考えるべきだと述べました

2005年6月8日の皇室典範に関する有識者会議第7回では、鈴木正幸教授へのヒアリングが行われました。鈴木教授は、日本近代史の立場から、皇位継承方式は、天皇・皇室が日本社会で果たしてきた役割と密接に関係していると述べました。そのうえで、天皇・皇室は、それぞれの時代の社会秩序を象徴してきたのであり、皇位継承も、今日の天皇・皇室のあり方と、次世代に選ばれる価値観から考える必要があると示唆しました。

皇室典範に関する有識者会議第7回 議事概要等

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鈴木正幸教授提出資料「近代日本における天皇・皇室」

鈴木教授は、どのような立場から述べたか

鈴木教授は、日本近代史の立場から、皇位継承を天皇・皇室の社会的役割と結びつけて考えていました。

<天皇の果たす役割と継承方式とは密接な関係>

鈴木教授は、皇位継承方式は、天皇・皇室が日本で果たしてきた役割と密接な関係があると述べました。そのため、単に継承順位や制度案を検討するのではなく、近代日本において天皇・皇室がどのような位置にあり、どのような機能を果たしてきたかを確認することから議論を始めています。

鈴木教授は、天皇・皇室の役割をどう整理したか

鈴木教授は、天皇・皇室には、統治機能だけでなく、社会秩序を維持し、象徴する機能があったと整理しました。

<統治、社会秩序、ナショナル・アイデンティティ>

鈴木教授の提出資料では、近代日本における天皇・皇室の役割として、統治機能のほか、社会秩序機能、社会維持機能、社会象徴機能、ナショナル・アイデンティティの象徴などが挙げられています。これは、天皇・皇室を、政治制度の中だけでなく、社会の秩序や価値観を象徴する存在として見ていることを示しています。

鈴木教授は、戦前の天皇統治の正当性をどう説明したか

鈴木教授は、帝国憲法体制では、天皇統治の正当性を説明するために、複数の国体論が用いられたと整理しました。

<天皇を統治権者に位置づけた国体論>

鈴木教授は、明治憲法が欽定憲法として制定された以上、なぜ天皇が統治権者なのかを説明する必要があったと述べました。そして、その説明として、天皇の統治を私的支配ではなく公的統治として説明する「シラス」国体論と、天皇を家社会の総本家の家長と見る家秩序的国体論を整理しました。

「シラス」国体論とは何だったのか

鈴木教授は、「シラス」国体論を、天皇の統治を私的支配ではなく公的統治として説明する論理として整理しました。

<天皇の統治は近代国家の公的統治>

鈴木教授によれば、井上毅は、皇祖皇宗の統治を、土地人民を私的に所有し支配する「ウシハク」とは異なる「シラス」という純粋公的な統治として説明しました。これは、近代国家の統治権を天皇が持つことを、前近代的な王土王民論ではなく、近代国家の公権として説明するための論理でした。

家秩序的国体論とは何だったのか

鈴木教授は、日清戦争後、天皇を「宗家」や「総本家の家長」と見る家秩序的国体論が広がったと整理しました。

<天皇は日本という同族体の家長>

鈴木教授は、日清戦争後には、日本を天皇を宗家とする巨大な同族団体になぞらえる国体論が広がったと述べました。この見方では、天皇は国民の総本家の家長であり、皇室は日本社会の「家」秩序を象徴する存在とされます。鈴木教授は、この家秩序的国体論を、近代日本の家社会に根差した国体論として位置づけました。

鈴木教授は、皇室と「家」社会の関係をどう見ていたか

鈴木教授は、皇室が近代日本の「家」社会における理想的な家の秩序を体現していたと見ていました。

<天皇は家督相続・家長の在り方を体現>

鈴木教授は、皇室を、近代日本の「家」社会における理想型として整理しました。たとえば、長男による皇位継承、養子を認めないこと、天皇による皇族の監督、皇祖皇宗の祭祀、終身在位などは、家社会における理想的な家督相続や家長のあり方を体現していたと説明しています。

鈴木教授は、第一次大戦後の皇室の変化をどう見ていたか

鈴木教授は、第一次大戦後、社会の変化に応じて皇室にも新しい対応が求められたと見ていました。

<第一次大戦後は国民の生活に接近>

鈴木教授は、第一次世界大戦後、欧州で王朝が崩壊し、君主制の危機が語られる中で、日本でも大正デモクラシーへの対応や皇室改革が必要になったと述べました。その中で、皇太子の欧州訪問や「平民的御態度」への注目を、国民の生活スタイルに皇室が接近しようとした動きとして整理しています。

鈴木教授は、伝統をどう考えたか

鈴木教授は、伝統とは、前の時代に生まれ、後の時代によって選択されて残ってきたものだと考えていました。

<伝統は時代の試練に耐え、後の世代に選ばれてきた>

鈴木教授は、伝統とは、前の時代に発生したものが、その後の時代によって選択されて残ってきたものだと述べました。つまり、伝統は固定された過去そのものではなく、時代の試練に耐え、後の世代によって選ばれてきたものだという理解です。

皇位継承について、鈴木教授は何を示唆したか

鈴木教授は、皇位継承は、今日の天皇・皇室のあり方と、次世代と共有できる価値観から考える必要があると示唆しました。

鈴木教授は、女性天皇や女系天皇の是非について、直接の制度案を強く打ち出したわけではありません。むしろ、天皇・皇室がその時代の社会秩序を象徴してきたという歴史を踏まえ、今日の天皇・皇室のあり方を考え、その中から皇位継承のあり方を考える必要があると述べました。そして、新しい伝統をつくるなら、それは次の時代や次の世代に選択されるものでなければならないとしました。

まとめるとどうなるか

鈴木正幸教授は、近代日本における天皇・皇室は、その時代の社会秩序を象徴してきたと整理したうえで、皇位継承も、今日の天皇・皇室のあり方と、次世代に選ばれる価値観から考えるべきだと述べました。

2005皇室典範に関する有識者会議報告書

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