皇室制度をめぐる2026年春の動き (2026-06-10)

2026年春の皇室制度論議は、全体会議で「立法府の総意」を決定しました

2026年春、皇室制度をめぐる国会の動きは大きく進みました。

2021年の有識者会議の報告を受けた立法府の対応は、6月10日の全体会議で、「立法府の総意」を決定しました。

総意は、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案と、旧宮家系男系男子を養子として皇族にする案を柱とし、政府に、皇室典範改正案を作成するよう求めました。

皇族数確保策の検討は、皇室典範を改正する方向に進み始めました。

この方向性を決定づけたのは、4月15日と5月15日の全体会議です。

4月15日の全体会議では、衆参全13党派の代表者が意見を表明し、中道改革連合は党内見解を取りまとめるための時間を求めました。

5月15日の全体会議では、中道改革連合も意見表明し、全13党派の見解が正式に出そろいました。

これにより、議論は、各党派が立場を出し合う段階から、衆参正副議長が「立法府の総意」案を取りまとめる段階へ移りました。

その後、5月下旬には、「立法府の総意」案の概要として、女性皇族の婚姻後身分保持案と、旧宮家系男系男子を養子として皇族に迎える案の二つを、皇族数確保策としておおむね妥当とする方向が報じられました。

ただし、意見が一致したわけではありません。

旧11宮家系男系男子の養子案、女性皇族の配偶者・子の身分、安定的な皇位継承論を正面から扱うかどうかについて、隔たりは残っています。

3月下旬から4月前半にかけて、全体会議再開へ向かいました

3月下旬、衆参両院は、皇族数確保策をめぐり、全党派が参加する全体会議を4月15日に開く方向で調整に入りました。

全体会議は、前年4月以来、約1年ぶりの再開となる見通しでした。

同時期、中道改革連合は、皇室制度をめぐる見解を検討するため、検討本部を設け、党内の意見集約に入りました。

中道改革連合は、立憲民主党と公明党の流れを含むため、旧宮家系男系男子の養子案や、女性皇族の配偶者・子の身分をめぐって、党内調整が課題になりました。

4月12日には、高市早苗首相が自民党大会で、党として議論を主導し、皇室典範改正を目指す考えを示しました。

これにより、政府・与党側は、皇族数確保策を今国会の重要課題として前に出す姿勢を強めました。

4月15日、全体会議が再開されました

4月15日、衆参両院は、皇族数確保策に関する全体会議を衆院議長公邸で開きました。

約1年ぶりの再開でした。

この会議では、衆参全13党派の代表者が意見を表明しました。

ただし、中道改革連合は、見解を取りまとめるための議論を始めた段階だと説明し、現状報告にとどまりました。

森英介衆院議長は、今国会中に皇室典範改正を目指す考えを示し、できるだけ速やかに「立法府の総意」を取りまとめたいと述べました。

また、中道改革連合に対し、1カ月後をめどに党見解を集約するよう求めました。

ここで、議論の潮目が変わりました。

それまでは、各党派がそれぞれの立場を持っている状態でした。

4月15日以後は、全体会議という場で、皇室典範改正を今国会中に目指すのか、主要2案をどう扱うのか、各党派が態度を示す局面に入りました。

4月15日の全体会議では、各党派の違いが見えました

4月15日の全体会議では、政府有識者会議の主要2案をめぐり、各党派の違いが見えました。

自民党は、主要2案に前向きで、今国会での皇室典範改正を実現する必要があるとしました。

日本維新の会は、皇統に属する男系男子の養子縁組を第一優先で進めるべきだとしました。

国民民主党は、主要2案を並行して実現すべきだとし、とくに女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案を最優先で実現すべきだとしました。

一方、立憲民主党は、女性皇族の婚姻後の身分保持については、配偶者・子も含めて家族一体で皇室の一員となることを望む一方、皇統に属する男系男子の養子縁組については、定義が不明で慎重な検討が必要だとしました。

共産党、れいわ新選組、社民党などは、主要2案に絞った議論や、女性天皇・女系天皇を正面から扱わない進め方に疑問を示しました。

この段階では、主要2案を基礎にする大きな流れは見えつつも、どのような形で「立法府の総意」といえる合意にするのかは、まだ見えていませんでした。

4月下旬、今国会中の改正を目指す動きが強まりました

4月23日、宮内庁長官は、全体会議の協議内容にコメントする立場にないとしつつ、制度改正が行われた場合には、皇室の方々のお気持ちを十分に踏まえながら対応していくと述べました。

同じころ、自民党内では、皇室典範改正を進めるべきだという発言や提言が相次ぎました。

4月27日には、自民党の保守系グループが、安定的な皇位継承のため、皇統に属する男系男子の養子縁組を認めるよう求める提言を政府に提出しました。

4月30日には、4月15日の全体会議の議事録が公開されました。

議事録では、森衆院議長が、憲法1条の「国民の総意」を引きながら、国民を代表する国会議員の総意、すなわち「立法府の総意」を重視する考えを示していたことが確認できます。

また、自民党側は、現行制度のままでは、悠仁親王が皇位を継いだ時に、支える皇族がいなくなる可能性があると指摘しました。

中道改革連合は、女性皇族が婚姻により皇室を離れることは十分想定され、議論を急ぐ必要があるとしつつ、安定的な皇位継承を確保するための諸課題は、引き続き議論を深めていくべきだと主張しました。

5月上旬、中道改革連合が見解を取りまとめました

5月に入ると、中道改革連合の見解集約が焦点になりました。

5月7日、中道改革連合は検討本部の会合を開き、政府有識者会議の主要2案を基本的に容認する取りまとめ案を検討しました。

女性皇族の配偶者と子の身分については、個別の事情を勘案し、立法府の総意に基づき適切に対応するとして、事実上先送りする方向が示されました。

5月11日には、中道改革連合の検討本部が、主要2案を基本的に容認する取りまとめ案を了承しました。

女性皇族の配偶者・子の身分については、当事者の意向など個別の事情を勘案し、適時適切に対応するとし、皇室典範改正の付則に検討条項を定めることを求めました。

5月12日には、同党の執行役員会もこの案を了承しました。

これにより、各党派の見解が出そろう条件が整いました。

5月15日、全13党派の見解が正式に出そろいました

5月15日、衆参両院は、皇族数確保策に関する全体会議を衆院議長公邸で開きました。

中道改革連合が意見表明し、全13党派の見解が正式に出そろいました。

森英介衆院議長は、会議後の記者会見で、衆参正副議長が「立法府の総意」案を取りまとめ、来週にも各党派に提示する方針を示しました。

取りまとめのめどが立った段階で、改めて全体会議を開き、各党派の意見を聞くことも示されました。

ここで、議論の潮目はさらに変わりました。

4月15日は、全体会議の再開と各党派の意見表明の段階でした。

5月15日は、全党派の見解が出そろい、正副議長が「総意案」を作る段階に入った日でした。

つまり、議論は、意見を出し合う段階から、実際にどの文言で、どの制度設計で、皇室典範改正に向かうのかを詰める段階へ移ったといえます。

世論調査は、支持の広がりと見え方の違いを示しています

5月中旬には、皇族数確保策をめぐる世論調査も報じられました。

共同通信の調査では、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保つ案に賛成が多数となりました。一方、旧11宮家の男系男子を養子として皇族に迎える案については、賛成と反対が近い数字となりました。女性天皇を認めることには、賛成が多数でした。

産経新聞・FNN合同世論調査では、皇族数確保の2案について「賛成」が多数と報じられました。また、同紙の3月、4月の世論調査でも、女性天皇、女性皇族の身分保持、旧宮家系男系男子の養子案などについて、設問ごとに数字が示されています。

ここで注意したいのは、世論調査の数字は、設問の立て方や見出しの置き方によって、見え方が変わるということです。

大きく見れば、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案には、比較的広い支持が見られます。

一方、旧11宮家系男系男子を養子として皇族に迎える案については、支持が示される調査もある一方で、賛否が割れる傾向も見えます。

したがって、世論調査からは、皇族数確保策への関心や支持の広がりと同時に、制度案ごとの受け止めの違いも読み取る必要があります。

報道は、制度化に伴う具体的な難しさにも目を向けています

この時期の報道では、単に主要2案に賛成か反対かだけでなく、制度化した場合に誰がどのような身分になり、どのような生活上・制度上の差異が生じるのかにも目が向けられています。

毎日新聞は、皇族数確保策をめぐる特集で、女性皇族が婚姻後も皇族として残る場合の生活費、配偶者・子の身分、当事者の生活設計などを取り上げました。

これは、皇族数確保策が、抽象的な制度論にとどまらないことを示しています。

女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持するのか。

配偶者や子を皇族とするのか。

旧11宮家系男系男子を養子として皇族に迎える場合、どのような要件と手続きにするのか。

これらは、制度の条文だけでなく、実際にその制度の対象となる人の生活、身分、家族関係にかかわる問題です。

議論が「立法府の総意」案の作成段階に進むほど、こうした具体的な問題が見えやすくなっています。

ただし、残された論点は重いままです

5月15日の全体会議によって、議論が前進したことは確かです。

世論調査でも、皇族数確保策への一定の支持は見えています。

しかし、残された論点は重いままです。

第一に、皇統に属する男系男子の養子縁組をどのように制度化するかです。

与党側は、1947年に皇籍離脱した旧11宮家を対象とする養子案を重視しています。

自民党、日本維新の会などは、この案を皇統を維持する方策として重視しています。

一方、中道改革連合は、国民の理解を得ること、養親・養子双方の自由意思に基づくことなど、慎重な制度設計を求めています。

立憲民主党も、極めて慎重な検討が必要だとしています。

第二に、女性皇族の配偶者・子の身分をどう扱うかです。

女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案には、比較的広い賛同があります。

しかし、配偶者や子にも皇族の身分を付与するのかどうかでは、意見が分かれています。

中道改革連合は、将来の個別事情に応じて検討する余地を残し、皇室典範改正の付則に検討条項を置くことを求めています。

これに対し、与党側は、配偶者・子に皇族身分を付与することには慎重、または反対の立場を取っています。

第三に、安定的な皇位継承そのものをどう扱うかです。

現在の議論は、皇族数確保策を中心に進んでいます。

女性天皇、女系天皇を含む皇位継承資格の拡大は、正面からの検討対象にはなっていません。

この点について、共産党、社民党、沖縄の風などは、女性天皇や女性宮家を含め、皇位継承の問題を正面から議論すべきだとしています。

5月中旬以降、取りまとめ作業に入りました

5月16日には、自民党の有村治子総務会長が、男系について「父方系」と説明すべきだとの考えを示しました。

同時に、女性皇族の配偶者と子の身分付与については、皇族としないのが男系だとして、否定的な考えを示しました。

この時期には、世論調査や特集記事によって、国会内の協議とは別の角度から、皇族数確保策の受け止めや制度化の難しさも示されました。

5月18日には、自民党内で、今国会での皇室典範改正に向けた対応が協議されました。

5月19日には、衆院の森英介議長と石井啓一副議長が、皇族数確保策をめぐる取りまとめ案について協議したとみられます。

この時点で、衆参正副議長による「立法府の総意」案の作成が進んでいると見られます。

6月8日の全体会議で「立法府の総意」案が示され、10日の全体会議で決定しました

衆参両院正副議長は6月8日、皇族数確保策に関する「立法府の総意」案を各党・各会派に示し、10日の全体会議で決定しました。

総意は、女性皇族が婚姻後も皇族の身分を保持する案と、旧宮家系男系男子を養子として皇族にする案を柱とし、政府に、皇室典範改正案を作成するよう求めました。

しかし、検討すべき点も、解決すべき論点も残されています。

まとめるとどうなるか

2026年春の皇室制度論議は、4月15日と5月15日の全体会議を境に、段階が変わりました。

4月15日には、約1年ぶりに全体会議が再開され、各党派の立場が見えました。

5月15日には、中道改革連合の見解も示され、全13党派の見解が正式に出そろいました。

これにより、議論は、各党派が意見を述べる段階から、衆参正副議長が「立法府の総意」案を取りまとめる段階へ移りました。

その流れを受けて、6月の2回の全体会議で「総意」が決定され、今国会中の皇室典範改正を目指す方向となりました。

2026年春の動きは、皇族数確保策が、いよいよ制度化の入口に立った一方で、皇室制度の根本問題がなお残っていることも示しています。