山折哲雄教授は、2005有識者会議で何を述べたか

山折哲雄教授は、皇位継承を考える前提として、象徴天皇制を支えてきた血統原理とカリスマ原理を確認すべきだとし、その性格が担保されるなら、男系・女系や女性天皇の是非は開かれた問題だと述べました

2005年6月8日の皇室典範に関する有識者会議第7回では、山折哲雄教授へのヒアリングが行われました。山折教授は、皇室典範や皇位継承順位の問題を考える前提として、象徴天皇制の性格を検討する必要があると述べました。そのうえで、象徴天皇制を支えてきたものとして、血統原理とカリスマ原理を挙げ、その性格が十分に担保されるなら、皇位継承が男系であろうと女系であろうと、女性天皇が誕生しても構わないと述べました。

皇室典範に関する有識者会議第7回 議事概要等

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山折教授は、どのような前提から述べたか

山折教授は、皇位継承の問題を考えるには、まず象徴天皇制の性格を検討する必要があると考えていました。

<皇位継承の前に象徴天皇制を考える>

山折教授は、皇室典範、皇位継承、継承順位の問題を考える背景として、象徴天皇制の性格をあらかじめ検討しておく必要があると述べました。つまり、山折教授にとって、皇位継承の制度論は、象徴天皇制とは何かという本質論と切り離せないものでした。

山折教授は、象徴天皇制の安定性をどう見ていたか

山折教授は、象徴天皇制は、歴史的に抜群の安定性を示してきた統治の仕組みだと見ていました。

<長期の平和を支えた仕組み>

山折教授は、日本の歴史には平安時代350年、江戸時代250年という長期の平和があり、その背景の重要な要因として象徴天皇制を見ていました。そして、象徴天皇制は戦後に初めて作られたものではなく、その原形は平安時代、10世紀の段階にでき上がったと考えていました。

山折教授は、象徴天皇制の第一の特徴をどう見たか

山折教授は、象徴天皇制の特徴を、宗教的権威と政治的権力の二元的な仕組みに見ていました。

<宗教的権威と政治的権力の分立>

山折教授は、10世紀の摂関政治の段階で、宗教的権威としての天皇と、政治的権力との相互補完・相互牽制の仕組みができたと見ていました。この二元的な仕組みが、社会と国家の安定に大きな役割を果たしたという理解です。

山折教授は、皇位継承の原理をどう整理したか

山折教授は、皇位継承には、血統原理とカリスマ原理という二つの原理が働いてきたと整理しました。

<血統原理とカリスマ原理>

山折教授は、皇位継承を支える原理として、血統原理とカリスマ原理を挙げました。践祚や即位の礼は、血統原理に基づく継承を示すものです。他方で、大嘗祭は、天皇霊の継承というカリスマ原理を含む儀礼として位置づけられます。山折教授は、この二つの原理が、皇位継承の安定性を支えてきたと見ていました。

山折教授は、大嘗祭をどう位置づけたか

山折教授は、大嘗祭を、天皇霊の継承というカリスマ原理を含む重要な皇位継承儀礼と見ていました。

<血統だけではない皇位継承>

山折教授は、大嘗祭を、血統だけでは説明できない皇位継承のもう一つの柱として見ていました。旧皇室典範には即位の礼と大嘗祭の規定がありましたが、戦後の皇室典範では大嘗祭規定が削除されました。山折教授は、この事情を、今後の皇位継承を考える際に重要な前提として挙げています。

山折教授は、日本とイギリスの継承をどう比較したか

山折教授は、日本の皇位継承では空位期間が生じないことが、象徴天皇制の安定性に関わっていると見ていました。

<空位を生じさせない継承>

山折教授は、エリザベス女王即位時のイギリスの例を紹介し、議会による王位継承のチェック機能や空位期間の問題に触れました。これに対し、日本では先帝が崩御するとただちに践祚が行われるため、空位期間が発生しにくい仕組みになっていると述べました。

山折教授は、「象徴」を支えるものをどう見ていたか

山折教授は、象徴天皇制の「象徴」を支える柱として、血統原理とカリスマ原理を重視していました。

<象徴性を支える二つの柱>

山折教授は、象徴天皇制の「象徴」を支える柱として、血統原理とカリスマ原理を重視しました。とくに、カリスマ原理の象徴性が欠けると、象徴天皇制が歴史的に果たしてきた役割を維持できなくなるのではないかと述べています。

山折教授は、皇室の家族像をどう見ていたか

山折教授は、皇室には近代家族としての側面と、象徴家族としての側面があり、その調和が課題になると見ていました。

<近代家族と象徴家族>

山折教授は、女性天皇論が出てくる背景には、皇室における近代家族や人権の問題が意識されていると見ていました。しかし同時に、皇室は近代家族であるだけではなく、象徴家族でもあります。山折教授は、この二つの側面をどう調和させるかが課題になると述べました。

山折教授は、象徴天皇制と民主主義の関係をどう見ていたか

山折教授は、象徴天皇制と民主主義をどう統合・調和させるかが、皇位継承問題の背景にあると見ていました。

<象徴天皇制と民主主義の調和>

山折教授は、戦後しばらくは象徴天皇制と民主主義を対立するものと見る考え方が強かったが、今日では両立するという方向に考えが変わりつつあると述べました。そのうえで、象徴天皇制と民主主義をどう調和させるかという問題は、皇室の近代家族性と象徴家族性をどう調和させるかという問題と表裏の関係にあると見ていました。

山折教授は、男系・女系・女性天皇をどう見ていたか

山折教授は、象徴天皇制の重要な性格が担保されるなら、男系であれ女系であれ、女性天皇であれ構わないと述べました。

<象徴天皇制の核心が担保されるなら開かれた問題>

山折教授は、象徴天皇制にとって重要な歴史的背景や性格が十分に担保されるなら、皇位継承が男系であろうと女系であろうと、女性天皇が誕生しても構わないと述べました。ただし、そのような考え方が一般的な承認を得るかどうかが問題だともしています。

山折教授は、何をさらに検討すべきだとしたか

山折教授は、象徴天皇制を、大統領制・王制・共和制など他の統治形態と比較して研究する必要があると述べました。

<象徴天皇制を比較する視点>

山折教授は、皇位継承を考えるには、象徴天皇制を、アメリカやフランスの大統領制、イギリス王制、共和制などと客観的に比較する研究が必要だと述べました。これは、象徴天皇制を当然の前提として扱うのではなく、他の統治形態との比較の中で、その意味を考えるべきだという問題提起です。

質疑で、山折教授は血統原理をどう補足したか

山折教授は、血統原理には、生物学的な側面と、フィクションとしての血統観念の両面があると補足しました。

<血統は生物学だけではない>

園部委員から、男系でも女性天皇でも構わないとする根拠を問われた際、山折教授は、血統原理には生物学的な側面と、フィクションとしての血統観念の側面があると答えました。血統は単純な生物学だけではなく、社会的・宗教的に承認される観念でもある、という含みを持つ説明です。

まとめるとどうなるか

山折哲雄教授は、皇位継承を考える前提として、象徴天皇制を支えてきた血統原理とカリスマ原理を確認すべきだとし、その性格が担保されるなら、男系・女系や女性天皇の是非は開かれた問題だと述べました。

さらに山折教授は、皇室には近代家族と象徴家族という二つの側面があり、象徴天皇制と民主主義をどう調和させるかという問題も、皇位継承の背景にあると考えていました。

<関連外部サイト>

2005皇室典範に関する有識者会議報告書

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