2005有識者会議の第5回では、皇位継承制度を考えるための評価軸が整理されました
2005年5月11日、皇室典範に関する有識者会議の第5回会議が開かれました。
第5回では、資料1「皇位継承制度等の変遷(概要)等」、資料2「皇位継承ルールの典型例」、資料3「日本国憲法第1条・第2条に関連する政府の説明」が事務局から説明されました。
この回の中心は、皇位継承制度を今後どう評価し、どの観点から検討するかを整理することでした。制度の変遷、継承ルールの型、憲法上の政府説明を確認したうえで、象徴、世襲、国民の支持、歴史・伝統、安定性、順位の明確性、ルールの分かりやすさなどが、今後の検討の評価軸として整理されました。
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憲法上の要請として、何が整理されたのか
第5回の総括では、憲法上の要請として、象徴にふさわしいこと、世襲に反しないこと、国民の支持が得られることが示されました。
第5回の総括では、皇位継承制度を検討する際の憲法上の要請として、三つの点が挙げられました。
第一に、象徴という地位にふさわしい継承制度であることです。
第二に、世襲という要請に反しないものであることです。
第三に、天皇の地位が国民の総意に基づくという意味で、国民の支持が得られるものであることです。
この三点は、第5回の核です。皇位継承制度は、単に血統上可能か、制度上可能かというだけではなく、憲法上の天皇の地位に照らして考えられる必要があります。
制度論として、何を考える必要があるのか
制度論としては、歴史や伝統との関係と、皇位継承の安定性との関係を考える必要があると整理されました。
第5回の総括では、制度論として考えた場合の視点も示されました。
第一に、歴史や伝統との関係をどのように考えるかです。
第二に、皇位継承の安定性との関係をどのように考えるかです。
その際には、皇位継承資格者の安定的な確保が可能か、歴史・伝統の内容をどう捉えるか、一義的に明確に順位が決まるか、継承順位設定のルールが分かりやすいか、どの時点で継承順位が確定するかなど、さまざまな点を総合的に考慮する必要があるとされました。
ここで、第5回の議論は、単なる資料確認から、制度設計の評価軸の整理へ進んでいます。
皇位継承ルールの典型例について、何が確認されたのか
五つの典型例は、現行制度を基本に、一部の条件を変えた場合の継承順位を示すものとして説明されました。
第5回では、資料2「皇位継承ルールの典型例」について、この五つの例を挙げた理由が質問されました。
これに対して、事務局からは、理論的には極めて多様なルールが考えられるが、今回の五例は、例1が現行皇室典範の考え方、例2から例5が、現行皇室典範の考え方を基本として、一部だけ条件を変えてみたものという考え方で整理したものだと説明されました。
つまり、第5回で扱われた典型例は、どれが望ましいかを先に決めるためのものではありません。制度設計の条件を変えたときに、皇位継承順位がどう変わるかを見えるようにするためのものです。
安定性について、どのような視点が示されたのか
制度の安定性については、皇位継承資格者の範囲、順位変動、尊属卑属の逆転、順位確定の時期などが視点として示されました。
意見交換では、今後の検討を進めるに当たって、世代や平均寿命など、より現実に即した形で進めてはどうかという意見が出されました。
また、制度の安定性を考える視点として、皇位継承資格者の範囲がどの程度あるか、皇位継承資格者を安定的に確保できるか、お代替わりに伴う順序の変動があるか、尊属卑属の逆転があるか、順位が早い時期に確定するか、といった点が挙げられました。
ここでいう安定性は、単に継承資格者の人数が多いということだけではありません。順位が分かりやすいか、早い時期に確定するか、制度として混乱を生みにくいかという点も含まれています。
伝統について、何が議論されたのか
第5回では、男系継承の伝統を重視する意見とともに、伝統という言葉の使い方には注意が必要だという意見も示されました。
意見交換では、過去125代にわたり男系継承が続いてきたことは大きな伝統であり、それを維持するために、さまざまな工夫や努力が重ねられてきたのではないかという意見が出されました。
一方で、皇位継承資格は、明治の皇室典範で男子に、現行皇室典範で嫡出子にと、それぞれ狭められており、男系男子を継続していくうえではかなり窮屈な条件になっていることをよく認識する必要があるという意見も示されました。
また、伝統という言葉について、非常に狭すぎるように使われることはないか、ある伝統を守ろうとすると他の伝統との間で問題が起こり、伝統同士がぶつかることはないか、という注意も示されました。
さらに、古代以来の伝統だけでなく、過去60年の伝統もまた重い伝統であるという意見もありました。
この回では、伝統は固定した一語としてではなく、時代ごとの創意工夫によって大事な本質を維持しようとしてきた結果として考える必要がある、という見方が示されています。
象徴天皇制と国民の支持は、どう位置づけられたのか
第5回では、象徴天皇制を維持することを前提に、伝統を守りながら国民に受け入れられる方法を選ぶことが課題だとされました。
意見交換では、象徴天皇の制度を維持していくことが前提であり、伝統を守りながら国民に受け入れられる方法を選択していくことが、有識者会議に課せられた課題であるという意見が示されました。
また、現行憲法の制定により主権は変動したが、憲法は、一つの血がつながっている天皇という存在を象徴として取り入れ、大事にしていこうとしているのではないか、という見方も示されました。
さらに、象徴としての天皇に対する国民の気持ちを、どういう形で守り続けていくかという視点も挙げられました。
この点は、憲法上の要請と重なります。第5回では、象徴天皇制を維持するために、制度が国民に受け入れられることが重要だと位置づけられていました。
旧宮家系の皇籍復帰について、何が論点になったのか
旧宮家系の皇籍復帰については、現在の皇室の系統から遠く離れていることや、皇籍離脱後の時間経過をどう考えるかが論点になりました。
第5回では、昭和22年に皇籍離脱した11宮家51方やその子孫が皇籍復帰した場合についても、事務局から説明がありました。
その場合、いわば男系男子限定の制度の図の中で、さらに遠い傍系として位置づけられることになるとされました。また、現在の皇族の養子として皇籍復帰した場合には、どの方の養子となるかによって皇位継承順位が決まることになる可能性があるとも説明されました。
これに対して、戦後皇籍離脱した11宮家はすべて伏見宮の系統に属し、この系統は現在の皇室の系統とは約570年前に分かれていること、また皇籍離脱から58年が経過していることをどう考えるか検討が必要だという意見が出されました。
この論点は、皇位継承資格者を増やすというだけでは済みません。血統上の距離、皇籍離脱後の時間、国民の受け止め、養子制度の可否などを同時に考える必要があります。
養子や婚姻について、何が注意されたのか
養子や婚姻については、法律で義務づけることはできないという点に留意する必要があるとされました。
第5回では、宮家の継承について、他の系の皇族から養子を迎えてなされている例があるが、そのような例を見ると、血のつながりを重んじるというより、一つの家としての家督の相続という感じが強いのではないかという意見が出されました。
また、養子や婚姻は、法律的には義務づけることはできないことに留意する必要があるとされました。
これは、制度設計上かなり重要です。皇位継承資格者を確保するために、養子や婚姻を制度上の選択肢として考えるとしても、それを個人に強制することはできません。制度として可能かどうかと、実際に担い手が現れるかどうかは、分けて考える必要があります。
外部ヒアリングは、どう進めることになったのか
第5回では、第6回・第7回に招く8人の専門家と、ヒアリングの進め方が確認されました。
第5回の冒頭では、外部の方を招いて意見を聞く件について確認されました。
第6回には、大原康男、高橋紘、八木秀次、横田耕一の4人を招き、第7回には、鈴木正幸、高森明勅、所功、山折哲雄の4人を招くことが了解されました。
また、記者の傍聴を認めることになりました。ただし、識者の方々と議論を行うためのものではないことから、質問は内容の確認程度のものとされました。
この確認により、第6回・第7回の専門家ヒアリングへ進む準備が整いました。
第5回会議は、後の議論にとってどのような意味を持つのか
第5回会議は、皇位継承制度を検討するための評価軸を整理し、専門家ヒアリングへ進むための橋渡しとなった回でした。
第5回では、皇位継承制度等の変遷、皇位継承ルールの典型例、憲法第1条・第2条に関する政府説明が確認されました。
そのうえで、皇位継承制度を考えるときの憲法上の要請として、象徴にふさわしいこと、世襲に反しないこと、国民の支持が得られることが整理されました。
また、制度論として、歴史や伝統との関係、皇位継承の安定性、順位の明確性、ルールの分かりやすさ、順位確定の時期などを考える必要があるとされました。
その意味で、第5回会議は、資料確認の段階から、制度設計の評価軸を明確にする段階へ移った回だったといえます。そして、この整理を踏まえて、第6回・第7回の専門家ヒアリングへ進むことになります。
