第16回は、皇位継承順位を長子優先、皇族の範囲を永世皇族制とする方向で意見が一致した回でした
2005年11月21日、皇室典範に関する有識者会議の第16回会合が開かれました。
この回では、皇位継承順位と皇族の範囲について意見交換が行われました。
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第14回では、皇位継承資格を皇族女子や女系の皇族に拡大する方向を基本にすることで意見が一致していました。
第15回では、報告書案を議論しながら、皇位継承順位と皇族の範囲について意見の集約が行われました。
そして第16回では、残されていた二つの論点、すなわち皇位継承順位をどうするか、皇族の範囲をどうするかについて、報告書の基本方向が固まりました。
皇位継承順位では、何が議論されたのか
皇位継承順位では、長子優先と兄弟姉妹間男子優先が比較され、最終的に長子優先が望ましいという方向が強く示されました。
第16回の意見交換では、兄弟姉妹間で男子を優先することも検討されています。
現代では結婚年齢が遅くなり、出産期間が短くなっているため、兄弟姉妹間男子優先でも大きな問題はないのではないか、という考え方もあり得るとされました。
しかし、現実には、十数年後に男子が誕生することもあり得ます。
その場合、長子女子の地位や将来の皇位継承者の見通しが長く定まらないことになります。
そのため、議事要旨では、やはり長子優先が最も簡明であり、適切なのではないかという意見が示されています。
なぜ、長子優先が重視されたのか
長子優先は、将来の皇位継承者が早く定まり、国民が幼少のころから見守ることのできる、わかりやすく安定した制度として重視されました。
第16回では、長子優先を支持する理由がいくつも示されています。
第一に、制度として、将来の皇位継承者が早期に定まることです。
長子優先であれば、後から弟が生まれても順位は変わりません。したがって、次の天皇となる方が早く見通せます。
第二に、国民がご幼少のころから、将来の天皇として期待を込めて成長を見守ることができることです。
象徴天皇制のもとでは、国民が将来の天皇となる方を長く見守り、その存在を受け止めていくことが重要になります。その意味で、長子優先はわかりやすい制度です。
第三に、中長期的に安定した制度であることです。
第16回では、今後皇室に男子が誕生した場合に国民世論がどうなるかという難しい面はあるとしても、仮定を置かず、中長期的に安定した制度を考えるべきだとされています。
この観点から、長子優先が望ましいとされました。
国民意識は、どのように考えられたのか
第16回では、男性天皇になじみがある国民感情を認めつつ、将来世代の意識に軸足を置けば、長子優先は受け入れられると考えられました。
第16回では、男性の天皇の方が国民になじんでいる面はあるとされています。
しかし、国民の意識を考えるとき、どの世代の意識に沿うことに重きを置くのかが問題になるという意見が出ました。
性別に関する意識は世代による差が大きく、しかも一貫して変化しています。
そのため、将来に軸足を置いて考えると、長子優先は十分に受け入れられるのではないかとされています。
ここでは、現在の一時点の国民感情だけではなく、将来世代にとって自然な制度かどうかが重視されていました。
性別よりも、何が重要だとされたのか
第16回では、天皇が象徴である以上、性別よりも、象徴天皇制のもとで皇室のあり方を体現する存在として成長されることが重要だとされました。
第16回でも、天皇は国家・国民統合の象徴であり、象徴に性別はないという見方が示されています。
また、この問題を今日考えるうえで重要なのは、性別よりもむしろ、象徴天皇の制度のもとで皇室の在り方を体現する存在として成長されたということではないかという意見も出ています。
これは、第14回までの議論とつながります。
女性天皇・女系天皇を可能にする方向では、性別そのものよりも、象徴として国民に受け止められる存在であること、皇室の中でその役割を担うよう成長されることが重視されていました。
皇族の範囲では、何が議論されたのか
皇族の範囲では、女性皇族が婚姻後も皇族に残り、配偶者や子孫も皇族とする必要があるとされました。
第16回では、皇位継承資格を女性・女系に拡大する以上、女性皇族も男性皇族と同様、婚姻後も皇族に残るようにする必要があるとされました。
また、配偶者やその子孫を皇族とする必要があるともされています。
現行制度では、女性皇族は天皇・皇族以外の者と婚姻すると皇籍を離脱し、その配偶者や子は皇族になりません。
しかし、女性天皇・女系天皇を可能にするなら、この仕組みを維持することはできません。
そのため、第16回では、女性皇族を男性皇族と同様に扱う制度改正が、皇族の範囲の前提として確認されていました。
世数限定制は、どう評価されたのか
世数限定制については、世数の遠い方を一律に皇族でなくすると、出生状況によって皇位継承者が非常に少なくなるおそれがあるとされました。
皇族の範囲をどう設定するかについては、永世皇族制と世数限定制が比較されていました。
世数限定制は、皇族の範囲を一定の世数で区切る制度です。
制度としては明確ですが、世数の遠い方は一律に皇族ではなくなります。
第16回では、その場合、ご誕生の状況によっては、皇位継承者が非常に少なくなるおそれがあることに留意すべきだとされました。
つまり、世数限定制は、将来の皇位継承資格者を確実に確保する制度としてはリスクがあると評価されています。
永世皇族制は、どう位置づけられたのか
皇族の範囲については、永世皇族制を基本とし、皇籍離脱制度の運用によって皇族の規模を調整するしかないという方向が示されました。
第16回では、皇籍離脱制度の運用で皇族の規模を調節することには難しい面があることも認められています。
それでも、皇族の範囲については、永世皇族制で、皇籍離脱制度の運用により規模を調節するしかないという意見が示されました。
最終的にも、皇族の範囲については、女性皇族が婚姻後も皇族に残るようにするとともに、将来の皇位継承資格者の存在を確実なものにするという視点から、世数で一律に限定せず、いわゆる永世皇族制としたうえで、皇籍離脱制度の運用により皇族の規模を調整することを基本に、報告書を取りまとめることで意見が一致しました。
これは、第13回で議論された永世皇族制と世数限定制の比較の帰結です。
どの点で意見が一致したのか
第16回では、皇位継承順位は長子優先、皇族の範囲は永世皇族制を基本にすることで意見が一致しました。
第16回の結論は、議事要旨に明確に記されています。
皇位継承順位については、国民が、ご幼少のころから、将来の天皇として期待を込めて御成長を見守ることのできるような、わかりやすく安定した制度であることが望ましいなどの理由から、長子優先とすることで意見が一致しました。
皇族の範囲については、女性皇族が婚姻後も皇族に残るようにし、将来の皇位継承資格者の存在を確実なものとするという視点から、世数で一律に限定せず、永世皇族制としたうえで、皇籍離脱制度の運用により皇族の規模を調整することを基本にすることで意見が一致しました。
つまり、第16回で、2005有識者会議の制度設計の骨格は、ほぼ固まったといえます。
まとめるとどうなるか
第16回は、皇位継承順位と皇族の範囲について、報告書の基本方向を固めた回でした。
皇位継承順位については、兄弟姉妹間男子優先も検討されましたが、将来の皇位継承者が早期に定まること、国民が幼少時から将来の天皇として見守ることができること、制度として簡明で安定していることから、長子優先とする方向で意見が一致しました。
また、性別に関する意識は世代によって差があり、将来世代に軸足を置けば長子優先は受け入れられるという見方も示されました。
皇族の範囲については、女性皇族が婚姻後も皇族に残り、配偶者や子孫も皇族とする必要があるとされました。
そのうえで、世数限定制は、出生状況によって皇位継承者が少なくなりすぎるおそれがあるため、永世皇族制を基本とし、皇籍離脱制度の運用で皇族の規模を調整する方向が採られました。
第16回では、皇位継承資格を女性・女系に拡大するという第14回の基本方向に加えて、皇位継承順位は長子優先、皇族の範囲は永世皇族制という骨格が固まりました。
今後、報告書の表現等について最終的な調整を行い、まとまれば、11月24日に会議を開催して内閣総理大臣に報告書を提出することになりました。
