現行皇室典範は、制定時にどのような考え方で作られたのか

現行皇室典範は、日本国憲法に基づく法律として制定され、旧皇室典範を踏襲しつつ、戦後の制度として皇位継承資格や皇族の範囲を整理しました

現行の皇室典範は、1947年に日本国憲法と同時に施行されました。旧皇室典範が憲法と並ぶ皇室法体系の根本法であったのに対し、現行皇室典範は、日本国憲法に基づく法律として制定されました。

日本国憲法第2条は、皇位は世襲のものであり、国会の議決した皇室典範の定めるところにより継承すると定めています。また、憲法第5条は、皇室典範の定めるところにより摂政を置くときは、摂政が天皇の名で国事に関する行為を行うと定めています。つまり、現行皇室典範は、皇位継承と摂政に関する事項を中心に、これに密接な関係のある事項を定める法律として作られました。

この整理は、2005年の皇室典範に関する有識者会議第2回資料「現行の皇室典範制定時の考え方」と、関連資料「関連する帝国議会質疑等」をもとにしています。

旧皇室典範から何を引き継いだのか

現行皇室典範は、皇位継承資格を男系男子に限ることなど、旧皇室典範の主要な仕組みを多く引き継ぎました。

現行皇室典範が旧皇室典範を踏襲した主な事項には、皇位継承資格を男系男子に限ること、皇位継承順位を直系優先・長系優先・近親優先とすること、永世皇族制をとること、天皇および皇族は養子をすることができないこと、皇族女子は天皇・皇族以外の者と婚姻したときは皇族の身分を離れることなどがあります。

また、皇族で皇籍を離脱した者は、皇族に復することはない、という考え方も示されています。

このように、現行皇室典範は戦後の新しい憲法秩序のもとに置かれましたが、皇位継承制度や皇族制度の多くについては、旧皇室典範の考え方を引き継いでいます。

旧皇室典範と何が違ったのか

現行皇室典範は、非嫡出子を皇族とせず、皇族の範囲も旧皇室典範より狭く整理しました。

旧皇室典範では、非嫡出の皇子孫も一定の場合に皇族となり、皇位継承資格を持つ仕組みがありました。これに対して、現行皇室典範では、皇族の範囲は嫡出の子に限られ、非嫡出子は皇族とされないことになりました。

また、旧皇室典範では、4世までを親王・内親王、5世以下を王・女王としていました。現行皇室典範では、親王・内親王の範囲を2世まで(孫まで)とし、3世以下を王・女王としました。

つまり、現行皇室典範は、旧皇室典範を大きく踏襲しながらも、嫡出性と皇族の範囲については、戦後の制度として整理し直しています。

男系男子に限る理由は、どのように説明されたのか

制定時には、男系による皇位継承が過去の事例に沿い、国民の意識にも沿うと考えられたことなどが理由として示されました。

現行皇室典範の制定時には、皇位継承資格を男系男子に限る理由として、過去の事例を見る限り男系により皇位継承が行われてきたこと、それが国民の意識に沿うと考えられたことが挙げられました。

また、歴史上の女性天皇は、男子が即位するまでの間を満たす臨時・中継ぎの存在であったと考えられること、女性天皇を可能にした場合には皇位継承順位などに困難な問題があること、当時は男性の皇位継承資格者が十分に存在していたことも理由とされました。

さらに、女性の皇位継承を可能にするには、男系を尊重してきた原理、皇位継承順位、皇族の範囲などについて、なお根本的な研究が必要であるとされました。

女性の皇位継承を可能にすべきだという議論もあったのか

制定時には、女性天皇を可能にすべきだという議論も示されていました。

現行皇室典範の制定時には、女性の皇位継承を可能にすべきだという意見もありました。

その理由として、歴史上も女性天皇の例があること、文化国家・平和国家の象徴として女性天皇がふさわしいと考えられること、日本国憲法の精神や男女平等原則に沿うことなどが挙げられました。

また、天皇の行為は内閣の助言と承認に基づく儀礼的・形式的な性格を持つため、女性天皇では著しく困難だとはいえない、という趣旨の議論も示されていました。

つまり、現行皇室典範が男系男子限定を採用したことは、女性天皇をめぐる議論がなかったことを意味しません。むしろ、制定時から女性の皇位継承を認めるべきだという議論は存在していました。

ほかにどのような制度が整理されたのか

現行皇室典範制定時には、継承順位、永世皇族制、非嫡出子、養子禁止、皇族女子の婚姻離脱、復籍不可なども整理されました。

現行皇室典範は、皇位継承順位を直系優先、長系優先、近親優先とする仕組みを採りました。また、永世皇族制を採りつつ、実情を踏まえて皇族の範囲を定めることができるとしました。

一方で、非嫡出子を皇族としないこと、天皇および皇族は養子をすることができないこと、皇族女子は天皇および皇族以外の者と婚姻したときは皇族の身分を離れること、皇族で皇籍を離脱した者は皇族に復することはないことも定められました。

これらの規定は、現在の皇位継承問題や皇族数確保問題を考えるうえでも重要です。なぜなら、皇位継承資格者や皇族の範囲が、男系男子限定だけでなく、嫡出性、養子禁止、女性皇族の婚姻離脱、復籍不可などによっても限定されているからです。

まとめるとどうなるか

現行皇室典範は、日本国憲法に基づく法律として制定され、旧皇室典範の主要な仕組みを踏襲しつつ、戦後の制度として皇位継承資格や皇族の範囲を整理しました。

現行皇室典範は、戦後の日本国憲法に基づく法律として制定されました。しかし、皇位継承資格を男系男子に限ること、継承順位の基本、養子禁止、皇族女子の婚姻離脱など、多くの点で旧皇室典範の仕組みを引き継いでいます。

一方で、非嫡出子を皇族としないことや、親王・内親王とする範囲を狭めることなど、旧皇室典範と異なる整理も行われました。

制定時には、皇位継承資格を男系男子に限る理由として、男系による皇位継承の歴史、国民意識、女性天皇を認めた場合の継承順位の難しさ、当時の皇位継承資格者の状況などが挙げられました。一方で、女性の皇位継承を可能にすべきだという議論も存在しました。

このことを確認すると、現在の皇室制度の課題は、単に「男系男子限定を維持するかどうか」だけではないことが見えてきます。皇族の範囲、婚姻による皇籍離脱、養子禁止、復籍不可など、複数の制度が組み合わさって、現在の皇位継承と皇族数の問題を形づくっているからです。

← トップページに戻る