少子化の現状は、皇位継承資格者を男系男子に限る制度が、社会構造の変化の中で不安定になりやすいことを示しています
2005年7月20日の皇室典範に関する有識者会議第10回では、資料3「少子化の現状」が配布されました。
この記事は、この資料をもとに、少子化の現状が皇位継承論で何を意味するのかを整理します。
なぜ、この資料が第10回で出されたのか
この資料が第10回で出されたのは、皇位継承資格者を安定的に確保できるかどうかを、社会の少子化という前提から確認するためだと考えられます。
皇位継承論では、男系男子を維持するのか、女性天皇・女系天皇を認めるのかが問題になります。
しかし、その議論は、伝統や憲法だけでなく、現実に継承資格者がどれくらい生まれ得るのかという問題とも結びついています。
少子化が進むと、子どもの数そのものが減ります。さらに、男系男子に限る場合には、その中から男子だけを継承資格者として見ることになります。
そのため、有識者会議は、少子化の現状を確認し、皇位継承制度の安定性を考える材料にしたのだと考えられます。
出生率はどのように推移していたのか
合計特殊出生率は長期的に低下し、2003年には1.29まで下がっていました。
資料では、合計特殊出生率の推移が示されています。
戦後直後には高かった出生率は、その後大きく低下しました。資料では、1947年に4.54だった合計特殊出生率が、2003年には1.29になっていることが示されています。
資料には、人口を維持するために必要な合計特殊出生率として、人口置き換え水準2.08も示されています。
つまり、2003年時点の出生率1.29は、人口を維持する水準を大きく下回っていました。
皇位継承論との関係でいえば、これは、皇族の中でも次世代が十分に増えることを当然の前提にできないということを意味します。
平均初婚年齢はどのように変化していたのか
平均初婚年齢は上昇しており、結婚の先送りが出生数の減少と結びつく状況が示されています。
資料では、平均初婚年齢の推移も示されています。
1947年と2003年を比較すると、男性は3.3歳、女性は4.7歳上昇したとされています。
平均初婚年齢の上昇は、結婚の先送りと関係します。結婚が遅くなれば、出産の時期も遅くなり、子どもの数にも影響します。
資料には「結婚の先送り現象」という図も置かれており、少子化が単に出生率の数字だけでなく、結婚・出産の時期の変化とも関係することが示されています。
兄弟姉妹の数はどう変化していたのか
児童のいる世帯では、子ども1人・2人の割合が大きく、3人以上の割合は小さくなっていました。
資料には、児童のいる世帯における兄弟姉妹の構成の推移も示されています。
1970年から2000年までを見ると、1人または2人の子どもの世帯が大きな割合を占め、3人、4人以上の世帯は少なくなっています。
これは、社会全体で兄弟姉妹の数が少なくなっていることを示します。
皇位継承論との関係では、この点も重要です。
子どもの数が少なくなれば、各世代で生まれる皇族数も少なくなりやすくなります。男系男子に限定すれば、継承資格者はさらに絞られます。
男系男子に限ると、候補者はどう減っていくのか
出生率が低い場合、女性・女系を含めた子孫よりも、男系男子だけの子孫は世代を経るごとに大きく減ります。
資料の最後には、仮に現世代を5人とした場合の試算が示されています。
女性・女系を含めた子孫の数と、男性の男系男子の子孫の数を分けて計算しています。
出生率が2の場合、女性・女系を含めた子孫は、1世で10人、2世で20人、3世で40人と増えます。これに対し、男系男子に限ると、1世で5人、2世で5人、3世で5人となります。
出生率が1の場合、女性・女系を含めた子孫は、1世で5人、2世で5人、3世で5人ですが、男系男子に限ると、1世で2.5人、2世で1.25人、3世で0.63人となります。
出生率が1.29の場合、女性・女系を含めた子孫は、1世で6.45人、2世で8.32人、3世で10.73人ですが、男系男子に限ると、1世で3.23人、2世で2.08人、3世で1.34人となります。
この試算は、男系男子限定の制度が、少子化のもとでどれほど不安定になり得るかを示しています。
子孫全体を見れば一定数が残っていても、男系男子だけに限ると、候補者は急速に少なくなるからです。
皇位継承論とどう関係するか
この資料は、少子化のもとで、男系男子に限った皇位継承資格者を安定的に確保できるのかを問い直すための資料です。
第10回資料3「少子化の現状」は、出生率の低下、平均初婚年齢の上昇、兄弟姉妹数の減少を示しています。
これらは、皇位継承資格者の確保を、楽観的に考えることができない社会状況を示しています。
皇位継承制度は、将来にわたって継承資格者が存在することを前提にしています。しかし、少子化が進むと、その前提が揺らぎます。
特に、皇位継承資格を男系男子に限定する場合、子どもの数が少ないことに加え、男子であること、男系であることという条件が重なります。
資料末尾の試算は、この点をはっきり示しています。出生率1.29の場合、女性・女系を含めた子孫は3世で10.73人となる一方、男系男子だけでは3世で1.34人にまで減ります。
つまり、少子化の現状は、皇位継承資格を男系男子に限る制度の安定性を問い直す資料でした。
女性天皇・女系天皇を認めるかどうかは、伝統や皇統の理解に関わる問題です。しかし同時に、少子化のもとで将来の継承資格者をどのように確保するのかという制度設計上の問題でもあります。
