第9回は、「論点の整理(案)」をどうまとめ、国民にどう示すかを議論した回でした
2005年7月20日、皇室典範に関する有識者会議の第9回会合が開かれました。
この回では、「論点の整理(案)」を議題として意見交換が行われました。
※このページはUTF-8では文字化けするため、Shift_JISでの閲覧が推奨されます。
第9回は、結論を出す回ではありませんでした。
むしろ、これまでの審議や識者ヒアリングを踏まえ、論点整理をどのような性格の文書としてまとめるのか、国民にどう分かりやすく示すのかを話し合った回でした。
問題の中心は、皇位継承資格だと確認された
第9回では、皇位継承資格が最も大きな論点であり、継承順位や皇族の範囲はその上で検討すべき課題だと整理されました。
議事要旨では、問題の構造として、皇位継承資格が一番大きな議論であり、継承順位や皇族の範囲の問題は、その上で検討すべき課題ではないかという意見が示されています。
これは、第10回資料1「今後の検討に向けた論点の整理」に引き継がれる構造です。
まず、誰に皇位継承資格を認めるのか。
次に、その資格者の中でどの順番で継承するのか。
さらに、そのために皇族の範囲をどう考えるのか。
第9回では、この順序で論点を組み立てる方向が確認されていました。
論点整理は、前提を共有する中立的な問題提起として考えられていた
論点整理は、会議として結論を押し出す文書ではなく、国民と委員が前提を共有するための中立的な問題提起として考えられていました。
第9回では、この問題には、国民の意向を十分に反映すべき面と、有識者会議として責任を持って答えを出すべき面の二つがあるとされました。
また、この会議の進め方は、最初から議論を戦わせて集約するのではなく、現在の状態を分析的に見たうえで、多くの人が納得できる方向を探るものだという見方も示されています。
論点整理は、ある方向に踏み出す前に、その前提となる要件を、委員の間でも国民の間でもできるだけ共有し、一緒に考えてほしいという問題提起の側面があるとされました。
その意味で、第9回では、論点整理を中立的なものとしてまとめることが意識されていました。
国民に分かりやすく示すことが課題になった
第9回では、皇位継承論に出てくる概念や用語を、一般の国民にどう分かりやすく示すかが大きな課題になりました。
議事要旨では、委員には分かるようになった概念でも、一般の人にはなじみのない言葉が多いことが指摘されています。
同じ言葉でも、一般の使い方とは必ずしも同じではない場合があり、それが分かりにくさの原因になるのではないかという意見も出ました。
そのため、議論の中心になる概念については、冒頭にまとめて掲載するなど、国民の理解に資する工夫を行ってはどうかとされています。
これは、第10回資料1で「皇統」「皇族」「皇籍離脱」「男系・女系」などの用語説明が置かれたことにつながります。
基本的視点として、憲法・国民の理解と支持が重視された
第9回では、憲法を前提に考えること、そして国民の理解と支持を基本的な検討視点に置くことが確認されました。
議事要旨では、憲法を前提に考えるのであり、基本的な検討の視点として、まず国民の理解と支持が挙げられるという意見が示されています。
また、論点整理では、ヒアリングなどで示されたさまざまな考え方について、論拠と問題点の指摘が明確に理解できるように整理することが重要だとされました。
この点は、第10回の論点整理案で、国民の理解と支持、伝統、制度としての安定性という三つの基本的視点が示される流れにつながります。
歴史・伝統の扱いも問い直された
第9回では、歴史・伝統を単なる過去の事実としてではなく、どのように踏み出すかを考える材料として扱う視点が示されました。
議事要旨では、歴史・伝統には、事実として見えている現象的なものや、その背後にあるメカニズムなど、レベルの異なるものがあると指摘されています。
また、旧宮家の復活にせよ、女系へと広げるにせよ、どちらも何らかの意味で歴史を踏み出すことになるという見方も示されています。
重要なのは、どちらが歴史に沿い、どちらが歴史に反するかという単純な整理ではありません。
第9回では、どちらの方向に進むとしても、歴史や伝統を踏まえながら、どういう踏み出し方がよいのかを考えることが課題になっていました。
現在の皇室の伝統や両陛下の活動も重視された
第9回では、古い伝統だけでなく、現在の皇室が築いてきた伝統や両陛下の活動を国民に伝える必要も指摘されました。
議事要旨では、現在の皇室が築いてこられた伝統や両陛下の活動を、国民にも十分に伝えていくことが必要ではないかという意見が出ています。
また、若い人も意外にこの問題に関心があり、皇室を自由な発想で見ているのではないかという意見も示されています。
ここで見えているのは、皇位継承論における「伝統」が、古代から続くものだけではないということです。
戦後の象徴天皇制のもとで、現在の天皇・皇后が築いてきた皇室像も、国民の理解と支持に関わる伝統として意識されていました。
論理だけで結論が出る問題ではないとされた
第9回では、皇位継承論は論理だけで結論が導かれる問題ではなく、9月以降に委員の議論で結論を探していく必要があるとされました。
議事要旨では、この会議で扱っている問題は、論理的に結論が導かれるものではないということが、論点整理で明らかになったように思う、という意見が示されています。
また、論点整理は、世論を二分するようなものではなく、読んだ人が個々の要素について考えられるものにすべきだという意見も出ています。
つまり、第9回では、論点整理を結論の前倒しにするのではなく、結論へ向かうための考える土台として整えることが重視されていました。
まとめるとどうなるか
2005年の皇室典範に関する有識者会議第9回では、「論点の整理(案)」をめぐって意見交換が行われました。
そこで確認されたのは、皇位継承資格が最も大きな論点であり、継承順位や皇族の範囲はその上で検討すべき課題だという構造でした。
また、論点整理は、会議として結論を押し出す文書ではなく、国民と委員が前提を共有し、これから一緒に考えるための中立的な問題提起として位置づけられていました。
そのため、国民に分かりやすく示すこと、基本的な用語を整理すること、憲法を前提に国民の理解と支持を重視すること、歴史・伝統の扱いを丁寧にすることが課題になりました。
第9回は、男系維持か女性・女系容認かという結論を出す回ではありませんでした。
むしろ、論点整理を、国民の理解と支持、伝統、制度としての安定性を踏まえた中立的な検討の土台にするための回だったといえます。
