第11回は、論点整理への反応を確認したうえで、皇位継承資格、とくに男系男子限定を維持するかどうかを議論した回でした
2005年8月31日、皇室典範に関する有識者会議の第11回会合が開かれました。
この回では、7月26日に公表された「今後の検討に向けた論点の整理」に対する国民の反応を概観したうえで、皇位継承資格について意見交換が行われました。
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第11回は、夏休み明けの最初の会合でした。第10回で論点整理が公表され、第11回からは、その整理に沿って、個別論点を詰めていく段階に入っています。
論点整理への国民の反応は、どう受け止められたのか
第11回では、論点整理への国民の反応を確認しつつ、この会議の進め方でさらに議論を詰めるべきだと受け止められていました。
第11回では、資料1「主要紙解説記事」と、論点整理に対して事務局に寄せられたメール・投書の概要について報告がありました。
その報告をもとに、7月26日に公表された論点整理に対する国民の反応が概観されました。
議事要旨では、メール等が少なかったのは意外であるが、この有識者会議のやり方でさらに議論を詰めよという国民のメッセージのようにも感じる、という意見が出ています。
ここでは、論点整理が大きな反発や世論の二分を直ちに生んだものとしてではなく、次の検討へ進むための土台として受け止められていたことがうかがえます。
皇位継承資格では、何が問題になったのか
皇位継承資格では、男系男子要件を維持するのか、女性天皇・女系天皇を認める方向に広げるのかが中心論点になりました。
第11回の中心は、皇位継承資格です。
論点整理で示された二つの方策、すなわち、男系男子要件を維持する方策と、女性天皇・女系天皇を可能にする方策について、どちらの支持者が多いかだけで決めるのではなく、それぞれを分析しながら一つの案にまとめるべきだという意見が出ています。
つまり、第11回は、単純な多数決的な比較ではなく、それぞれの方策の論拠、問題点、制度としての安定性を検討する回でした。
その際、前提として、嫡出であることは今後とも維持するのが適当だとされました。したがって、議論の焦点は、男系男子であることをどう考えるかに置かれていました。
男系男子維持策には、どのような疑問が示されたのか
男系男子限定を維持する方策については、少子化と嫡出要件のもとで先細りになり、安定性に欠けるのではないかという疑問が示されました。
第11回では、旧皇族の皇籍復帰という具体的方法とは別に、そもそも庶系を認めない中で男系の存続が可能なのかを考えることが、論理的には筋が通っているという意見が出ています。
前回、第10回の少子化資料に示されたように、確率的な計算上は、生まれた子のうち男系男子だけで継承を続けると行き詰まることがはっきりしている、という見方です。
また、仮に旧皇族の復帰などがあっても、男系による継承は結局は先細りになって安定性に欠けるのではないか、一般国民との区別がつきにくいのではないか、という問題も示されました。
ここでの重要な点は、男系男子維持策が、単に伝統にかなうかどうかではなく、制度として安定的に機能するかどうかから検討されていることです。
女性天皇は、どう評価されたのか
女性天皇については、統合力、正統性、象徴としての活動に本質的な問題はないのではないかという意見が相次ぎました。
第11回では、男系男子維持策の安定性に疑問が示されたうえで、女性天皇の可能性が論じられました。
女性天皇については、妊娠など男性と異なる点への配慮は必要だとしても、統合力、正統性、象徴としての活動などに問題はないと思う、という意見が出ています。
また、象徴としての役割を果たせるかどうかは、血統に加え、個人の資質、経験の積み重ね、努力などの結果であり、男女の性別が中心問題ではないという意見も示されました。
さらに、女性の体力や生活の違いは論理にならず、男性の中の違いと女性の中の違いは重なっている、正統性や統合力で問題になるようなことはないのではないか、という意見も出ています。
第11回では、女性天皇について、象徴としての活動や国民統合の点から、否定的に見る決定的な理由は見いだしにくいという方向が強く出ていました。
女性天皇・女系天皇は、「やむを得ず」ではなく安定性から考えられた
女性天皇・女系天皇を、男系男子維持に万策尽きたからではなく、安定的な皇位継承の観点から考えるべきだとされました。
第11回では、嫡出要件と少子化という日本社会全体の傾向を考えると、男系男子ではいずれ行き詰まり、安定しないという意見が出ています。
また、歴史的には、男系男子を維持するために複数配偶があったのだろうが、それを否定したことは社会的な合意だろう、という見方も示されました。
そのうえで、安定性を考えるなら女性天皇・女系天皇も視野に入るとされました。旧皇族やもともと皇族でなかった者が皇族になることがきわめて異例であることを考えると、女性天皇・女系天皇は「ぎりぎり可能」なのではなく「大いに可能」なのではないか、という意見も出ています。
さらに、女性天皇・女系天皇を可能とする場合でも、「男系男子の維持に万策尽きたからやむを得ず」という形で行うべきではないという意見が出ました。そのような位置づけでは、女性天皇・女系天皇になる方が例外的に即位するように受け止められかねないからです。
ここでは、女性天皇・女系天皇は、例外的な救済策としてではなく、安定的な継承制度のための積極的な選択肢として考えられています。
男女平等ではなく、安定的な皇位継承制度の問題として整理された
第11回では、女性天皇・女系天皇の検討は、性差別の解消や男女共同参画ではなく、安定的な皇位継承制度をどう作るかという問題だと整理されました。
第11回では、一般社会にある男性だけに認められる伝承や旧習と、皇室の男系継承との関係についても意見が出ています。
しかし、それに対して、この有識者会議では皇位継承制度という国の制度を扱っているのであり、私的な分野における伝承のようなものまで議論するのはふさわしくないのではないか、という意見が示されました。
また、皇室典範を変えたからといって、一般社会の伝承を変える必要が生じるわけではなく、実際にもあまり関係ないのではないか、という意見も出ています。
さらに重要なのは、この会議では、性差別の解消や男女共同参画という観点から議論を進めるのではなく、あくまでも安定的な皇位継承制度をどう作るかという観点から考えるべきだとされたことです。
この整理によって、第11回の議論は、一般的な男女平等論ではなく、皇位継承制度の安定性と象徴天皇制の維持を中心に進められていました。
憲法上の「世襲」は、どう参照されたのか
憲法上の世襲は血統を意味し、男系も女系も含むという見方が示されました。
第11回では、現在の皇室典範では皇位の安定的な継承が難しいとなると、憲法に戻ることになる、という意見が出ています。
その意見では、憲法は「世襲」と規定しているだけで、男系とは規定していないとされました。そして、憲法上の世襲は血統という意味であり、男系も女系も入る、という見方が示されています。
これは、皇位継承資格を考えるうえで重要です。
皇室典範は、皇位継承資格を皇統に属する男系男子の皇族に限っています。しかし、憲法第2条自体は、男系男子と書いているわけではありません。
したがって、第11回では、男系男子限定を憲法上の絶対条件と見るのではなく、皇室典範上の制度として見直し得るものとする視点が示されていました。
象徴天皇制との関係では、何が重視されたのか
象徴天皇制との関係では、国民が象徴として感じられる、わかりやすく安定的な制度であることが重視されました。
第11回では、天皇が日本国および日本国民統合の象徴であるという憲法上の位置づけについても意見が出ています。
その意見では、象徴かどうかは本来、社会心理的なものであるとされました。古代からの血のつながりを通じて続いてきた天皇の具体的な存在や活動を通じて、多くの国民が象徴として感じていることがポイントになるという見方です。
そのため、単純に世論に従うわけではないが、多くの国民がどのように感じるかを無視して考えることはできないとされました。
この観点からは、できるだけ複雑な要素や人為的な要素を持ち込まず、わかりやすく安定的な制度を考えることが、象徴天皇制を守るうえで重要だとされています。
この議論は、女性天皇・女系天皇を視野に入れて考える方向と結びついていました。
この回では、なぜ結論を集約しなかったのか
第11回では、皇位継承資格だけで結論を出さず、継承順位や皇族の範囲も含めて全体として判断することになりました。
第11回の最後には、男系男子について、理念論はともかく、現実的な方法論としては、とくに安定性の面で劣るのではないかという意見が出ています。
ただし、安定性だけから議論することはできず、安定性も皇族の範囲などの論点と密接に関係します。さらに、皇位継承順位の問題も大きいとされました。
そのため、この日の会議では、皇位継承資格について意見を集約してから次の論点に移るのではなく、今後、皇位継承順位、皇族の範囲についての議論の結果も踏まえて、最後に全体として結論を出すことが提案されました。
議事要旨も、本日は意見の集約を行わず、皇位継承順位、皇族の範囲などをあわせて、全体として判断することになったと記しています。
次回は、9月中に開催し、皇位継承順位について議論することとされました。
まとめるとどうなるか
第11回は、論点整理の公表後、皇位継承資格について本格的に意見交換した回でした。
まず、男系男子要件を維持する方策と、女性天皇・女系天皇を可能にする方策について、それぞれを分析しながら一つの案にまとめていくべきだとされました。
そのうえで、庶系を認めず、嫡出要件を維持し、少子化が進む社会の中で、男系男子だけによる継承が安定的に続くのかが問われました。
女性天皇については、統合力、正統性、象徴としての活動に本質的な問題はないのではないかという意見が相次ぎました。
また、女性天皇・女系天皇は、男系男子維持に万策尽きたからやむを得ず認めるものではなく、安定的な皇位継承制度を作るために考えるべきものだとされました。
第11回の議論は、男女平等や男女共同参画のためではなく、あくまでも安定的な皇位継承制度をどう作るかという観点から進められていました。
ただし、この回では結論を集約しませんでした。皇位継承資格だけでなく、皇位継承順位、皇族の範囲もあわせて、最後に全体として判断することになったからです。
