今谷明教授は、2012有識者ヒアリングで何を述べたか

今谷明教授は、象徴天皇制を長い歴史をもつ制度として説明したうえで、天皇の活動を支えるため、小規模な女性宮家と配偶者の准皇族的待遇を提案しました

今谷明教授は、2012年2月29日の第1回「皇室制度に関する有識者ヒアリング」で、帝京大学文学部日本文化学科特任教授として意見を述べました。

大きく二つに分けられます。

第一は、象徴天皇制度の歴史的説明です。

象徴天皇制は戦後に突然生まれたものではなく、幕末以前から長い前史をもつ制度であり、「君臨すれども統治せず」という天皇のあり方は、日本で早くから制度化されていたと説明しました。

第二は、現在の皇室の活動と女性宮家についての私見です。

天皇の活動を、憲法上の国事行為、祭祀行為、象徴としての公的行為に分けたうえで、天皇の高齢と負担を踏まえ、皇太子や秋篠宮をはじめとする皇族が支えることができるのではないかと述べました。

さらに、女性宮家については、歴史上の例を挙げ、不自然なものではないとし、小規模な形で設けることを提案しました。

その場合、女性皇族の配偶者は、一代限りの准皇族的な待遇でよいのではないか、という考えも示しました。

皇室制度に関する有識者ヒアリング 第1回 議事録

今谷明「象徴天皇制度と皇室の御活動の意義について」

どの質問事項に対応する発言だったのか

今谷明教授の発言は、主に「1.象徴天皇制度と皇室の御活動の意義について」と、「3.皇室の御活動維持の方策について」「4.女性皇族に婚姻後も皇族の身分を保持いただくとする場合の制度のあり方について」に対応しています。

発言の冒頭で、歴史学の立場から象徴天皇制度の沿革を説明し、残った時間で女性宮家や現在の天皇の活動について私見を述べるとしています。

象徴天皇制をどう説明したのか

象徴天皇制を、戦後に突然作られた制度ではなく、日本の歴史の中で長く続いてきた君主のあり方として説明しました。

象徴天皇制について、戦後に復活したものであり、急にGHQなどから押し付けられたものではないと述べました。

そのうえで、幕末以前に長い歴史があり、「君臨すれども統治せず」という君主のあり方は、日本の方が諸外国より早く制度化していたという見方を示しました。

天皇は、政治権力を直接行使する存在というより、時間や空間の抽象的支配者として君臨する存在として整理されています。

たとえば、改元による時間の支配、叙任による栄典授与などが、天皇固有の機能として挙げられています。

このように、象徴天皇制度を、戦後憲法だけから説明するのではなく、長い歴史の中で形成されてきた日本の君主制のあり方として説明しました。

皇室の活動について、何を述べたのか

天皇の活動を三つに分け、天皇の高齢と負担を踏まえて、皇族による支えが必要だと述べました。

今谷教授は、現在の皇室の活動を、三つに分けました。

第一に、憲法で定められた国事行為です。

第二に、祭祀行為です。

第三に、象徴としての公的行為です。

天皇の活動が非常に多く、天皇が高齢であることを踏まえると、国民の側から見ても心配であるという趣旨を述べています。

そのうえで、国事行為は憲法上の規定があるとしても、祭祀行為や象徴としての公的行為については、皇太子や秋篠宮に任せることがあってよいのではないかと述べました。

ここには、皇室の活動を天皇だけで担うのではなく、皇族全体で支えるべきだという考え方があります。

女性宮家について、何を述べたのか

女性宮家は歴史的に不自然なものではなく、小規模に設けることが望ましいという考えを示しました。

女性宮家について、幕末以前にも例があるとして、不自然なものではないと述べました。

そのうえで、女性皇族を宮家に立てることは、現在の状況では「さもあるべきこと」であろうという趣旨の意見を述べています。

ただし、今谷教授の案は、大規模な制度改正ではありません。

できるだけ小規模にとどめることが望ましいとし、具体的には眞子内親王、佳子内親王、愛子内親王、さらに困難はあるとしつつ黒田清子さんにも言及しました。

これは、皇室を支える周辺の層、つまり「藩屏」をできるだけ確保しようとする発想です。

戦後に華族や旧宮家などの周辺構造が失われたことを、皇室制度にとって厳しい状況として見ていました。

そのため、女性宮家は、皇位継承資格の拡大そのものというより、天皇と皇室を支えるための最小限の支えとして位置づけられています。

配偶者の身分について、どう考えたのか

女性宮家の配偶者について、一代限りの准皇族的な待遇でよいのではないかと述べました。

女性皇族が宮家を立てて結婚した場合、配偶者である男性をどう扱うかについても述べました。

その案は、配偶者を一代限りで准皇族的な待遇にするというものです。

平安時代には准関白や准摂政のように、制度運用を柔軟に行った例があるとして、配偶者についても、皇族そのものではなく、准皇族的な緩やかな待遇を置くことができるのではないかと考えました。

女性皇族を婚姻後も皇族として残すとして、その配偶者や子を皇族とするのか、一般国民のままとするのか、あるいは中間的な処遇を設けるのか。近年の議論に通じる論点です。

今谷教授の意見は、その中で、配偶者について中間的な処遇を考える立場だったといえます。

まとめるとどうなるか

今谷明教授のヒアリングは、歴史学の立場から、象徴天皇制度と女性宮家を考えるものでした。

象徴天皇制を、戦後に突然生まれたものではなく、長い歴史をもつ日本の君主制のあり方が戦後に復活したものと見ました。

そのうえで、現在の皇室の活動について、天皇の高齢と負担を踏まえ、皇族による支えが必要だと述べました。

女性宮家については、歴史上の例を踏まえ、不自然なものではないとし、できるだけ小規模な形で設けることを提案しました。

また、配偶者については、皇族そのものではなく、一代限りの准皇族的待遇を設ける案を示しました。

つまり、今谷明教授の意見は、女性宮家を、皇位継承資格の拡大そのものとしてではなく、象徴天皇制度と皇室活動を支えるための小規模な制度として位置づけるものでした。

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