百地章教授は、女性宮家創設に反対し、宮家の本来の役割、制度設計上の問題、女系天皇につながる危険、憲法2条の世襲理解を理由として、旧11宮家の男系男子孫への皇籍付与を提案しました
百地章教授は、2012年4月10日の第3回「皇室制度に関する有識者ヒアリング」で、日本大学教授として意見を述べました。
百地教授の発言は、女性宮家創設への反対論です。
ただし、その中心は、単なる政治的反対ではありません。
宮家の歴史、制度設計、女系天皇への接続、憲法2条の「世襲」の意味、御公務負担の整理、旧11宮家の男系男子孫への皇籍付与という順に、制度論として反対理由を組み立てました。
百地教授にとって、宮家とは、皇位継承権者を確保し、皇統の危機に備える制度です。
そのため、皇位継承権を持たない女性宮家は、宮家の本来の役割を果たせないと考えました。
また、一代限りの女性宮家は、親子別籍・親子別姓・親子別家計という不自然な制度を生むとし、配偶者や子まで皇族とすれば、今度は女系皇族が誕生し、女系天皇への道を開くと見ました。
そのため百地教授は、皇族数確保の方策として、女性宮家ではなく、旧11宮家の男系男子孫に皇籍を付与することを提案しました。
第3回有識者ヒアリング議事録
百地章配付資料
どの質問事項に対応する発言だったのか
百地章教授の発言は、主に「3.皇室の御活動維持の方策について」と「4.女性皇族に婚姻後も皇族の身分を保持いただくとする場合の制度のあり方について」に対応しています。
また、御公務負担の軽減について述べているため、「2.今後、皇室の御活動の維持が困難となることについて」にも関わります。
百地教授は、ヒアリング事項に順番どおり答えるというより、女性宮家創設論への疑問を中心に、全体を通して答える形をとりました。
その基本的立場は、先の御代替わりの際に政府が採ったという、「憲法の趣旨に沿い、かつ皇室の永い伝統を尊重して」というものでした。
宮家の歴史から、何を問題にしたのか
宮家は皇位継承権者を確保し、皇統の危機に備えるものであり、女性宮家はその役割を果たせないと述べました。
百地教授は、宮家を、世襲親王家として説明しました。
その役割は、皇位継承権者を確保し、皇統の危機に備えることです。
百地教授によれば、歴史上、女性宮家は存在していません。
桂宮家の最後の当主が女性であったことはあるが、それは女性宮家の創設ではなく、財産管理などのために独身の内親王が桂宮号を継いだだけであり、未婚のまま薨去すると桂宮家も断絶したと説明しました。
また、室町時代以降、伏見宮家、桂宮家、有栖川宮家、閑院宮家という四世襲親王家が皇統を支えてきたことを挙げました。
伏見宮家から後花園天皇、有栖川宮家から後西天皇、閑院宮家から光格天皇が出たことを示し、皇位の安定的継承には、こうした宮家の役割に注目すべきだと述べました。
一代限りの女性宮家について、何を問題にしたのか
一代限りの女性宮家は、親子別籍・親子別姓・親子別家計という不自然な制度を生むと述べました。
百地教授は、女性宮家創設論で重要なのは、女性皇族の配偶者と子をどう扱うかだと述べました。
たとえば、内親王や女王とその男性配偶者を皇族とし、子を皇族としない一代宮家を考えます。
この場合、両親は皇統譜に入り、子だけが戸籍を持つことになります。
つまり、親子別籍のような状態が生じます。
また、両親は姓を持たず、子だけが父親の旧姓を名乗ることになれば、親子別姓になります。
さらに、両親は皇族費で生活し、子だけが皇族費の対象外であれば、親子別家計になります。
百地教授は、このような制度は、家族としても制度としても不自然であり、一代宮家では、悠仁親王を将来支える宮家という目的も十分に果たせないと述べました。
配偶者と子を皇族にすると、何が問題になるのか
配偶者と子を皇族にすれば、女系皇族が誕生し、女系天皇への道を開くことになると述べました。
一代宮家の不自然さを避けるためには、内親王や女王だけでなく、民間人配偶者や子も皇族とする案が考えられます。
百地教授は、この場合、別の重大な問題が生じると述べました。
それは、子が女系皇族になることです。
歴史上、女系皇族は前例がなく、もし女系皇族に皇位継承権を認めれば、女系天皇への道を開くことになります。
百地教授は、女性宮家論は、2005年の「皇室典範に関する有識者会議」報告書で、女系天皇容認とセットで登場したものだと見ました。
そのため、2012年のヒアリングで皇位継承問題と切り離すと説明されても、いずれ女系天皇容認へ向かう可能性が高いと警戒しました。
憲法2条の「世襲」をどう理解したのか
憲法2条の「世襲」は男系、少なくとも男系重視を意味しており、皇室典範への委任は白紙委任ではないと述べました。
百地教授は、女性宮家が女系天皇につながる可能性を問題にするため、憲法2条の「皇位は世襲のもの」という規定にも踏み込みました。
百地教授は、制憲議会やその後の政府答弁から、従来の政府見解の基調は、憲法2条の世襲は男系を意味するというものだったと整理しました。
また、学説でも、世襲は男系継承を意味するとする説が通説、少なくとも多数説だと述べました。
そのうえで、憲法2条の皇室典範への委任は、白紙委任ではなく、男系主義、少なくとも男系重視を前提としたものと考えるべきだとしました。
したがって、皇室典範1条を改正して安易に女系天皇を容認することは許されず、女系天皇への道を開く女性宮家にも重大な疑問が残る、というのが百地教授の考えです。
御公務の負担軽減について、何を述べたのか
御公務負担の軽減には、女性宮家創設ではなく、まず御公務そのものの整理・縮小が必要だと述べました。
百地教授は、天皇、皇后の御公務が膨大であり、高齢や病気を考えれば、負担軽減は喫緊の課題であると認めました。
しかし、その解決策として女性宮家創設を挙げるのは本末転倒だと述べました。
まず必要なのは、御公務の整理・縮小です。
百地教授は、皇室の本来のあり方からすれば、最も重大な御公務は祭祀だと考えました。
ただし、祭祀は天皇による国家・国民のための祈りであり、掌典職などの代行はあり得ても、皇族による代行は考えにくいとしました。
また、国事行為については、国事行為の臨時代行に関する法律に基づき、皇太子や秋篠宮による代行が可能です。
象徴行為についても、陛下でなければならないものと、皇太子や秋篠宮、そのほかの皇族が分担できるものを整理すべきだと考えました。
皇族数確保の方策として、何を提案したのか
旧11宮家の男系男子孫に皇籍を付与し、皇室典範を改正して養子も可能にすべきだと述べました。
百地教授は、皇族数確保のための方策として、旧11宮家の男系男子孫への皇籍付与を提案しました。
旧11宮家の皇籍離脱は、GHQの占領下で行われたものであり、本人たちの自発的意思によるものとは言い切れないと見ています。
旧11宮家は、伏見宮家の流れを汲む男系男子孫であり、四世襲親王家の歴史的役割ともつながります。
百地教授は、女性宮家に一般民間人男性が入ることへの違和感を問題にするなら、旧宮家の男系男子孫への皇籍付与を検討する方が、皇室の伝統に沿うと考えました。
また、皇室典範9条を改正し、養子を可能にすることも提案しました。
養子を可能にすれば、旧宮家の男系男子孫を現在の宮家に迎える道が開かれます。
まとめるとどうなるか
百地章教授のヒアリングは、女性宮家創設への制度的反対論でした。
宮家とは本来、皇位継承権者を確保し、皇統の危機に備えるためのものであり、女性宮家はその役割を果たせないと述べました。
一代限りの女性宮家については、親子別籍・親子別姓・親子別家計という不自然な制度を生むと批判しました。
その不自然さを避けて配偶者と子も皇族とすれば、今度は女系皇族が誕生し、女系天皇への道を開くと見ました。
さらに、憲法2条の「世襲」は男系、少なくとも男系重視を意味しており、皇室典範への委任は白紙委任ではないと整理しました。
御公務負担の軽減については、女性宮家創設ではなく、まず御公務の整理・縮小が必要だと述べました。
皇族数確保の方策としては、旧11宮家の男系男子孫への皇籍付与と、皇室典範9条改正による養子制度の導入を提案しました。
つまり、百地章教授の意見は、女性宮家を、皇室活動維持のための制度ではなく、女系天皇への道を開く危険を持つ制度と見なし、代替策として旧宮家男系男子孫の皇籍付与を示すものでした。
