皇位継承順位の設定方法は、男系男子限定、長子優先、兄弟姉妹間男子優先、男子優先、男系男子優先に分けて、安定性や順位変動の観点から整理されました
2005年9月29日の皇室典範に関する有識者会議第12回では、資料1「皇位継承順位の設定方法の考え方 等」が配布されました。
この記事は、この資料をもとに、皇位継承順位の設定方法がどのように整理されたのかを確認します。
なぜ、この資料が第12回で出されたのか
第12回の中心論点が皇位継承順位だったため、複数の順位設定方法を比較するために出された資料です。
第11回では、皇位継承資格が議論されました。そこでは、男系男子だけに限定する制度の安定性に疑問が示され、女性天皇・女系天皇を視野に入れる方向が強く出ていました。
その次の論点は、皇位継承順位です。
女性天皇・女系天皇を可能にするとしても、順位の付け方は一つではありません。長子優先にするのか、兄弟姉妹間では男子を優先するのか、男子全体を優先するのか、男系男子を優先するのかによって、制度の形は変わります。
この資料は、その違いを比較するために作られたものです。
どのような型が比較されたのか
資料は、現行制度型と、女性・女系に拡大した場合の四つの型を比較しています。
資料では、まず現行制度の考え方として、男系男子に限定したうえで、直系、長系、近親を優先する型が置かれています。
そのうえで、皇位継承資格を女子や女系の皇族にも拡大する場合として、四つの型が比較されています。
第一に、長子優先です。
男女を区別せず、直系、長系、近親の考え方で順位を設定する型です。
第二に、兄弟姉妹間で男子優先です。
直系優先を基本としつつ、同じ兄弟姉妹の中では男子を女子に優先させる型です。
第三に、男子優先です。
男系か女系かを問わず、男子を女子に優先させる型です。
第四に、男系男子優先です。
男子の中でも、とくに男系男子を優先させる型です。
この資料は、どの型を採るべきかを結論づけるものではありません。どの原理を優先すると、どのような制度上の違いが生じるかを比較するための資料です。
優先原理は、どのように違うのか
長子優先と兄弟姉妹間男子優先は直系優先を重視し、男子優先・男系男子優先は男子または男系男子を優先する原理をより重視します。
現行制度は、継承資格を男系男子に限ったうえで、天皇の直系子孫を優先し、次いで長系、近親を優先するものです。
女性・女系に拡大する場合、長子優先と兄弟姉妹間男子優先は、基本的に直系優先原理を重視します。
長子優先では、男女を区別しません。
兄弟姉妹間男子優先では、直系を重視しつつ、同じ兄弟姉妹の中では男子を優先します。
これに対し、男子優先と男系男子優先は、男子または男系男子を優先する原理を、直系優先原理よりも強く働かせます。
つまり、ここでの違いは、直系であることをどこまで重視するか、男子であることや男系男子であることをどこまで重視するかにあります。
一義的明確性は、どう整理されたのか
資料は、どの型でも制度としては皇位継承順位を一義的に明確に決めることが可能だとしています。
留意事項の最初に置かれているのは、皇位継承順位決定の一義的明確性です。
資料は、比較された各型について、一義的に明確に皇位継承順位を決定することが可能だと整理しています。
ただし、男系男子限定を維持するために旧皇族やその子孫を皇族とする場合には、別の問題があります。その段階で、皇族になるかどうかについて当事者の意思が介在するからです。
つまり、順位ルール自体は一義的に作れても、旧皇族復帰や養子などを使う場合には、誰が皇族になるのかという前段階で不確定要素が入ることになります。
順位の確定時期は、どこで問題になるのか
長子優先では出生順で早く確定しますが、男子優先を含む型では、後から生まれる男子によって順位が変動する問題があります。
長子優先では、兄弟姉妹間の順位は出生順で決まります。そのため、次の天皇となる方を早く見通しやすくなります。
これに対し、兄弟姉妹間男子優先では、女子の後に男子、つまりその女子の弟が生まれた場合、その男子が優先され、順位の変動が起こります。
男子優先では、傍系に男子が生まれれば、直系の女子よりも優先され、順位の変動が起こります。
男系男子優先では、傍系に男系男子が生まれれば、直系の男系女子や女系男子よりも優先され、順位の変動が起こります。
このため、男子優先や男系男子優先を強くすると、誰が次の天皇になるのかがなかなか定まらない可能性が出てきます。
傍系への移動は、どう整理されたのか
男系男子限定、男子優先、男系男子優先では、皇位が傍系へ移動しやすくなると整理されています。
現行制度のように男系男子に限定すると、直系子孫に女子や女系男子がいても皇位継承資格がありません。そのため、傍系への移動が起こりやすくなります。
長子優先や兄弟姉妹間男子優先では、男女を問わず直系子孫がいる限り、直系で世代間の継承が行われます。そのため、傍系への移動は起こりにくくなります。
これに対し、男子優先では、直系の女子よりも傍系の男子が優先されるため、傍系への移動が起こりやすくなります。
男系男子優先でも、直系の女子や女系男子よりも傍系の男系男子が優先されるため、傍系への移動が起こりやすくなります。
この比較から見ると、直系継承を安定して維持しやすいのは、長子優先または兄弟姉妹間男子優先です。
順位の逆転や親子の逆転は、どう整理されたのか
傍系継承を伴う型では即位に伴う順位の逆転が生じ得て、男子優先では母より男子の子が上位になる親子逆転も生じます。
資料は、皇位継承に伴う順位の逆転について、長子優先や兄弟姉妹間男子優先では生じないと整理しています。
一方、男子優先や男系男子優先では、傍系継承の場合に順位の逆転が生じ得るとされています。
また、尊属・卑属の逆転、つまり親子の順位逆転も問題になります。
長子優先や兄弟姉妹間男子優先では、基本的に親子の逆転は生じません。
これに対し、男子優先では、母である女性より、その子である男子が上位になることがあります。これは、親より子が先順位になるという点で、世襲の自然な理解との関係で問題になります。
男系男子優先では、この親子逆転は生じないと整理されていますが、傍系への移動や順位変動の問題は残ります。
この資料から、何が読み取れるのか
この資料からは、皇位継承順位の設計では、性別や男系だけでなく、予測可能性、直系継承、一義性、順位変動の少なさが重要になることが読み取れます。
皇位継承順位を考えるとき、単に「男子を優先するか」「長子を優先するか」だけを見ても、制度の違いは分かりません。
その型を採ると、次の天皇が早く確定するのか。
直系での継承が維持されるのか。
傍系への移動が起こりやすくなるのか。
即位によって順位が逆転するのか。
親子の順位が逆転するのか。
当事者の意思が介在する余地があるのか。
こうした点を見なければなりません。
第12回資料1は、皇位継承順位の設定方法を、制度としての安定性から比較するための資料でした。
その意味で、この資料は、第12回議事要旨の議論を読むための前提になります。
まとめるとどうなるか
第12回資料1「皇位継承順位の設定方法の考え方 等」は、皇位継承順位の設定方法を比較した資料です。
現行制度型として、男系男子限定のうえで直系、長系、近親を優先する型が置かれています。
女性・女系に拡大する場合には、長子優先、兄弟姉妹間男子優先、男子優先、男系男子優先の四つが比較されています。
資料は、順位設定の考え方だけでなく、皇位継承順位決定の一義的明確性、順位の確定時期、傍系への移動、皇位継承に伴う順位の逆転、尊属・卑属の逆転を留意事項として整理しています。
そこから見えるのは、皇位継承順位の問題が、単なる男女の優先順位ではなく、制度として安定しているか、次の天皇が早く確定するか、直系継承を維持しやすいか、順位変動や親子逆転を避けられるかという問題だったことです。
第12回の議論は、この比較表を前提に、長子優先、兄弟姉妹間男子優先、男子優先、男系男子優先のどれが安定的な制度になり得るかを検討していたといえます。
